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おかえりなさい

 劇団の理事会に、病気で療養していた仲間が戻ってきました。とても大変な病気だったので「久しぶりだね」という言葉も全員胸に引っ込めて、誰もそのことには触れず。いつもどおり楽しくおしゃべりしながら、会議がスタートするまでの時間を過ごしました。本当に、「いつも通り」に。

 何気ない会話、何も別に特別なことを話しているわけでもなく。けれど誰もが彼が戻ってきてくれたことが嬉しくて、なんとも言えないあたたかな空気がそこに流れていました。

 会議が始まる時間になって、全員一瞬シーンと静まり返える瞬間がありました。そしてその時に彼がたった一言「ただいま」と。大男の彼の目がみるみるうちに赤くなって、それを見てしまったら全員泣き出してしまい。あえて何も語らない仲間たちの優しさや、大変なことがあったのにそれをあえて語らない彼の強さに、ちょっと胸が震えました。

「おかえりなさい、まってたよ」


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