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s-ken&hot bomboms@ビルボードライブ東京

2022年7月20日(水)

ビルボードライブ東京で、s-ken&hot bomboms(2ndステージ)。

青山CAYでの「TOKYO NEW SOURCE vol.2」が2019年11月だったので、s-kenのライブを観るのは約2年半ぶり。ワンマンとなると、2017年5月の『テキーラ・ザ・リッパー』リリースパーティ(@ビルボードライブ東京)以来なので、約5年ぶりとなる。早いな、あれからもうそんなに経つとは。

s-kenのアルバムとしては約5年ぶり、s-ken&hot bomboms名義では実に32年ぶりのリリースとなった新作『P.O.BOX 496』は素晴らしい内容で(もっともs-kenのアルバムは常に新作が最高傑作であり続けたわけだが)、インタビューもさせていただいた。(↓こちら。ぜひ読んでいただきたい!)

そしてそのアルバムを携えての1日(2ショー)限りのライブが今回のものだったわけだが、自分は2ndステージを観て、改めてこのバンドの強力さに唸り、そして興奮してしまったのだった。

hot bombomsの不動のメンバーは、窪田晴男/ギター、小田原豊/ドラムス、佐野篤/ベース、矢代恒彦/キーボード、ヤヒロトモヒロ/パーカッション、多田暁/トランペットの6名。今回のライブは、そこにBimBamBoomの矢元美沙樹/サックスと、中山うり、TIGER、エイミ・アンナプルナの3人からなるコーラス隊が加わる。過去にs-kenがプロデュースした3人の女性からなるコーラス隊は華とあたたかみがあった。s-kenはボブ・マーリー&ウェイラーズのライブに加わるアイ・スリーズ(後にアイ・スリーと改名)をイメージしていたそうで、そのようなコーラス隊をつけて歌うのが夢だったとも話していた。また、ミサキングこと矢元美沙樹のサックスは(BimBamBoomのライブを観たことのある人ならよくわかっているように)とにかくぶっとくて、音の存在感がものすごかった。

主役のs-kenは、ステージに出てくるなり中央でピョンと跳ね、それが合図であるかのようにhot bombomsの演奏が弾みをつけていった。

前作『テキーラ・ザ・リッパー』の「酔っ払いたちが歌い出し、狼どもが口笛を吹く」でスタートした今回のライブは、『P.O.BOX 496』の曲を中心にしながら、『テキーラ・ザ・リッパー』からの数曲と、80年代の曲をいくつか混ぜて組まれたもの。昔からのファンとしては、やはり80年代の多数の曲のなかから何を歌ってくれるのかに注目していたわけだが、序盤で『Pa-Pue-Be』収録の「忘れじのエトランゼ」がいま歌われたことには深い意味と思いを感じた。

女性3人のコーラスがよく映える僕の大好きな「メロンとリンゴにバナナ」なんかも聴けた前半からよかったが、ライブは後半戦に入ってグッと白熱の度合いが増した。s-kenの歌声も前半より強くなったように感じた。「ジャックナイフより尖がってる」、続く「マジックマジック」。hot bombomsのグルーヴがとてつもない。わけても「マジックマジック」のアフロビート的なるそれ。こんなグルーヴを出せるバンドは、日本にほかにない。まさしく日本最高峰。それにヤヒロトモヒロのパーカッションもあって、昔のじゃがたらのライブのグルーヴも思い出された。が、それよりもモダンである。「マジックマジック」でs-kenは何度か動物のような雄叫びをあげていた。

さらにゲストのスティーヴ・エトウがパーカッションで加わり、グルーヴの深度と華やぎが増す。それからもうひとり、想い出野郎Aチームの高橋一(マコイチ)も加わる。「よろめきながら地下鉄へ」。s-kenのポエトリーリーディング的なそれに続いて、マコイチは自身のバンドの曲の歌詞(ラップ)をそこに乗せた。hot bombomsのグルーヴがグルグルと渦を巻いていく。そこに乗って歌うs-kenは、喜びと開放がアクションにも表れる。それぞれがソロをキメれば、ひとりひとりのハンパない演奏力がダイレクトに伝わってくる。本編締めの「P.O.BOX 496」も、レコードで聴くよりナマで感じるリズムが凄くて、圧倒された。

アンコールはまずラテン味のある「感電キング」。そしてゲストを含む全員がステージに上がって、賑やかに「イヤダヨ」。中山うりはポケトラも。つまり、多田暁と矢元美沙樹とマコイチと中山うり、管が4人になるわけで、その祝祭的な音の鳴りはさながらニューオリンズのマルディグラのよう。この曲で賑やかにライブは終わった……かと思いきや。1stステージはそこで終わりだったそうだが、2ndステージはもう1曲あった。「まだ体力があまってるから、もう1曲。バラードを」と言って歌われたその曲は『千の眼』の最後に収められていた「夜の翼をポケットに」だ。ゲストとメンバーの多くはステージを去ったが、中山うりがアコーディオンを弾いて、佐野篤がチェロを、矢代恒彦が鍵盤を弾いた。中山うりのアコーディオンの音色がそれまでのこのライブの雰囲気を大きく変えた。後ろのカーテンが開き、アコーディオンの音色が染み渡り、s-kenのヴォーカルもナチュラルでとてもよかった。いい意味で枯れた歌声が深い味わいとなっていて、グッときた。5年前のライブのあと、中山うりはこの曲を「特別好きな曲」とつぶやいていた。今回のライブも、この曲はs-kenと中山うりのふたりの曲というような感じがした。今のs-kenの声による「夜の翼をポケットに」を聴くことができて本当によかったと、そう思った。




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