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interview: the Tiger / 情熱と真心を真空パックしたアルバム『Get Ready』。そこに込めた思いを4人に聞く

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とにかくライヴが圧倒的にいい!と評判を呼んでいるバンド the Tigerが、3月13日に1stフルアルバム『Ger Ready』をリリースした。これまで自主制作のEPを4作品出しているが、今作が初の全国流通となる。

デジタルレコーディングが当たり前のこの時代に、古典的とも言えるテープアナログマルチレコーディングを決行。ライヴにおけるダイナミズムをそのまま音源に反映させることに成功している。

アナログテープレコーダーで一発録り。それをすればどんなバンドでも生々しく、しかも弾力と粒立ちのいい音になるかといえば、そうとは限らない。が、the Tigerの音楽表現はこの録音方式にズバっとハマった。アルバムを聴けばそのことがよくわかるはずだ。

ライヴを観てバンドに惚れ込み、レコーディングの様子もちらっと見せてもらった筆者は、『Get Ready』のフライヤーに次のようなコメントを寄せた。

ロックと言えども頭脳を駆使して構築的に曲を作るミュージシャンが増えるばかりの2020年代において、どこまでも本能的なthe Tigerのやり方・あり方はむしろフレッシュで尊くすら思える。感じるままに歌い、感じるままに音を鳴らす。「感じる」ことはできても、その純度を少しも薄めず外へと放つ力は誰もが持てるものではない。the Tigerはその力を持つことのできている稀有なライヴバンドだ。しかも今度はライヴにおいての衝動や躍動をそのまま音源にしてみせた。憧憬と真心と情熱の一発録音。熱い。実に熱い。

回りくどい説明文をこれ以上加えるのは、むしろ野暮に思える。それでも加えることがあるとすればーー。

Don't think,  Feel!

これだけだ。

  • 配信では9曲だが、CDは全10曲を収録。

昨年「金町」が配信されたタイミングで、4人の音楽的ルーツと結成から現在に至るまでを聞いた記事(彼らにとっての初インタビュー!)を公開したが、続く今回のインタビューではアルバムに収録された全曲についての思いなどをしっかり聞いた。読んで、改めて大音量で聴いてほしい。

インタビュー・構成/ 内本順一
写真/ Toshihiko Imai
協力/ JUST LUCK RECORDS、EDOYA CORPORATION、ダンディライオン、ラカーニャ


左から、ゆうすけ(Ba)、りん(Vo/Gt)、たいが(Gt)、あつし(Dr)

「細かい音まではっきり聴こえて、今までのレコーディングとは全然違った。ああ、こんな感じなんだぁって」(あつし)

ーー前回のインタビューでは4人の音楽的ルーツや、出会いから現在に至るまでの話を聞いたので、今回は1stアルバム『Get Ready』の話をしっかり聞いていきますね。まずはいよいよアルバムが世に出る今の気持ちを。

たいが: (このインタビューが行なわれた2月末の段階で)まだ実感が湧かないです。これまでのEPは自分らで作って自分らの手で出していたけど、今回は初めて自分らの手から離れたところで盤にしてもらっているから。

りん: でも、やっと出るんだなって感じがする。ツアーも始まるし、いよいよだなって。

ゆうすけ: レコーディングしたのが去年の8月で、発売は来年の春だという話をそのときにそこでしていたんですけど、けっこうそこからの時間の経過が早かったですね。

あつし: このアルバムの前に自主レコーディングしたのはもう2年以上前で、自分らにとってはそれ以来のレコーディングだったし、しかも豪華なゲストを迎えてのものだったから……。家で聴くのが楽しみでしかないです。

ーーレコーディングは何日間で?

たいが: 3日間。一発録りなので。

りん: あっという間でした。

ーー途中、しっくりこないみたいなこともなく。

りん: なかったです。気持ちよくやれた。

ゆうすけ: やってもテイク3かテイク4で終わっていたしね。

ーー録音前のセッションとかプリプロにはそれなりの時間をかけた?

たいが: まあでも、以前からライヴでやっている曲がほとんどなので。いつもライヴでやりながらアレンジを決めていく感じなんですよ。

りん: 三宅(伸治)さんと作った曲はレコーディング前にライヴでやってはいなかったけど、それ以外はライヴでやっていたからパッとできました。

たいが: 「僕の街」と「タバコを吸いながら」は、だいぶ昔からあった曲ですし。

りん: 以前のEPに入っていた曲たちですね。あと「ラスト・トレイン」も。

ーースタジオ内の機材の配置とかマイキングに関しても、自分たちで?

たいが: いや、それはお任せしました。だって、わかんないもんな。

ゆうすけ: 口を出せる領域じゃないから。

ーーそのへん、いつも自分たちで全部やっていたときとは違った?

あつし: 全然違いました。ドラムは特に。普通はドラムの前にマイクを置くんですけど、僕の後ろにひとつ置かれて、それによってこんなにいい音になるんだ?!って驚いて。

たいが: うん。ドラムの音がめちゃくちゃいい。一番わかりやすく、今までと変わったよね。

あつし: 自分の耳にはっきり聴こえるようになるんですよ。細かい音まではっきり聴こえて、なんか自分が出している音じゃないみたいな(笑)。今までのレコーディングと全然違った。ああ、こんな感じなんだぁって。

ーーベースとギターはどうでした?

