画家さんからもらった「三つのアドバイス」
額屋さんでの話。まだ「額装」の意味もよくわからず、悩んで教えてもらっていたころのこと。
額屋さんが、初老のお客さんに、
「先生、こちら初個展されるんですよ」
と、ぼくを紹介してくれたのだ。
「いや、先生はやめてくれ、あなたの先生じゃないから」
冗談めかしながら、
「教室では生徒さんに、「先生」と呼ばれてもここでは〇〇です。」
と。
ひらめいた、という感じで初老の画家さんは、三つアドバイスをぼくにくれるという。
1.先生とよばせない2.家族や友人にたよらない3.額屋に借金しない
1.先生とよばせない
「一つは、「先生」とは絶対に呼ばせない。とくに画商には。持ち上げられてダメになった作家をたくさん知っている。「先生」なんて言って近づいてくる人には気を付けること」
2.家族や友人にたよらない
「二つ目は、家族や友人は頼らない。はじめは、特に最初の個展では買ってもらえるかもしれないけれど、いつまでも頼れないし、一人でもやっていく覚悟がなくては」
3.額屋に借金しない
「最後三つめは一番大事。額屋さんには借金しないこと!」
と、冗談めかして彼は握手をして去っていった。
借金の話は意外だったが、意外にもよくある話らしい。厚かましい人だと前の精算が終わらないうちに新しい額を注文にくるんだとか。
いまだにぼくは、この三つを守っている。つもり。
先生とよばせない
ぼくのことを「先生」なんて呼ぶ人はいないが、たまーに「先生」と呼ばれることがあって、やんわり名字で呼んでもらうようにお願いするときもある。
ワークショップや講師するときには、どうしても「先生」と呼ばれて微妙な気持ちになる。ようするにそういう関係性を肩書って作るんだ、と思うことにしている。
家族や友人にたよらない
すっかり親や兄弟は展示会にも来なくなったし、大いに気軽で助かる。会場に来られるとこちらも気を使うからだ。
妻や子どもたちも同じだが、頼りもしないがまったく迷惑もかけていないわけでもないだろうから、感謝するしかない。
もちろん、毎回楽しみに来てくれる友人にはいつも感謝だ。
展示会をするようになって交友関係も少し変わったと思う。友人の作家と過ごすことも多くなった。
アートに興味がない方だっているだろう。
展示会は見に来ていただけるだけでありがたい。手ぶらで来るのも、帰るのも悪いので、と気を使う人もいるだろうし、よくわかる。気持ちと財布の負担にならないようにポストカードなど用意するようにしている。
そういうのもめんどくさい、という人とはどうしても縁遠くなってしまい申し訳なく思わないこともない。
額屋に借金しない
いまも額屋さんに借金だけはない。
「絵をつづけて描けているということは、
それだけで「絵を描いてもいいよ」と言われていることと同じだ」
と、だいぶ後になって額屋さんに言われた。
今もかわらず同じ額屋さんに額装をお願いしている。
1.先生とよばせない2.家族や友人にたよらない3.額屋に借金しない
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