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the Tiger@JIROKICHI

2024年3月13日(水)

高円寺・Live Music JIROKICHIで、the Tiger。
『Get Ready』発売記念ツアー2024。

バンドにとって記念すべき初のワンマン・ツアーの初日。

しかもこの日は「僕の街」のMV公開日であり、何より1stアルバム『Get Ready』のリリース日。めでたいことが重なっての、ちょっとした「虎祭り」だ。

祝うからには華やかに。というわけで、ゲストも豪華。佐々木久美さん(オルガン、コーラス)、前田サラさん(サックス)、三宅伸治さん(ギター、ヴォーカル)。結成から約10年とはいえ、ベースのゆうすけが加入して今の形になってからまだ3年くらいだし、まさにここからがリスタートとなる、言うても新人バンドだ。そして、長い間ライヴで叩きあげてきたとはいえ、ワンマンとなるとこれが初めて。それでこれだけのゲストを迎えてやるのだから、そりゃあやっぱりスペシャルなことだし、彼らの意気込みも相当のものだっただろう。

あとで話したら、やはり序盤はかなり緊張していたと言っていたメンバーもいた。初ワンマンで、これだけのゲストを招いてやるのだから、当然だ。が、そういう緊張が自分を含む観客に伝わったかといえば、それはまったく。緊張していたとしても、むしろそれは引き締まった演奏に繋がる良きものだったんじゃないかと思う。4人とも堂々と、のびのびと、持てる力を存分に発揮していた。そこを完全に自分たちの場としていた。気合いも乗ったパフォーマンスの素晴らしさは言うまでもないが、MCもダラッとせず、彼らの人柄のよさを伝える、塩梅のいいものだった。ゲスト3人に対する敬意をMCでちゃんと伝えつつ、しかしゲストを引き立たせるというよりは一体となることを優先したパフォーマンスを見せていた。先輩たちと一緒に最高の演奏をすることが即ち先輩たちへの感謝にも繋がることを、当たり前だけどちゃんとわかってそこにいた。何よりいつにも増して4人がライヴを楽しんでいた。楽しくて嬉しくて気持ちよくてしょうがない、といった喜びの感覚が歌と演奏と表情に表れていた。

前半7曲、休憩挿んで後半9曲、アンコール1曲の、全17曲。キャリア史上、最長尺のライヴだったと思うが、彼らもMCで言っていた通り、あっというまに感じられた。それ、構成のよさもあってのことだろう。

名場面と言える瞬間がいくつもあって、思い出しきれないし書ききれない。とりわけゲストを順に招いての後半は、この演奏この瞬間を真空パックして残してほしいと思える場面ばかりだった。音源と同じようにサラさんのブロウの爆発力がすごい「金町」に昂揚した。久美さんのオルガンがソウルフルに鳴る「働き者の歌」は、これまでライヴで聴いてきた「働き者の歌」のなかでも一番グッときた。三宅さんとバンドが共作した「夏~思い出せないメロディー~」は音源で聴く以上にメロディのよさ(切なさ)とハーモニーが強調され、三宅さんのギターの説得力にも感じ入った。その三宅さんは横で弾くたいがが可愛くてしょうがないといった感じの笑顔を何度か見せていたのも印象に残った。ゲスト3人とバンド4人の計7人による「いい事ばかりはありゃしない」はりん独自のメロの捉え方も新鮮だったし、たいががヴォーカルをとった部分もまた新鮮だった。ほかにも、おおっとなったりグッときたりした瞬間がいくつもあった。

りんの伸びやかかつ圧倒的な歌声は観る人全ての気持ちを開放するし、たいがのギターはブルーズやブルーズロック好きにとってのここ!というツボに入りまくるし、リズム隊のふたりはたいがとりんが自由に暴れられる正確さと安定をしっかり保持している。が、どれかひとつがどうというよりも、やはりこのバンド、アンサンブルが最高だよなと、改めてそう感じた。

何年か経ったときに「the TigerがJOROKICHIでやった初ワンマン、オレ、観たんだぜ」と絶対人に自慢できる、そういうライヴだった。

因みにライヴのなかでも言っていたが、彼らは名古屋から上京した途端に世の中がコロナ禍に入ってしばらくライヴができなくなり、ならばと高円寺などで路上ライヴをやっていたところ、たまたま通りかかってそれを観たJIROKICHIの人に力を認められてJIROKICHIに出るようになったという逸話を持つ。そしてそんな彼らの初ワンマンの舞台が、そのJIROKICHI。というのは、ひとつの物語としてとてもステキじゃないか。縁と、恩。それを大切にしながら、the Tigerはここからどんどん大きくなっていく。



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