ゆうすけ: 録っているときよりも、最終的にミキシングされたときの音の位置が全然違って、ベースがこう、真ん中にあるように聴こえた。

たいが: ギターの音に関しては、今までよりも自分が耳で聴いている音に近く感じました。今までは、もっといい音を出していたはずなのにって思うこともあったんだけど、今回はその差がなかった。

りん: そうだね。それは感じた。ミキシングされた音を聴いたときに、音の存在感にドキッとするところがあって。ただ大きいとかじゃなく、音が立っている感じ。その感じは初めてでした。空間が感じられるというか。

「ひとりで弾いて、それを聴いてってやっていても、楽しくない。せーのでやったほうが自分たちにとっては楽しいに決まっとる」(たいが)

ーー今回は念願の一発録りだったわけだけど、それができたことに関してはどうですか?

たいが: 今までもそうやって作りたい、せーので録りたいと思っていたんですけど、なかなかそれが難しくて。毎回スタジオの人に、せーのでやれないかって話していたんですよ。だって、せーのでやりたいじゃん。ライヴではそうやっているわけだから。バラバラで演奏することなんてないわけだから。

ゆうすけ: ないね。バラバラに録るとなると、自分の番を待たなきゃならないしね。

たいが: だから、それがやれたのは大きかった。

りん: 一発録りの楽しさを知ってしまった感じです。

ーー要するに、ライヴで出しているバンドの音をそのまま音源に真空パックしたい、その音をダイレクトに聴かせたいということだよね。

りん: それが自分たちのことを伝える一番の方法というか。一番伝わりやすいと思うので。

たいが: それにバラバラで演奏しても楽しくないしな。

ーーああ、楽しいかどうかもすごく大事だよね。

たいが: そうそう。ひとりで弾いて、それを聴いてってやっていても、なんも楽しくない。せーのでやったほうが自分たちにとっては楽しいに決まっとる。

ーー多重録音でじっくり作りたいとは思わない?

りん: う~ん、いつかやりたくなるときがくるのかなぁ。

たいが: オレはあんまり興味ない。まあ、やってみたら楽しいのかもしれないけど。

ゆうすけ: 今のthe Tigerには必要ないなって感じはしますね。

ーーこのアルバムのレコーディングのなかで、新たな気づきみたいなことはありましたか?

ゆうすけ: アナログテープレコーダーで録音したんですけど、あれはすごかった。こんなに違うものなんだというのは、気づきというか驚きでしたね。作業しているところを間近で見たけど、最早、社会科見学してるみたいで。冷蔵庫ぐらいあるデカい機械にテープが乗っかってて、手作業で切り貼りするんですよ。“手で貼るんかい?!“って思って。

ーー演奏もアナログテープレコーダーであることを踏まえてすることになるわけだから、今までとは違うでしょ。

ゆうすけ: そう。テープが回ってから「じゃあ始めてください」って言われて。

りん: 緊張したなー。

あつし: 緊張しますよ。

ゆうすけ: ひとつのテープに3テイク分くらいまでしか録れないので、長引くとテープを取り替えたりしなきゃいけなくなるから。

たいが: オレはそんなに緊張せんかったけど。

りん: してたって!   絶対してたよ!

ゆうすけ: まあでも、昔ながらのそういう録り方が経験できたというだけで、ありがたいですね。

ーー今はいくらでも録り直せるし、あとで簡単に繋げもするから、普通はそこまで一回の演奏に気合いを込めなくてもいいわけだけど、一発となると気持ちの入り方も全然違うでしょ?

たいが: もう命がけだったよな。

あつし: 誰かひとりがやらかしたら終わりという。

たいが: おまえ、やらかしてたけどな(笑)

りん: やっぱり一発でいいテイクにしたいと思うから。でも、ミスしないようにしなきゃって萎縮したりはしなかったけど。

たいが: しなかったね。なんなら、ミスしとるしな。

りん: そうだね(笑)。ミスしてもそのまま駆け抜ける感じで。

ーーちょっとしたミスよりも、勢いと熱を重視する。ライヴ盤ならともかく、その方針でスタジオ・アルバムを作るって、なかなかないかも。

りん: 確かに。やっぱり間違えていない演奏でキレイに録って残したいと思っちゃうのが普通ですもんね。

ゆうすけ: でも、あとで聴いてみたら、意外と大丈夫だったりもするんですよ。気にしているのは自分だけだったりして。

あつし: ミックスダウンが終わって聴いたら、ちょっと走っちゃってるなぁみたいなところはありました。でも全体として聴いてみたら、よかった。

ゆうすけ: 意外と細かいところを気にすんだな。

あつし: いや、気にし始めたらね。もうちょっとこうやったらよかったなぁみたいなところは、やっぱりある。

りん: 私は初めて何も気にしないで聴くことができた気がする。今まで作ったものは、正直に言うとあんまり楽しんで聴けなかったんですよ。でも今回のは外でも聴くし、どこに行っても聴いている。そこは今までと違うし、なんか嬉しかったです。

ーーそれだけ満足度の高い音になったと。

りん: そうですね。ここはこうしたほうがよかったなっていうのは、私はそんなにない。歌っている人間としてというより、the Tigerというバンドの音として聴けている感じがします。

ーーたいがくんは?

