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The Street Sliders@NHKホール

2024年4月21日(日)

NHKホールで、The Street Sliders。

LAST LIVEから22年と7ヵ月ぶりに再集結したスライダーズの武道館公演を観ることができたのが昨年5月3日。約1年前のこと。それから秋のツアーもあったり、今ツアーではスペシャルで野音があったりと、ファンには嬉しい動きをしてきたスライダーズ。ではあったが、とにかくチケットがとれない。1年前の武道館はどうにかとれたが、秋のツアーは名古屋や三郷や大阪やらの地方も含めて結局ひとつも当選せず。今ツアーもまた立川も野音も落選したが、唯一NHKホールだけは当選した。ここまでチケットをとる難しさを実感したバンドは、自分にとって長い人生で初めてだったかもしれない。

公演の数日前にはe-plusから当日に身分証明書を確認するので持参せよとのメールもきた。転売防止策のようだ。観ないのに買って高く転売するような愚かな輩がいるってことだ。まったく…。

話が逸れたが、とにかくNHKホールのチケットをとることができた。発券したらば3階席だったが、文句は言わない。スライダーズをもう一度観ることができること自体が奇跡のようなものなのだ。それに3階席といえども去年の武道館(2階席)に比べればまだステージが近い。しかも武道館のときのように斜めから観るわけではないので音響もよい。とにかくここに来れただけでもよかったと、開演前からそう思った。

40周年を記念した動きの、これがファイナル。それだけに、武道館のときと同じく始まる前から客の熱気がすごかった。開演前のアナウンスに対してまで拍手する人もいたくらいだから、照明が落ち、そしてゆっくりとメンバーひとりひとりがステージに現れたときの客の熱の度合いは相当のものだった。多くの人がメンバーの名を呼び、そしてハリーのあの一言……「ハロー!」を合図に演奏が始まった。

先頃の日比谷野音公演は、後半、ハリーの声があまり出なくなっていたことをSNSで知った。観てないのでどの程度の状態だったのかわからないけど、そうなのかと少しの不安はあった。しかし、まったくもって杞憂だった。ハリーの声はよく出ていた。いや、よく出ていたどころじゃない。ライブが進むにつれてどんどん出力を増し(その出力に僕は驚いてしまったほどだ)、艶も増していったように感じられた。腰を落としたギターのあの弾き方、足の開き方、弾いたあとの手の躍らせ方、曲間でありがとうの思いを伝える際の手の挙げ方、その全てがかっこよかったし、全てにある意味の軽やかさがあった。メンバー紹介で公平がハリーを紹介する際に「今日も渋谷で絶好調」と言っていたけど、本当にハリーは絶好調中の絶好調だった。

とりわけ「すれちがい」が凄かった。途中、ハリーはシャウトというかなんというか、全ての感情をのっけたような声を大きく発した。あんな声、聴いたことあっただろうか。この日の「すれちがい」は魂が震えるほどの名唱であり名演だった。

そう、ヴォーカルがよければまた尚更如実に感じられるのが演奏のよさだ。そのバンドアンサンブルの素晴らしさをなんと言葉にすればいいか。安定のジェームスのベースと迫力のZUZUのドラム、そのリズムは最強で、公平は歌うように弾いてリードし、ハリーのギターと歌と呼吸を合わせ…。バンドなのだ。バンド力なのだ。バンドとしか言いようがないのだ。

自分は1年前の武道館以来だったので、そこからどのように変化していったかを肌で感じてはいないわけだが、それもあってか1年前とは別レベルのアンサンブルというふうに思えた。という、それこそが、もう一度書くが、バンドなのだ。回を重ねれば重ねるだけどんどんグルーブが増していく、それがバンド。けれどもやりすぎたらやりすぎたでズレが生じる場合もある。バンドとはそういう生き物で、そういう難しさもあるわけだけど、この日のスライダーズはその最良の状態にあったように感じられた。しつこくもう一度書くが、これがバンドなのだ。

演奏しながらハリーは何度も自分から公平に近づき、向き合い、ときには肩に手を置いたりもした。また、公平は弾きながら何度も軽やかにステージの前方へと出て、ハリーもまたゆっくりと前へ出てプレイ。気持ちはメンバーにも客にも向いているわけで、そうなのだ、優れたバンドというのは、演奏中、メンバーだけでもなく、客だけでもなく、その両方に気持ちを向けて演奏できるのだ、と、当たり前のことかもしれないけれど改めてそんなことを思ったりもした。

とりわけ本編終盤の…「So Heavy」とか「Back To Back」とかあのあたりのグルーブはちょっともうどうかしていて、ただただ最高としか言いようがなかった。

アンコールが終わって、長くステージで観客の拍手を浴びながら自分たちの「サンキュー」の気持ちを態度で示し、そして4人が手を繋いで腕をあげたそのとき、さすがに涙が出た。深く感動した。ロックをずっと好きでいて本当によかったと思った。この夜、会場にいた全員がきっとそう思ったはずだ。

追いかける。狂った夢を。

願わくば、またいつか、夢の続きを…。



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