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ウルフルケイスケ、the Tiger、JOHNNY,SHINOKI & KAMBE@SHOJIMARU

2023年8月25日(金)

神田SHOJIMARUで、ウルフルケイスケ、the Tiger、JOHNNY,SHINOKI&KAMBE。

イベントタイトルは「MAGICAL CHAIN SPECIAL at SHOJIMARU」。MAGICAL CHAINはウルフルケイスケがずっと続けているライブのタイトル……というよりはウルフルケイスケというミュージシャンにとってのテーマと言っていいもの。直訳すれば「魔法の鎖」。彼にとっての魔法の鎖とは即ち音楽で、音楽で人と人とが繋がっていく、ということだ。人と人とは、ミュージシャンとミュージシャン、ミュージシャンとお客さん、お客さんとお客さん、その全部を含んでいる。と、僕は解釈している。

このライブもまさしくMAGICAL CHAINの体現で、全出演者とお客さんが音楽という魔法の鎖で繋がった、そういうライブだった。

初っ端はthe Tiger。自分的にいま最も気に入っている&これからを楽しみにしているバンドだ。the Tigerは着火が早い。立ち上がりに時間を要さない。出てきて音を鳴らした瞬間、それはもうこのバンドの音になっている。このバンドのアンサンブルになっている。ジワジワあげていくバンド、曲を進めながら徐々にそれぞれの楽器音の合わさりがよくなっていくバンドというのもあるが、the Tigerは違う。ギターが、ベースが、ドラムが鳴った瞬間に音と音とが組み合い、ヴォーカルのりんは条件反射的にカラダが音に乗って動いている(彼女は実に幸せそうに音に乗る)。一瞬でこのバンドのアンサンブルがそこで表現されるのだ。なので、初めて観る人に説明の時間を要さない。1曲目で、こんなバンド、こんなゴキゲンな音を出すバンドだってことを、観る人が理解できるのだ。それはロックンロールという音楽の構造にもよく似ている。説明がいらないし、理解するのに時間を要さない。そういうよさだ。

とりわけ昨夜の序盤のロックンロール曲連打は効きめがあった。ドライブしていく感覚があった。1曲は初おろし曲だったようだが、それもそうとは思えぬこなれた感触だった。

約40分のステージで、最後にウルフルケイスケを呼び込み、そこで演奏したのはザ・バンドの「ウェイト」の石田長生バージョン(日本語詞を石やんがつけて歌っていたもので、名カバーとしてよく知られる)。たいが、りん、ケーヤンの3人が横並びでギターを弾き、りんが歌い、たいがとケーヤンがハモる。ギタリスト同士のリスペクトの念が見て取れるのと同時に、りんのなかのソウルが歌に滲む。めちゃめちゃよかった!

2番手はJOHNNY,SHINOKI&KAMBE。自分は初めて観るバンド。序盤の曲はシティポップ的なメロディだったが、曲が進むにつれて土臭い雰囲気も出てきて、後半ではオールマン・ブラザーズ・バンドのカヴァーをやったりも。メンバー3人それぞれの個性(髪型も服装も)がずいぶん違っていて、その3人が曲によってヴォーカルをとるのだが、声の個性も表現の仕方もそれぞれでまったく違う。なのでこういう音楽を好きでこういう音楽をバンドとしてやりたいのだということがすぐにはわからないが、それが面白さでありこのバンドの幅なのだということもできるか。メンバー3人に加え、この日はサポートが3人。なんとツインドラムで、ひとりは鍵盤弾きのメンバーの弟、もうひとりはSHOJIMARU店長の杉山章二丸さん。ステージ上に計6人もいて、特にギターのふたりはそれぞれ異なる個性を思いきり前に出しているのだが、押しはあっても引きがなく、もう少し音が整理されるといいのにとは思った。

彼らのライブ終盤にもウルフルケイスケ再登場。そこではシーナ&ロケッツの「アイ・ラブ・ユー」を。真ん中に立つヴォーカルはケーヤンで、ギタリストふたりはケーヤンのギターと絡めて嬉しそう。鍵盤の彼は8歳の頃からケーヤンに可愛がってもらっていたそうで(いま21歳だと言っていた)、まさしくMAGICAL CHAINのステキさを多大に感じていたに違いない。金髪の彼の鍵盤音はグルーヴィーでとてもよかった。

トリはウルフルケイスケ。バンドではなく、ひとりライブ。「MAGICAL CHAINひとり」。のっけから清志郎の「JUMP」!    着ているTシャツに「HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY」と描かれてある通り、あの笑顔でみんなをハッピーにするロックンロールを気持ちよさそうに演奏して歌う。ミスター・スマイルここにありといった感じだ。自身のソロ曲もカヴァー曲も、いいものはいいという思いの元で同列に演奏され、カヴァーではウルフルズの名曲「いい女」も。久々に聴いたけどやっぱりいいね。

JOHNNY,SHINOKI&KAMBE、それからthe Tigerのりんを呼び込んでの「ミュージック」がとてもよかった。さらにアンコールでは出演者全員がステージにあがって、そこでは頭脳警察「コミック雑誌なんか要らない」を演奏。「わ~たしはコミック雑誌なんかいらない」と歌うりんのヴォーカルが超強力で凄かった。あんなコミック雑誌、聴いたことない。PANTAさんにも聴かせたかったよ。

振り返ればザ・バンド(ロビー・ロバートソン)、シナロケ(鮎川さん)、頭脳警察(PANTA)と、最近亡くなった偉大なる音楽家たちの曲も散りばめていたライブ。亡き者たちとこれからを生きる者たちとの魂をもMAGICAL CHAINで繋いだ、そんなイベントでもあったのだった。







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