たいが: オレは自分の音楽をあんまり聴かないんですよ。酔っぱらってるときしか聴かない。

ーー酔っぱらって聴けるってことは、気持ちいいと思えるってことでしょ?

たいが: そうですね。そのときはめちゃくちゃ気持ちいいなって思うんすよ。今回のアルバムは一番聴いてます。録ってから1回も聴かないやつもあるけど、それとは全然違う。酔っぱらって聴くのに一番気持ちいい(笑)

1stフルアルバム『Get Ready』。JUST LUCK RECORDS/¥EDOYA CORPORATION¥

「”金町”は東京に出てきたときの思い。引っ越した日を思い出しながら書きました」(たいが)

ーーアルバムタイトルは『Get Ready』。1曲目「金町」の最初にこの言葉が歌われている。

りん: そこからタイトルにしました。

たいが: ここからスタートするという意気込みを表わしてます。

ーー「準備はできてるぞ。おまえらはどうなんだ?」と。

ゆうすけ: 挑発的に(笑)。それを金町にいながら言っている感じですね。

ーーでは1曲ずつ話を聞いていきますね。まずはその「金町」。いつ頃からあった曲?

ゆうすけ: 確か僕がバンドに入って1年くらいしてからですね。ってことは、今から2年前くらいかな。

ーーたいがくんが作った曲で、要するにこれは名古屋から3人が上京してきて、金町に住んで、さあここからだという思いを書いたわけですよね。

たいが: そうです。東京に出てきたときの思い。引っ越した日を思い出しながら書きました。すごかったんですよ、オレらの引っ越し。バンを借りて、1台に3人分の荷物を詰め込んで、夜逃げするみたいに真夜中に出てきた。

りん: ぎゅうぎゅうだったね。楽器も積んでいたから。

ーードラムセットも?

あつし: そうです。

りん: 冷蔵庫もね。だいぶ置いてきたけど、それでもすごくたいへんだった。

ーーそんなふうに上京して、さあ、見知らぬこの街でリスタートするぞと。

たいが: そう。金町なんて聞いたこともなかったですから。家の周りの居酒屋さんがいい感じだったという、ただそれだけで決めたので。

ーーほかの地域の家も見るには見たの?

たいが: いろんなところを見ましたよ。名古屋から東京のライヴで出てくるたびに内見入れて。練馬区も世田谷区も行ったし、高円寺とか調布とかでもいくつか見たんですけど、結局金町で内見終わったあとに入った居酒屋がいい雰囲気だったから、この街にしようと。

ーーこの曲はギターがファンキーでかっこいい。何かインスパイアされた曲とかあったんですか?

たいが: キース(・リチャーズ)の曲で、なんだっけな、曲名忘れちゃいましたけど、それを聴いて作りました。

ゆうすけ: りんちゃん以外の3人でスタジオに入ったことがあったんですけど、そのときに、たいががキースのその曲っぽいのを作りたいと言っていて。

たいが: 結局全然違う感じになったんだけど、これはこれでいいじゃないかと。弾き方は、(スティーヴィー・)レイ・ヴォーンが好きなので、キースというよりはレイ・ヴォーンっぽいストロークになってます。

ーーそれからなんといっても前田サラさんのサックスがパワフルで絶大な効果をもたらしている。サックスを入れようというのは、誰のアイデア?

りん: (バンドが所属する事務所、ダンディライオンの)中西さんのアイデアです。で、サックス入れるならサラさんだねって。

ーー4人でライヴで演奏していたときとは、まるっきり変わったでしょ?

りん: 変わりました。この曲をレコーディングする前に元住吉でライヴがあって、そのときに一回やってみようってことでサラさんに入ってもらってやったことがあったんですよ。譜面も渡さず、サラさんに自由に吹いてもらったんですけど、それを聴きながらビビビってきて、「これだ!」ってなって。レコーディングでも好きなように吹いてもらいました。

たいが: セッションだね、あれは。ジャムってるだけだった。

ーーサラさんとは前から知り合いだったの?

たいが: 名古屋におるときから、サラさんがいたバンドと何回か一緒にライヴに出ることがあったので。

ーーBIM BAM BOOM?

たいが: そうです。“あのサックス、やべえ!”って言ってたよね。

りん: そうそう。そのときからサラさんが大好きだったんです。でもあるときからBIM BAM BOOMを抜けちゃって、そのへんからしばらく会っていなかったんですけど……。

たいが: 東京に来てからまた会えたんだよね。

りん: そう。Momiji&The Bluestonesでお会いして。

スタッフU: サラちゃんがthe Tigerのことをすごくいいって言って、(ダンディライオンの)中西さんにリコメンドしたんだよ。

たいが: そうだ。サラさんがツアーの車のなかでオレらの音源を中西さんに聴かせてくれて。それがなかったら、今のオレたち、ここにいなかった。

ーーこの曲はMVもかっこいい。ルーフトップ・コンサート的な。

ゆうすけ: あれ、3人が住んでいる家の建物の屋上なんです。

ーーよく貸してくれたね。

たいが: 無断です(笑)

