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#闘病レポ04[手術]。前日〜当日の雑記録。患者側から見る手術録と気持ち

身体にメスを入れるってどんな感じか想像つきますか?
私はまったく想像がつかなくて臨んだのですが、正直いって、術後1週間は想像よりもずーっと壮絶な日々でした。今回は前日から当日の手術終了までについてです。

どんな手術?

膵臓の真ん中あたりにある7cm程度の腫瘍を摘出するため、膵臓3分の2と脾臓すべてをとりました。傷はお腹を縦に10cm、あとはおへそと、左の下腹部2箇所に穴をあけました。しばらくお腹を見ることすら恐怖。
下腹部の2箇所は、お腹に漏れる膵液を排出するために管をさしています。病気の詳細は、過去のnoteにて↓

なぜ書くのか?

手術前には複数のブログを読んで、流れがわかり、安心できたから。痛みは想像を超えていましたが、人によって感じ方も違うのだと思います。病名や術式が異なれば、いろいろ違うこともあると思いますが、手術前の説明、全身麻酔、痛みなど、すこしでも参考になればうれしく思います。
同じ病気の人のために、手術の方針については詳しく書いています。

手術前日の過ごし方は?

説明や同意書の記載などが多くて、慌ただしく過ぎていきます。夜になって急に冷静になってきて、「きれいなまっさらなお腹も最後だな〜」とお腹をスリスリして写真を撮りました。次の日にはもうバックリ傷がつくことに、しょんぼり。もう後戻りはできないなと。

肺機能を保つための練習をする。
術後は肺機能が落ちて、寝ていると肺に水がたまるらしく、それに備える練習をしました。思い切り息を吸って吐いて玉を浮かせる練習と、ネブライザーという機械で煙を吸う行為が課されます。他の人のブログで、術後は痰が絡まるのがしんどいと読んでいたので、ある程度真面目にやりました。

主治医からの手術方針説明をうける。
院内の個室で2日前夕方に聞きました。説明は明快で非常にわかりやすい。簡単ではないが、「もっと難しい手術も数多く経験しているので安心してください」、その言葉にホッとしました。正直、いよいよなんだな…と実感がわかず、質問も出てこなかったです。同席していた夫・母も手術への実感がわいてきたようでした。

手術の方針。
一部うる覚えですが、説明をうけたこと。
・腫瘍は膵臓の真ん中辺り。よって、真ん中から尾っぽまでの3分の2、その先に繋がっている脾臓を切除する。膵臓を残す努力をしようとすると何かの危険性がある。(何かは忘れた)膵臓は最低限3分の1残れば機能する。脾臓は免疫を司る臓器だが、大人になってからはワクチンを5年に1回打てば問題ないこと。その後の生活に大きな支障はないので、この判断とした。
・執刀は担当医の先生がメイン。チームで他4名の医師が手術を担当。
・膵臓の手術は合併症のリスクが高いので怖い。膵臓がつくる消化液=膵液が漏れるリスクがあり、どんなに技術がある医師が上手に手術してもリスクを完全回避することはできない。
・具体的なリスクは膵液瘻(膵液が漏れてお腹に溜まる)、膵液の消化酵素によって身体の組織が溶けてしまうこと。なかでも一番危険なのは、動脈が破れて出血がおきること。
・腫瘍が大きいため、腹腔鏡だけではできない。お腹を切るのを併用して手術を行う。傷のきれいさ・小ささは重視したいが、命を最優先する。
・手術は5−6時間。手術後1時間は処置があり、導尿管をいれたり麻酔がある程度覚めるくらいの状態で病室に戻る。ICUには入らなくて大丈夫。
・入院期間は早くて2週間。問題が起きなければ、おおよそ3週間程度。

手術の麻酔・流れなどの具体的な説明をうける。
消化器外科の看護師、オペ看護師、麻酔科の医師、が説明に来てくれました。その間に、輸血の同意書、麻酔の同意書など、あらゆる同意書にサインをしました。すべて死亡・肝炎への感染などリスクに対して理解したことを同意をするものです。丁寧に説明はしてくれますが、登場人物もサインする書類の数も多くて、誰が何の管轄かがわからなくなりました。もはや白目でサイン。

ごはんをたべて、水分を摂取する。
手術前、前日夕方までご飯(通常食)を食べられます。
21時以降は飲水禁止、21時〜翌9時は経口補水液OS1のペットボトル500mlのみ飲んでOKとのこと。脱水にならないように1本を飲みきって欲しいと言われました。所ジョージがCMしているアレです。アクエリアスみたいな味で悪くないです。

身体をきれいにする。
感染症予防のためにシャワーを浴びることが義務付けられます。看護師さんにオリーブオイルと綿棒でお臍のゴマをとってもらいました。

動画と本で気を紛らわす。
サスペンスで人が死ぬドラマを見てしまい後悔。明るい話題のコメディとかがおすすめ。amazon prime、Tver、Huluお世話になりました!
本は「武器になる哲学(山口周さん著)」を読んでいました。「現実は変わらないがどう捉えるか」という心の置き方に興味があったのです。

手術当日の過ごし方は?

