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the Tiger、NITRO@高円寺Show Boat

2023年6月21日(水)

高円寺Show Boatで、「Nitro present  ハートに火を、眼にはカケラをVol.3」。出演は、the Tiger、NITRO。

高円寺Show Boatでライブを観たのはずいぶん久しぶり。前に行ったのはReiとryu matsuyamaの2マンで(今じゃ考えにくい組み合わせ。そのとき僕は初めてReiのライブを観たのだ)、それはReiがインディーでの1st Mini Album『BLU』を出す前だった。なのでもう8年以上も前になるか。

NITROの企画ライブVol.3。先攻はthe Tigerだ。

評判を聞き、YouTubeでライブ映像を観て、去年からずっと気になっていたバンド、the Tiger。ライブを観に行こう観に行こうと思いながらタイミングが合わず、ようやく今回、早々に予約して観に行けた。

百聞は一見に如かず。やはりライブを観ないことには始まらない。っていうのはどんなバンドにも当てはまることだが、1時間尺のthe Tigerのライブを初めて観て、改めてそれを実感。躍動、迫力がものすごい。それはもう想像以上で、正直、驚いた。正真正銘のライブバンドだ。

Vo.りん、Gt.たいが、Ba.ゆうすけ、Dr.あつしの若い4人組。MCでは3人が名古屋出身、ベースのゆうすけだけが確か山梨出身と言っていた。

70年代のロックンロール、またはロッキンブルーズ(あるいはソウル)に対する愛情が一聴して感じとれる明快でメロディアスでほどよく土臭い楽曲群。ストーンズ、ザ・バンド、CCR、ジャニス、アレサ、日本ならRCとか、そういったバンドやシンガーを好きで聴いてきたんだろうなとわかる音楽性とパフォーマンスのあり方が、2023年にはむしろ新鮮だ。頭で考え構築して音楽を作る(やる)知性的なバンドが増えた2020年代にあって、彼らは考えすぎたり無理にひねったりせず、本能的に、感じるままに、自分たちが心から楽しめる音楽、大好きで気持ちいいと思える音楽をやっている、という印象。

古臭いとも言われかねないそういう音楽性で堂々と正面きって勝負できるのは、男性メンバー3人にしっかりした演奏力が備わっていること(バンドの要であり束ね役でもあるのは恐らくギターのたいがだろうが、リズム隊も強力だ)も大きいが、なんたってヴォーカル・りんの伸びやかでパワフルで溌剌とした歌唱力が破格で、それが演奏と完全に一体となっているからだろう。4人が互いを信頼しあい、そのアンサンブルに相当の自信を持ってライブをやっていると、そう見えた。要するにバンド力。その強さだ。

20~30分の短い尺でも相当のインパクトを観る者に与えるだろうが、1時間尺で観るとなると、構成力もなかなかたいしたものだった。タイトルはわからないが終盤に演奏したバラードが恐らく自信曲/勝負曲なのだろう。そこでしっかり聴き入らせて、そのあとまたロックンロールで盛り上げた上、さらにアレサの「リスペクト」を叩きつける……といったあたりの組み立てが高揚を誘った。よって、自分は事前聴きなしで観に行ったにも関わらず、退屈する瞬間が一瞬たりともなかった。引き付けられっぱなしで1時間が過ぎていった。MCからは4人の仲の良さも伝わり(一緒に住んでいるんだそうな)、そういうところは若いファンにとっての親近感にも繋がるだろう。

とりわけヴォーカル・りんの歌う姿に引き付けられた。ダンスというのとは違うが、音楽が彼女の動きを自由にし、彼女はカラダ丸ごとで音楽に乗り、ときにマイクを両手で握りこんでシャウトする。音楽がありさえすれば自分を開放できて、自分でも抑えきれない力が漲る、そういう人なんじゃないか、きっと。

自分的には2006年にデビュー前のSuperflyをライブハウスで初めて観たときの衝撃を思い出した…というか、ある意味においてはそれを上回った気がした。Superflyのそれは第一にヴォーカル・志帆の歌ヂカラだったが、the Tigerはりんを含んでのバンド力総体に「すげえ!」となった。

後攻は、NITRO。Gt.鬼怒無月、Ba.宮田岳、Dr.樋口素之助。自分は黒猫チェルシーではなくJAGATARA2000のライブで宮田岳を観て以来素晴らしいベーシストだなと思うようになり、宮田と樋口素之助が正式メンバーとなった頭脳警察のライブも観ていたが、そこに鬼怒無月が混ざるとこうなるのか!という面白さ。ロックだが、プログレッシブ味が増幅されて、宮田のヴォーカルの独特の味わいも加われば相当ユニークなものとなる。

頭脳警察の新曲(宮田作。なのでここでやる権利は自分にあると言っていた)がいち早く聴けたのもラッキーだったし、凄い曲だった。

アンコールでは、the Tigerの4人が呼びこまれ、セッション。曲はまずレッド・ツェッペリン「ロックンロール」で、樋口素之助とあつしのツインドラムが凄まじかったし、りんも普通は声域的に難曲と思われるあの曲を生き生きと歌っていた。さらに、宮田と樋口が頭脳警察の現メンバーということで「銃をとれ」を。ヴォーカルを鬼怒無月がとったが、後半ではりんがその曲に乗せてまったく別の歌詞を即興っぽく歌いこんでいた。なんというか、肝が据わっている。

NITROの音楽のオリジナリティと演奏の強度は凄かった。そして、the Tigerのポテンシャルは計り知れず、これからどんどん進化してこの1~2年で勢いよく動員を増やしていくに違いないと思った。これからの成長を長く見守りたくなるバンドであり、久しぶりにそう思えたバンドと出会えたことにちょっと興奮している自分がいる。

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