私が私であることの境界線は、「自力でトイレに行ける」ことだった。
消化器外科の病棟で35歳はダントツの若手だった。同じ部屋の人も80歳以上100歳未満の患者さんたちが多かったように思う。ふだん、会う機会の少ない人たちだ。当時在籍していた会社では35歳で中堅。下手したら年下が多い環境で日々、年上としての何かを背負っていたため、急に「若い若い!」と言われることが気恥ずかしかった。
私は4人床の部屋にいた。高齢の患者さんたちで認知症のあるひとが多かった。ふと隣のベッドで看護師や家族との会話が聞いていると、明らかに事実と異なることを話していたり、