手術は午後。12時30分〜、12時15分には病室を出る予定。それまでは、ただ時間をじっと待ちます。

身支度をする。
歯磨きやトイレを済ませたあと、手術着・帽子に着替え。手術着はタオル生地のようなもので、ポンチョみたい。下着はすべて脱いで、T字帯(ふんどし)をつけます。帽子は不織布のシャワーキャップのようなものを想像してください。

手術の立会いにきた親族と話す。
家族に待機場所の説明をし、会話を楽しみました。
ただ今回は、両家の両親と弟など総勢5名の家族が早めに到着し1時間前には勢ぞろい。夫だけ連絡がとれず、ヒヤヒヤあくせく。家族に待機場所を案内したり状況を説明したりと、なぜか自分が手術するのも忘れて一番慌ただしい時間となりました。笑。
夫は手術前30分に到着。毎日お見舞いと仕事を頑張っていたので来られるのかドキドキして、あっという間に出発時間がきました。自分の手術のことを忘れられて、かえってよかったのかなと思います。笑。

手術開始までってどんな感じ?

緊張してぷるぷる手が震えました。先生を信じるしかないので、もうこの時点で自分にできることは、手術室に向かうこと以外、何もありません。

お部屋は無機質だけど、ベッドはフワフワであたたかい。
手術室へはてくてく自分の足で歩いてエレベーターに乗って向かいます。
手術室フロアは部屋がいくつも並んでいました。部屋に入る前に、名前と生年月日を確認。部屋にはいると、無機質なステンレスっぽい細い台の上にマット。よく先生の好みの音楽がかかっていると聞きますが、室内は無音。先生たちがマスクをして、手術の準備をしていました。
細長いに横たわるとほっこり柔らかくて温かい。緊張をほぐすために先生が話しかけてくれました。「大丈夫?顔が緊張してるよ!」

硬膜外麻酔と全身麻酔。
心電図をつけて点滴などの準備を整えた後、麻酔科の先生が硬膜外麻酔を背中(脊髄)に刺してくれます。鈍痛。背骨の間から神経に麻酔をしているイメージですが、私はこの時に少し神経にさわったらしく、腹痛がありました。痛みははっきり言った方がいいようです。
その後、仰向けに寝た状態で口に麻酔の薬が流れるマスクを当てます。ゆっくり呼吸をすることを促され、5秒後くらいには意識はありませんでした。「先生たち、よろしくお願いし…」で最後まで言えず、そこから記憶がないです。

手術後に目覚めるとどんな感じ?

次に意識を取り戻した時には、約5−6時間後、ストレッチャーの上でした。身体が重くて、痛くて、動かない。こんな感覚は、はじめてでした。テレビもスマホもいらない。自分の命だけとのたたかい。

身体が自分のものではないような感覚。
目がさめると、複数人の看護師さんの顔が見えました。痛いところはないか聞かれながらストレッチャーで移動。重くて痛くて、身体が思うように動きませんでした。特に、左肩がズキズキ異様に痛くて震えました。でも、この痛みで、ああ生きてるな〜と実感できました。
声を振り絞って、「左肩が痛いです」といったのを覚えています。当初、「左側を下にした体勢で手術したからでは?」という話でしたが、「お腹に管を入れている痛み」が左肩に飛び火して感じることがある拡散痛というやつだとわかりました。そんなことあるんだ。

家族との面会。
顔は認識できても、意識が朦朧としているのと、声を出すのが精一杯で、一声ふた声くらい会話して、あまり話すことはできませんでした。

身体は管に繋がれてロボットみたいになった。
少し意識がはっきりしてくると、全身いろんな管が繋がっていることに気づきました。酸素マスク、背中には硬膜外麻酔のくだ、点滴2箇所、導尿管、お腹から膵液を排液する管2本。足には血栓防止で血流を促す空気が膨らむブーツを履いていて、全身が動かず、ロボットのような感覚でした。

硬膜外麻酔とナースコールのボタンを装備。
術後の痛みを抑えるために、ボタンを押すと脊髄に痛み止めをいれることができます。そのボタンを握っていました。近くにはナースコールのボタンが。このボタンの2つが命綱だと思い、握りしめて寝ました。ほとんど記憶がありません。

身体の感覚
お腹の部分は心なしかむくんでいて、膨れている気がしました。500gくらいの臓器がなくなった実感はできませんでした。

さいごに

正直、手術で自分にできることは、ほぼありませんでした。なので、痛みはある程度耐えるしかないな…と覚悟をしておくのがいいと思います。手術の痛みはこれまでの経験や想像をこえていました。

辛い、痛いと思うけれど、自分の身体が治そうと、必死にがんばっていることを感じました。これほど命に向き合う経験は初めて。身体は、きづかないだけで、いつもがんばって働いてくれてたんだね。


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