ーービートルズも無断だったしね。それで人が集まって警察が来たら、映画にできたのに。

たいが: そうそう。ちょっと期待したんですけど(笑)

ゆうすけ: まわりのマンションの人が窓からのぞいていただけでした。

たいが: うるさいからか、窓を締められた。

あつし: あれは準備がたいへんだったよね。撮るのは一瞬だったけど、準備と片付けがめっちゃ大変だった。

たいが: 3階立てのビルなので、屋上はほぼ4階。機材をそこまで運ぶのが大変で、死ぬかと思った。

ゆうすけ: 11月なのに汗かいたのを覚えてます。

「思い出が詰まった家だったんですけど、それが取り壊されてなくなってしまう。“僕の街”はその寂しさを真っすぐ書きました」(りん)

ーー2曲目は「僕の街」。アルバムから3曲目のリード曲。

りん: 私が10代のときに書いた曲です。

ーーどんな思いで書いたんですか?

りん: 昔、名古屋の今池のほうに住んでいたんですよ。そこは築何十年とかの古い長屋だったんですけど、取り壊しになるというので、瑞穂区に引っ越さなきゃならなくなって。小学校6年のときでしたけど、それが私にとって人生初の引っ越しだったので、けっこうな衝撃だったんです。友達と離れ離れになるのも辛かった。で、前の家が取り壊されるというときに詩みたいなものを書いて、それを元にしてこれを書きました。

ーー「変わりゆくこの景色よ ありがとう」と歌われている。つまり以前住んでいた家やそのまわりの景色に対して、ありがとうと。

りん: そうです。いっぱい遊んで、いろんな思い出が詰まった家だったんですけど、それが取り壊されてなくなってしまう。その寂しさを真っすぐ書きました。

ーーライヴで歌っていて、その頃の記憶がよみがえったりすることもあったりする?

りん: この曲を今池祭りかなんかに出て歌ったときに、小学生のときに一番仲良くしていた友達が観に来てくれてたんですよ。たぶんその友達は、そのとき初めて私たちのライヴを観たんだと思うんですけど。その子がライヴを観ながら、目の前で泣いていて。そのことを今でも歌いながらたまに思い出しますね。

ーーその友達にもアルバムを聴いてもらえるといいね。

りん: もうお母さんになったんですけど、たぶん喜んでくれるんじゃないかなって思います。

ーーアルバムのなかでほかの曲とは少しトーンが異なる切ない曲だし、コーラスもすごくいい。

りん: 佐々木久美さんと佐々木詩織さんが入れてくださって。自分が中学生の頃に書いた曲に、まさかこんなにいいコーラスが入るなんて思ってもみなかったので、涙が出るくらい嬉しかったです。

ーーこの曲は昔録ったもの(EP『DORAIBU NA KIBUNN』)の再録になるわけですが、演奏に関してこだわったところはありますか?

たいが: これはでも、昔録ったのとそんなに変わってないですね。シンプルだし、余計なことはやってない。

ーー3曲目「タバコを吸いながら」。これもけっこう昔の曲なんですよね。

たいが: これはオレが書いたんですけど、そのときのことはよく覚えてます。名古屋の実家に住んでいる10代のときで、暇だったのでアコギを持って近くの川に行って、橋の下で弾きながら曲を作っていて。橋の下だと音が反響するのがいいんですよ。それでこれができた。

ーーストーンズっぽいイントロのリフとかもそのときから?

たいが: いや、もともとはアコギの曲だったので、リズムからして全然違ってました。

りん: わりとゆったりした感じの曲だったよね。

ーー歌詞は10代で書いたときのまんま?

たいが: 歌詞はそうです。「いつもの本屋に行って」の本屋はBOOKOFFですけど(笑)。当時、駅前のBOOKOFFに通いすぎていて。毎日1~2時間、立ち読みしてたんですよ。そのうち店員に「いらっしゃいませ」と言われんくなった。

ーーこの歌詞みたいに、暇な時間を楽しんだり噛みしめたりしていたの?

たいが: その頃はそうでしたね。橋の下でオレ、土器を作る実験をしてたんですよ。木の棒っきれで火を起こしたくて、ずーっとゴシゴシやってたんだけど、着かないから最終的にライターで着けた(笑)。で、焚き火して、粘土質の土がいっぱいあったからそれをこねて。

ゆうすけ: 暇じゃねえかよ!   タバコを吸いながらそんなことしてたのか。

たいが: タバコ吸ってるから、ライターを持ってたんだな。

ーー今でも暇があったら、そんな感じで過ごしたい?

たいが: でも意外とオレ、酒を飲まないと仕事マンなんすよ。

りん: たいがは、しらふだと、あれもやらなきゃこれもやらなきゃって、せかせかしてるもんね。だから完全に休みってならないとスイッチを切り替えられないところがある。っていうのがこの歌詞にも出てるような出てないような。

ーーヴォーカルで意識したことは何かありますか?

