2023年7月1日(土)

LINE CUBE SHIBUYA(旧・渋谷公会堂)で、Anly。

ライブハウスで力をつけてきたAnlyにとっての、初のホール・ワンマンであり、単独では自身最大キャパとなる公演だ。ならばMCでそのことに触れ、「ようやくここに辿り着くことができました!」「こんな素晴らしい景色を見せてくれてありがとう!」みたいなことを言い、なんなら涙を流し、ファンがそこで立ち上がって拍手する……そういう感動の場面が用意されてもおかしくないし、これまで多くのアーティストがそうしてきた。が、Anlyはそれをしなかった。初のホールワンマンであるということに一切触れず、必要以上にエモーショナルになりもせず、普段とは違う特別なことをしたりもせず、いつものやり方でただただ超ハイクオリティのライブパフォーマンスを見せつけた。

決して到達点なんかじゃなく、これはあくまでも通過点であり、「A.L.I.V.E」というライブタイトルの通りいつもと同じ「ひとつのライブ」なのだ、という彼女の意識・姿勢がそこから伝わってきて、それが本当にKAKKOII!!    と、そう思った。

バンドセットで始まり、中盤ではAnlyひとりでのループペダル演奏。加えて弾き語りも。そして再びバンドセット。この3つの演奏スタイルはどれも磨き抜かれてきたものであるわけだが、とりわけホールにおいてのループペダル演奏は圧巻で、ライブハウスで観るとき以上に響きの強度と音の広がりが感じられた(ペダルを操作する足が見たいという要望に応え、スクリーンにそれを映し出したのは、数少ないこの日ならでは演出だったし、それが効果的でもあった)。改めて、ループペダルはAnlyの表現方法のひとつの核であり、これがあればひとりで武道館でもどこでも行けると思ったし、数万人を前にひとりで演奏して圧倒している様がイメージできもした。

セットリストも、デビュー当時からのベスト選曲…というわけではなく、比較的最近の曲群で組み立てられ、以前の曲もアレンジが最新型となっていた。したがって集大成感みたいなものはなく、2023年のAnlyをしっかり見せるライブとなっていたのがよかった。

また、この曲からこの曲に…といった繋ぎ方・並べ方がよく練られていて、そこから物語性が伝わるところもあった。MCも情緒的なものはなく、曲に込めた思い・背景を伝えるものが多かった。わけても、沖縄のおばあちゃんの「諦めたら終わりよ」という言葉から曲ができたという話をしてからの「Alive」は、そのMCがあっただけに説得力が増していた。

いや、それよりなにより、まずは純粋にAnlyの歌声そのものに改めて心をつかまれた夜だった。あの高音が実に美しく、実に伸びやかに、LINE CUBE SHIBUYAの空間に響いて広がっていた。

もう一度書くが超ハイクオリティのライブであり、Anlyというライブ・アーティストの本領が存分に発揮されたものだった。素晴らしい!!

終盤で秋から始まる次のツアーも発表されたが、それは沖縄から始まるそうだ。その意味もきっとこれから明らかになるのだろう。