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終わりを学ぶこと

三日坊主はやめようと思って「note」を始めたものの、理事を務めている非営利の子供劇団の秋と春のショーのシーズンは、どうにも時間が取れずにしばらく時間があいてしまいました。

今年は『サウンドオブミュージック』と『美女と野獣』の二本立てで、二作品共に満員御礼までもっていくことができました。何せ子供のショーなのと、舞台セット、照明、衣装、メイクなどは全部子供の親のボランティアで回っているため、多少のアラはもちろんあるものの、今回の春の舞台は完成度がすごく高かったように思います。

劇団に所属すると、子供にも親にも土日がなくなります。ショーはオーディションから始まり、だいたい4ケ月で完成となりますが、4ケ月間にぎっしり詰まった、様々な物語を目の当たりにできることは、とても幸運なことです。様々な問題ももちろん年中起こりますが、千秋楽には「やっぱり大変でもここで仕事ができてよかった」と毎回思うのは、必死になって努力し続ける子供たちが、確実に舞台を通じて成長していく様子を目の当たりにできるからかな、と感じます。

私たちの劇団は「すべての子供」を受け入れ、オーディションにやってきた子供全てをショーに出演させるポリシーなので、中には数人ハンディキャップを背負った子供たちも毎回出演します。劇団には差別という言葉は存在しません。「誰もが輝ける場所」――その「場づくり」が、私たちの目指す劇団運営に根付いています。

また、1公演分で得られた収入(収益ではなくチケットセールス分全て)を、身寄りのない子供たちが夏のサマーキャンプに参加するための資金に充てており、こうした社会への還元姿勢も私たちのコアになっている部分です。

私はマーケティング部門の代表ですが、今回『サウンドオブミュージック』でマリア役を掴んだアレクサという高校生がプロモーションビデオ撮影で話してくれた言葉が、とても印象に残っています。

「私は自分がマリアに選ばれるとは全く思っていなかった。平凡な自分にとっては、もしかしたらこんな光栄な機会はもうやってこないかもしれない。だからこそ、一日一日を大切に、最終日には自分自身のマリアに出会えるようにがんばります」

舞台の最終日、すべてを出し切った彼女は誰よりも泣きじゃくっていました。千秋楽の舞台の彼女は、マリアそのものでした。彼女に「あなたのマリアは最高だった」と声をかけると、今度はこんなことを話してくれました。

「今はとても悲しい。でも、舞台が終わると分かっていたから、自分でしか演じられない『マリア』には出会えるように最後まで頑張れたと思う」

舞台はその宿命上、かならず「終わりの日」がきます。どんなに情熱を注いで、どんなに必死に頑張っても、幕は開いたらいつかは閉じる――私はそこが、舞台から学べる一番大きなことなんだろうと思っています。

この世にあることの中で「終わりがないこと」、「変化ないこと」など、ほぼないに等しい。「終わり」があると知りながらも、そこに向かって走りきること、そして「その日」がやってきた時に「走り切れてよかった」と思えることは、やっぱり素敵なことだと思います。終わりから学べることは、挑戦を学ぶことであり、何かを始める勇気を学ぶこと――私の二人の娘も、また一つ何かを終えることを学ぶことが出来ました。

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