りん: 力を入れすぎず、ゆったり歌うことですかね。昔のヴァージョンは曲自体がもっとゆったりしていて、それもよかったんですけど、このアルバムに入れるにあたってわりとロックテイストの強いアレンジに変えたんです。けど、こういう歌詞なので、あんまり力を入れないように歌いました。

「我々リズム隊がノリすぎると曲の雰囲気が台無しになるので、その場その場でリセットしながら弾くことを意識してました」(ゆうすけ)

ーー4曲目は「オシエテ」

たいが: これを作ったのは「金町」よりあとだっけ?

ゆうすけ: あとだね。

りん: 「金町」を作ってすぐだったと思う。詞ができていて、コードもなんとなくできていたけど、メロディだけが決まってなくて、セッションして初めて詞からメロディを付けることをしたんです。

ーーギターでタメをもたせて入る感じがいい。

たいが: ジミヘンの「リトル・ウイング」みたいなことをやりたかったんですよ。

りん: そうなんだ?  へえ~。知らなかった、それは。

ーーこの曲はリズム隊のよさも強く出ている。

ゆうすけ: 緩急のつけ方がなかなかこう……。

りん: 難しいよね、これ。

ゆうすけ: 我々リズム隊がノリすぎると曲の雰囲気が台無しになるので、その場その場でリセットしながら弾くことを僕は意識してました。

ーー冷静さを失わないように。

ゆうすけ: そうですね。目立ってもよくないし。

りん: ンチャ!っていう一発の音が重いから、ズレると終わりだしね。

たいが: リズム隊に対して、ギターはフリーな感じだから、オレはけっこう気楽だったけど。スライドで戻るところは、あれ、レイ・ヴォーンのイメージで弾きました。

ーー5曲目が「Travelin'」

たいが: これはみんなでアメリカに行ったときのことを歌ったもので。

ーーそうだよね。前回のインタビューで4人でL.A.に行ったときの話を聞いていたから、すぐにわかった。「歩けど歩けど知らない場所 言葉も通じず困り果て それでも何とか辿り着く 一息つくはスラム街の宿」。まさにこの感じだったんでしょ?

ゆうすけ: 本当にこの通りでした。

りん: で、帰国してから、すぐにこの曲ができた。たいへんだったけど、行った甲斐はありました(笑)。

たいが: 今でもあの光景が目に浮かぶもんな。金がなくてタクシーを呼べないから、大荷物持ったまま何時間も歩いて宿に帰るわけですよ。それもスラム街の宿で。

ーーたいへんな経験だったけど、とりあえずこの曲ができたのはよかったよね。南部っぽさもあるロックで、ストーンズで言うなら『メイン・ストリートのならず者』に入っていそうな。

たいが: ああ、わかります。あと、リトル・フィートが好きなので、そのへんの感じも意識して。

ーーホーンもいい。

りん: ホーンのセクションを考えたのはサラさんなんです。

たいが: あのホーンのフレーズが、4人でライヴしてるときもいつも頭のなかで鳴っている。

ーーリズムに関してはどんなことを意識しましたか?

たいが: グルーヴ感!

ゆうすけ: そうだね。コードが全然変わらない曲なんですよ。一直線でズンズン行く感じが強い。あと、サビが変則的。

「”働き者の歌”はザ・バンドを感じるってよく言われるんだけど、そういうつもりで書いてはいない」(たいが)


ーー6曲目は、今のところthe Tigerの代表曲と言っていいバラード「働き者の歌」。たいがくんの作詞作曲だけど、できたとき、かなりの手応えがあったのでは?

たいが: ありましたね。すごくいい曲が書けたなと思った。

ーー3人は、最初にたいがくんからこれを聴かされたとき、どう思いました?

りん: 「いいじゃん!」って思って、そう言いました。「これは、きたんじゃない?」みたいな。

あつし: うん。いい曲やなぁと思ったなぁ。

たいが: オレはいつも歌詞をつらつらっと一気に書いちゃうんですけど、これは日を分けて、じっくり考えて書いたんです。メロディも歌詞と一緒に歌いながら作っていった。

ーー丁寧に書きたい曲だったんだね。

たいが: そうです。言葉も何度も入れ替えたりして。そういう曲は、あんまりないんですけど。

ーーどういうところから着想を得て書いたの?

たいが: これは自分の親に向けて書いたんです。

ーーそうなんだ?!  一生懸命働いているご両親の姿を見ながら……。

たいが: そんな感じでしたね。

ーー必ずライヴでやる曲だけど、録音するにあたって意識したところはありました?

ゆうすけ: いつもライヴでやっているそのままの感じでやろうと、個人的には思ってました。

たいが: ギターソロもそのまんま。ライヴと同じソロを弾いています。ほかの曲はあんまり決めないで、そのときどきの感覚で弾くことが多いんですけど、この曲はいつも同じように弾くようにしていて。

ーーザ・バンドからの影響を感じる曲だけど、そのあたりは意識的に?

たいが: いや。それ、全然ないんですよ。でもよく言われます。ザ・バンドを感じるって。

りん: めっちゃ言われるね。

たいが: でも、そんなつもりでは書いてない。ザ・バンドはめっちゃ好きなので、自然に出たのかもしれないですね。誰々が好きだから誰々みたいな曲を作ろうっていうときはけっこうありますよ。「Travelin'」はリトル・フィートみたいな曲を作りたいと言って作ったし。でも「働き者の歌」は、そういうのはなくて、自分で作りきってからみんなで合わせた。

ーーそういう曲が特別な曲になるのかもしれない。

たいが: そうですね。

ーー7曲目は「夏~思い出せないメロディー~」。これもちょっと異色で、シティポップ感がある。the Tigerにはこういう引き出しもあるのかぁと思った。

りん: 確かに異色ですよね。三宅さんのコード進行から生まれました。

ーーそもそもどういった流れで三宅伸治さんと一緒に作ることになったんですか?

