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the Tiger@晴れたら空に豆まいて

2024年4月20日(土)

代官山「晴れたら空に豆まいて」で、the Tiger。
「働き者の歌」7inch Release ONE MAN SHOW。

渋谷から東横線の各停に乗るつもりがうっかり急行に乗ってしまい、呑気にポッドキャストを聴いていてふと気がついたら自由が丘駅。焦りながら折り返し、開演予定時間の13時を10分ちょっと遅れて会場に入ったら、ゲストの前田サラさん(サックス)とYOSHIOさん(トロンボーン)を含む5人が横一列に並んでちょうど演奏を始めたところだった(左からゆうすけくん、りんちゃん、サラさん、YOSHIOさん、たいがくん。後ろにあつしくん)。

で、その曲「トラベリン」が終わったらもうゲストのふたりがはける。サラさんはライブ後半にもインしたが、トロンボーンのYOSHIOさんはその1曲だけ。1曲目から、そしてその1曲目だけを6人でやるという(つまり1曲目に最大の見どころをもってくるという)、なかなか思いきった構成だ。

東京では3月の高円寺JIROKICHI、神田shojimaruに続く、the Tiger、3度目のワンマンショー(2月の下北沢THREEも実質ワンマンだったので、あれを入れたら4度目)。セットリストはJIROKICHIともshojimaruとも変えてきて、真ん中あたりに新曲と『Get Ready』以前のレパートリーを固めていた。

この曲は前からやってるのかな?  僕は初めてライブで聴いたのだが、木村充揮と有山じゅんじの「陽よ昇れ」が、若い彼ら流の解釈でとてもよかった。当然のことではあるけれど、やはり大阪のおっちゃんふたりが歌うのと若いりんちゃんが歌うのとでは歌詞の意味合いも少し変わってフレッシュに聴こえる。こういう曲が若いバンドに歌い継がれるのは素晴らしいこと。なんならレコーディングしてもいいんじゃないかと思えたくらい。

それから3月のshojimaruでも確か聴いた記憶があるが「どこ吹く風」(新曲だよね?)もいい感じ。「陽よ昇れ」から「オシエテ」「オールユアラブ」「どこ吹く風」「スローダンス」「オフェリア」あたりの流れが個人的にはこの日特にいいなと感じたところだ。

で、7インチリリース記念のこのライブのメインとも言うべき「働き者の歌」と「おそうじオバチャン」をアンコールにもってくるというのも意味あっていい配置。最後にもう一発、アレサの「リスペクト」でもお見舞いしたらさらなる盛り上がりを生めた気がするし、期待したのだが、それはなかった。

アルバム『Get Ready』のリリースタイミングでワンマンのツアーをしっかりやり、ワンマンという形式でのライブに4人も慣れてきたように見える。ゲストを迎えてのやりとりも今はスムーズに見える。特にサラさんは5人目のメンバーなんていうふうにも言えるくらいにバンドに馴染んでいる。4人もサラさんと一緒にやるのが楽しくてしょうがないといった感じだ。

ワンマンという形式に慣れてきたように見える、と書いたが、ただここが難しいところで、慣れてきた分、ある種の安心感みたいなものが生まれ出しているようにも見えなくなかった。もちろんそれが安定感に繋がるのはいいことだが、数バンド出演のイベント時にあった「ほかのバンドを食ってやる!」というような気概がそれによって薄まってしまうのはよくないこと。最近だと例えば1月にシモキタのQueでTORCERCE(KenKen+金子ノブアキ)とやったときなど、負けるか!といったものすごい気迫と爆発力をパフォーマンスに感じたものだが、そういう爆発の瞬間をまた体感したい、と今回の晴れ豆ライブを観ていて思ったのもまた正直なところだ。

構成(曲の並ばせ方)はとてもよかったと思う。ただ、shojimaruのワンマンほど長喋りはなかったにしても、やはり数曲やってはたいがくんの喋りが挿まるのはグルーブが途切れる感じがして僕には勿体なく思えてしまう。ワンマンでの長尺となれば、MCを入れるタイミングはかなり大事で、そこはやはり5~6曲やってワンブロック終えたらMCといったふうにするなどして、数曲まとまってのグルーブ感を重視したらもっとよくなるのになぁとは思った。あと、バンドの内側に向いたMC(メンバーいじりなど)が多めで、ホントにみんな仲良しでいいねえと微笑ましい気持ちにもなるのだけど、もう少しこう内ばかりでなく外…つまり客のほうを向いたMC、客を巻き込む感じのMCに移行できればもっとその日ならではのライブ感が出るはずで、そのへんは木村さんを始め達者な先輩方からどんどん吸収するといいんじゃないかと思ったりも。

加えて書くと、この日はスタンディングではなく着席式のライブだったんだが、終盤のロックンロール曲で煽って全員立たせるくらいの盛り上げをしてもよかったように思う。みんな立ちたくてウズウズしてただろうしね。そのぐらい半ば強引に客を巻き込んでこそ生まれる全体のグルーブ、言うなれば相互作用こそが、ライブのよさ、面白さ、醍醐味であるゆえ。

しかしまあ、6月から3ヵ月連続の晴れ豆2マンライブも発表にもなり、どんなバンドとの2マンかはまだ知らないけれど、力あるバンドだったら「負けねえぞ」の気概からまた爆発力も生まれるだろうし、MC含めたそのあたりもシャープにならざるをえないだろうから、その体験でまたバンドはきっといい感じに進化を見せることだろう。

午後一のライブで、しかも会場満杯。いい感じに吹いているこの風に乗って、最高のライブバンドへと育っていってほしい。


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