見出し画像

誰かを守りながら潔く生きている人間を応援したくなる

もう15年ぐらい前の話。2回しか、会っていない男の子(当時20歳)のことを、私は心の中でずっと応援しているんです。あの子の人生どうなったかな、幸せに生きているかな。

彼は、私が東日暮里に住んでいたころの大家さんが経営している別のアパートに住んでいた子で、藝大に通う学生だった。

彼には同じ大学に通う彼女がいて、その子が妊娠してしまったんです。彼はどうしたかと言うと、自分は大学をやめる決心をして彼女と結婚。子供が産まれた。彼女の方は、休学という形にして出産後に復学。彼は、働きに出た。

なんだかドラマのような話。現実は、大人たちから大バッシング。凄い才能を持って藝大に入ったのに、女の子妊娠させて自分は大学をやめるなんて、ガキのやること。親御さんもさぞかし悲しんでいることだろう、って。ガキは何にも考えていないという大人もいたけれど、いやいやいやいや、彼は必死で考えたでしょう。藝大とるか、彼女と子どもをとるか。

私は彼のこと、偉いと思ったんですよ。この子、男気(おとこぎ)あるな、逃げなかったな、彼女のことが大好きで守りたかったんだろうな、と。学生だったことが問題だったけれど、流されて大学行って、勉強もしないで、何となく卒業して社会に出て、人生の意義も持たずに生きている大の大人より立派。

この前、藝大の前を通ったんです。あの子は元気に生きているかな、あのときに生まれた子は中学生になっているだろうな、今でも絵を描いていて欲しいな、そんなことをふと思い。

世間体や倫理貞操の問題もあるけれど、誰かを守って潔い(いさぎよい)生き方をしている人間をみると、歳関係なく私は応援したいと思うのよね。本気で一生懸命って清いことだと思う。

自分が当時のあの子の親だったら? と、考えたとき、やっぱり「え!」ってなると思うけれど、逃げない我が子の責任感をみて、いい男に育ったな、と口に出さずとも心の底で思っただろうな。

もう15年も前の話。

山下純子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?