りん: ライヴハウスで何度かお会いすることがあって、三宅さんと一緒に1~2曲作れたらいいねって話をしていたんです。で、とりあえず一緒に会いましょうっていうところから始まって、スタジオで3人……アコギを持って私とたいがと三宅さんで会って、なにしようかとあれこれやってみて。

ーー緊張することなく、三宅さんの胸を借りて。

りん: でも、自分たち以外の誰かと曲を作るというのをしたことがなかったから、そこは緊張しましたね。三宅さんがリードしてくれるだろうから心配ないだろうとは思っていたんですけど。

たいが: 初めからこういう曲を作ろうというイメージがあったわけではなく、更地から一緒にコードを考えて作っていった。「ここはこのコードがいいんじゃないですか?」とか言いながら決めていって、最終的にはりんが全部仕上げて。

りん: あとは詞だけだねってなったときに、このコード進行の曲に詞をつけるのはたいがじゃなくて私だなと自分で思って。なんとなくあるんですよ、そういうのが。で、私が家で書きました。

ーーどういうところに着想を得たんですか?

りん: 三宅さんと一緒に作る曲ということをすごく意識していたので、三宅さんの顔を思い浮かべたらなんとなくこの歌詞がでてきて(笑)。三宅さんが提案してくださったのも夏をテーマにしたもので、そこから”よし、夏で広げていこう”と思って書きました。みんなのなかにある夏の風景。それを説明的じゃなく思い出せるような歌詞にしたかった。

たいが: 「テニスボールが光る屋根の上 繋がる青い空と夏の匂い」ってところ、よく思いついたなって思った。ここ、いいよね。夏の景色がこのフレーズでよくわかる。授業中に窓から外を眺めたら、屋根にボールが乗ってるのが見えたみたいな感じでしょ。

りん: そう。子供の頃のぼんやりした記憶にそういう風景があって。でもこの曲、「La La La… 思い出せない あのメロディー」というところだけは苦労しました。Cメロを作りたいと三宅さんに言ったものの、説明的な感じにはしたくなかったから、「La La La…」にして、ぼんやりした記憶を表現するみたいにして。

ーーなるほど。ここで一瞬懐かしい風が吹く感じがあるよね。因みにアウトロのギターソロはたいがくん?

たいが: そうです。でも間奏の三宅さんのスライドもいいんですよね。

「三宅伸治さんと一緒に作るにあたって、まずお互いの共通点を探ることが重要で、同じように感じられる歌詞がいいなと」(りん)

ーー8曲目はライヴでお馴染みの「ラスト・トレイン」。前のEP『七転八虎』収録曲の再録で、ジャムっぽい前奏部分からグッと引き込まれる。歌が入る前に1分以上あるでしょ?

たいが: ライヴでもあの感じでやってますけど、ライヴだともっと長い。

ーーやっぱり演奏をしっかり聴かせたいバンドなんだなということが、あの前奏でよくわかる。

りん: ああ、そうですね。

ーーしかもベース始まりで。

ゆうすけ: そう。この曲だけはテイク4くらいまでやったんですけど、その理由はあのセッション部分をもっと長くするか短くするかということで。どっちかというと曲の本編よりも、前奏のセッション部分に比重をおいているんじゃないかっていう。本編はいつも通りやればいいって感じなんだけど、前奏はだいぶ気合入れてやってて、気持ち的にはメインは前奏のほうだった(笑)

ーーライヴ盤ならともかく、スタジオアルバムの曲でジャムセッション的な前奏をあんなにしっかり収めるってなかなかないよね。

りん: 確かに珍しいですよね。

ーー9曲目はザ・バンドの「オフェリア」に、たいがくんが日本語詞をつけたもの(*この曲は配信はされておらず、CDのみ収録)。

たいが: 前のベースが抜けて、オレとりんとあつしの3人で活動していた頃によくやっていたのがこの曲で。自分たちのオリジナル曲みたいにやってました。

ーーこんなふうに洋楽に日本語詞をつけてカヴァーしている曲はほかにもあるの?

たいが: ほとんどないかな。オーティス・ラッシュの「オール・ユア・ラヴ」くらい。

りん: 「オフェリア」に日本語詞をつけたものをたいがが持ってきたときに、これはすごいなと思った。

たいが: ザ・バンドの曲は全部好きなんですけど、「アップ・オン・クリプル・クリーク」とか「ザ・ウェイト」とかはけっこうカヴァーされてるじゃないですか。でも「オフェリア」を日本語でカヴァーしているバンドはないだろうから。一回だけライヴハウスで「オフェリア」をカヴァーしているバンドを観たことあるけど、英語詞のままやってたし。

ザ・バンドの「オフェリア」。アルバム『南十字星』に収録

ーーこれを日本語詞にするのは相当難しかったのでは?

