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トレーダー・ジョーズのジョー

 月曜日の私は、週明けの「儀式」のように、毎週トレーダーズ・ジョーに買い物に行きます。子供を学校にドロップした後に直行するので、だいたい店につくのは8時半。こんな時間に買い物する人は少なく、お店はガラガラ、顔見知りの店員さんも結構できて、ゆっくりお喋りに花が咲いたりすることもあります。

 今日は月曜日なのでいつものように店にいくと、よくお話しする定員さんの「ジョー」が、ニコニコ笑って出迎えてくれました。「今日ね、僕ここに勤務する最終日なんだよ。会えて良かった!」というジョー。「え?そうなの? 違う仕事に移るの?」と私。そこにいた数人の客(というか、早朝なのでほぼ全客)5人くらいが、この話に乱入。

 ジョーは、北カリフォルニア出身。今山火事で、大変なことになっているエリアに実家があるのだそう。ご家族は全員避難して無事。けれど火事の様子を見ているうちに、いたたまれない気持ちになり、仕事をやめて消火活動のボランティアに行くことにした、というのです。そこにいた、ほぼ全員が「えーーー?ほんと?」。

 「うん。故郷を助けるために、長い人生のほんのちょっとの時間を投げだしたところで、僕はずっと変わらない。ここの仕事は好きだけど、復興までには数年かかるはずだから、それを手伝いながら、次の人生考えるんだ」。

 なんの迷いもなくキッパリいう彼に、周囲は唖然。けれど、同僚の人が突然乱入してきて「こいつさ、働く必要ないほど金があるんだよ。トレーダーズ・ジョーのジョーは、トレーダーなんだよ、ははーっ!!!!」

 ジョーはデイトレードでその昔かなり儲けて、家をすでにシアトル市内に4軒持っているのだそうな。だから別に働かなくてもいいのだけれど、トレーダーズ・ジョーで勤めると、お客さんと話せて楽しいし、「ジョーがトレーダーズ・ジョーで働く」というのがジョーダンみたいで面白いから、ほぼ暇つぶしのような感じで働いていただけ、ってことだったようです。

 何かのネタみたいな人生。すごい。

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