たいが: 難しかったです。でも、どういう話か自分なりに調べて、それをそのまま訳すんじゃなくて、別の言葉でこの曲の雰囲気を伝えたいと思ったので。

ーー明るい曲調だけど、暗い話だったりするからね。

たいが: そうそう。悲しいんですよね。

ーーオフェリアという名前の”彼女”が突然いなくなるんだけど、恐らく“彼女”は死んでいて……。

たいが:そう。ぼかしてあるけど、たぶん死んでるんですよね。

ーーで、終りのほうで「みんなが君の正体を知って怖がって逃げてった」と歌われて、「でも僕はまだ待ってる」と続く。「I'm still waiting for the second coming」と歌われるわけだけど、セカンド・カミングというのはキリストの再臨ってことで使われる言葉だから、なかなか難解だし、深い歌詞なんだけど。

たいが: そうですね。だから本も読んで雰囲気をつかんで、自分なりの解釈で日本語詞にすることができたんじゃないかなと。こだわったのは、最初の1行だけはザ・バンドの英語詞と同じにしようってことで。「窓」というワードを使いたかったんです。

ーーオリジナルの要素も残しつつ、自分なりの解釈で日本語詞をつける。そういう意味ではかなりのチャレンジだね。

たいが: チャレンジしようと、やってみました。

ーーテンポはザ・バンドのオリジナルより速くして、軽快なアレンジになっている。

たいが: ゆっくりやってあの味わい深さを出すのが、まだオレらには難しいってところもあって。

あつし: でも3人でやってたときは、もうちょいゆっくりやってたよ。

たいが: そうだっけ?   ……そうか。まあでも、このくらいのテンポもいいと思ったので。

ーー最後が「我慢できない」。これも三宅さんとの共作曲。

たいが: これはサビの歌詞を三宅さんが書いて、一番のメロをりんが書いて、2番のメロをオレが書いて。セッションでまわして作りました。

りん: 三宅さんと私たちと一緒に作るにあたって、まずお互いの共通点を探ることが重要で、同じように感じられる歌詞がいいなと。となると、バンドのことを歌うのがいいねってなって、そこから書き始めたんです。で、2番をたいがが書いて。まさに3人で作っていった曲です。

ーーツアーバンドの日々を表現した歌詞で、(RCサクセションの)「ドカドカうるさいR&Rバンド」的な1曲だよね。

たいが: 完全にそうですね。

ーーライヴの最初か最後にやるのにもってこいのロックンロール。

りん: そう。それぐらい振り切った感じの曲です。

ーーこの曲のギターは、りんちゃんも弾いてる?

りん: これはたいがと三宅さんのふたりで弾いていて、私は弾いてないです。ライヴではたいがと私で弾いてますけど。

ーー因みにこのアルバムのなかでりんちゃんもギターを弾いている曲は?

りん: 「働き者の歌」とか「Travelin'」は私が弾いてます。レコーディングでギターを弾いて歌うのは初めてでしたけど、ライヴでやってる通りに弾いているし、ライヴの感じがかなり出ていると思いますね。

ーーサラさんのサックスも最高にかっこよくて昂る。

りん: サラさんに作ってきてもらったんですけど、完全に清志郎の世界観ですね。サックスが入ったとき、感動したなー。

たいが: うん。“ああ、これ、オレが聴いてたやつみたいだ“って。

ーー終盤のギターのかけあいも最高。

たいが: あれをやりたかったんですよ!

ーーリズム隊的なこだわりは?

あつし: これはもう、疾走感。勢いでやる。勢いが大事な曲なので。

ーー勢いと熱さ。

あつし: あと、楽しさ。

りん: そうだね。楽しさが大事だね。

たいが: シンプルで簡単だからいいんだよ。演奏が簡単な曲が結局一番好きだね。

りん: うん。自分たちが楽しむ余裕のある曲がやっぱりいい。

「オレはメインストリームの音楽を聴いているやつらに届けたい。メインストリームの音楽を聴いてる人たちも、このアルバムのよさがわかると思うんだよ」(たいが)


ーーそんな全10曲だけど、曲順は悩まず決まりました?

たいが: 「金町」で始まるってことは初めから決めていて。あとはアナログ盤にしたときにA面とB面で分かれるところをどれにするかというのを考えました。B面は「働き者の歌」で始めたいから、CDでは6曲目だなとか。それぐらいですかね。

ーーみんながCDで音楽を聴いていた時代から変わって、最近はアナログ盤にするときのことを想定して曲順を決めるバンドも増えてきている。

りん: あ、やっぱりそうなんですか?!   これもアナログ盤を出して、アナログ盤で聴いてもらいたいもんなぁ。

ーーこのジャケの写真もかっこいいよね。

たいが: かっこいいけど、オレがこんなに前に出ていていいのか?とは思いましたね。

ーー今まで女性ヴォーカルのバンドはその人を前に押し出すのが当たり前みたいになっていたけど、「オレたちは4人でバンドなんだ」という主張がこのジャケットに表れているから、僕はすごくいいと思った。

たいが: 確かにそこは表れてる写真ですよね。オレはりんがバーンって前に出ている写真が当然選ばれるんだろうと思っていたけど、確かにこのほうがバンドっぽい。

りん: うん。めっちゃ気にいってます。実際たいががリーダーだし、自分たちにとってもバンドのなかでたいがが一番前にいる感覚だから。

ーーそういう意識なんだ。

りん: そうなんですよ。私がバンドのフロントって思っている人もいると思うけど、この人が前にいて引っ張っているバンドなので、そこはばっちり表現できている写真だなと思いますね。

ーーでは、このアルバムが聴く人にどう届いてほしいか、聴く人にとってどういうアルバムであってほしいかを一言ずつ。

ゆうすけ: 僕は、僕らみたいに流行りの音楽が好きじゃない人、メインストリームじゃない音楽を聴く人に届いてほしいですね。僕がthe Tigerを見つけて知り合ったときがまさにそうだったんです。自分のように昔のロックが大好きな人が、学校にも外にもまったくいなかったんですよ。だからthe Tigerを知ったときに、同種の人間を見つけたような喜びがあった。そういう、以前の自分のような人に届いてほしい。

たいが: オレ、まったく逆だわ。オレはメインストリームの音楽を聴いているやつらに届けたい。メインストリームの音楽を聴いてる人たちも、聴いたらこのアルバムのよさがわかると思うんだよ。

ゆうすけ: おまえはそれでいいよ。

たいが: うん。オレはそれでいい。

りん: 両方に届けばいいじゃん(笑)。どっちの人も楽しめると思うので。

ーーうん。あと、自分も含めてブルーズロックが好物のおじさんたちは間違いなく食いつくだろうけど、若い人たちにたくさん広がるといいよね。

ゆうすけ: そうですね。若い世代に届いてほしいというのはあります。

ーー別にマニアックな音楽をやっているわけでは全然ないし、本当に誰もが楽しめる明快なアルバムだと思うから。

たいが: うん。自分は王道中の王道をやっているつもりだからね。むしろ日本でいま流行っている音楽のほうがよっぽどマニアックというか複雑なことやってるじゃない?   オレらのは極めてわかりやすい。“ここでサビきたー!“みたいな。一番、王道。なんか邪道みたいに言う人もいるけどさ。

りん: 少数派みたいに言われるからね。

ーー邪道ってことは絶対ないけど、20代でこういうブルーズロックを真っすぐガツンとやってるバンドが珍しいのは確かだよ。

たいが: 名古屋のライヴハウスに出ているときによく言われたんですよ。ポップの王道から外れてるからどうのこうのって。こっちは王道をやっているつもりなんで、そんなこと言われてもまったく響かない。

ーーあつしくんはどう?   どんなふうに広がってほしい?

あつし: 僕のなかでは、ドライヴァーの人がクルマのなかで聴いているイメージがあるんですよ。なんか、トラックの運転手さんとかにも聴いてもらいたいです。

りん: そうなんだ?!

たいが: NACK5で流れたときは嬉しかったな。NACK5はドライヴァーの人もよく聴いているから。

あつし: そうそう、まさにそれ。働いている人たちに「働き者の歌」を聴いてもらいたい。頑張ってる人に届けたい。

たいが: おまえがまず頑張れよ(笑)

ーーはははは。りんちゃんはどう?

りん: 「金町」で始まって、いい感じでストーリーができているので、アルバム1枚を通して聴いてもらえるのが一番嬉しいですけど。でもけっこうバラエティに富んでいるから、「あの1曲が刺さりました」みたいに言ってもらえるのも嬉しい。とにかくいろんな人に聴いてもらえれば。

ーーロックンロールは普段聴かないけど、ロックじゃない「夏~思い出せないメロディー~」は大好きでした、っていう人もいるかもしれないしね。

りん: そうそう。そういうことが起こりそうなアルバムだなと思うので、そういう反応も含めて楽しみです。自由に聴いてほしい。

7インチ アナログシングル「働き者の歌 c/w おそうじオバチャン(Live) 」。4/20リリース

ーーでは最後に7インチの話も。4月20日に「働き者の歌」の7インチが出て、そのB面が(憂歌団の)「おそうじオバチャン」のカヴァーをライヴ収録したものだそうで。この前のシモキタのライヴで、音がめちゃめちゃいいって言ってたよね。

たいが: そうなんですよ。自分たちがステージで演奏しながら聴いている音に最も近い。磔磔のライヴ音源なんですけど、聴いたときにびっくりしました。”これだよ!”って思ったもん。あれこそthe Tigerが出している音で、あれを超えるものを聴きたかったら、あとはもうナマで聴いてもらうしかない。

ーーA面が「働き者の歌」で、そのB面が「おそうじオバチャン」っていうのがいいよね。まさしく働き者の歌ってことで。

りん: アルバムのなかの曲でどれをこのB面にしようかって話していたら、ディスクユニオンの若いスタッフが「おそうじオバチャン」がいいんじゃないかと提案してくれたんです。どこかのライヴで歌っているのを聴いてくれてたみたいで。

ゆうすけ: 斜め上の提案がきたので、”逆にいいんですか? ”みたいな。

りん: これも絶対聴いてほしいですね。本当にその空間に自分がいる気持ちになるくらい、いい音で録れているので、期待して待っていてほしいです。


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