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チーズが嫌いだなんて人生損してる

半世紀生きてきて
数えきれないくらい色々な人に
言われたこと

チーズが嫌いなの?
あんなに美味しいのに可哀想
人生損しているね

チーズは
低カロリー高タンパクの優秀な食材

アレルギーではない食わず嫌い
チーズの匂いを嗅いだり食べると
かなりの確率で嘔吐いてしまいます

そんな私のチーズの歴史。

チーズを「食べたフリ」までして乗り切った幼少期

小さい頃から乳製品がだいたい苦手で、幼稚園の頃は鼻をつまんで牛乳を
飲んでいました。小学生になり給食が始まると月の献立表で確認するのは

チーズがいつメニューに
配置されているか

わかりやすく「角チーズ」と
記載されていればいいのですが
ホワイトシチューなど隠し味で入って
いる場合があります

用心深い私は頭を抱えます

今週2回もチーズあるな...

席の近い男子に交渉します
「今週のチーズ食べてもらえる?」
「もし食べられないものあったら
 チーズと物物交換したい」
「角チーズのアルミは
 食べ終わったら戻してね」

あざとく「チーズを食べたフリ」する
シナリオまで考えていました

小学生3~4年当時
私の担任は給食を残すことを許さず
威圧して、完食しないと
昼休みに校庭へ行けないシステムを展開していました。

今振り返ると理不尽なほど
怖かったので、切羽詰まった状況

チーズの取引でポテンシャルを使い果たした私はたまに出現するヨーグルトが心配のタネでした。しかし、ヨーグルトはいざ食べてみると口に馴染み美味しかったのです。今では好物の一つで、フルーツジャムをたんまりかけて食べています。厳しい担任がくれた副産物は腸活の味方でした。

中学生以降、チーズを食べたアリバイ工作は必要なくなります。給食ではなく弁当持参もしくは学食がランチの場でした。チーズと距離をおいていくうちに社会人生活が始まり、益々チーズは私の対極にある存在になりました。会社の飲み会で大皿のチーズが出ても食べることを強要されず、同期や友人に一度その旨を伝えると配慮してくれる優しい空間で生きてきました。そんな折、一人のチーズマニアと出逢います。現夫です。彼は無類のチーズ好きで、最後の晩餐はきっとチーズを頬張るとインタビューで答えました。私のチーズ嫌いに驚き冒頭の言葉を浴びせられました。
その言葉が正義かのように

Love cheeeeeese!

チーズを通して「相手を尊重する大切さ」を思い知るのでありました。

チーズ嫌いのルーツはどこ?

私の周りでチーズが苦手な人は
双方の祖母くらいです(遺伝かぃ)

みんな大抵チーズ大好き大人気

そんな中
母方の祖母は私のチーズ嫌いに
共感した上で

「昔のチーズは石鹸食べさせられてる
 と思うほど気持ち悪かった」
「今は美味しいチーズが増えて大好きになったよ」

自身とチーズの歴史を明かしつつ私の苦手意識は克服する余地があることを教えてくれました

人は時を重ねると嗜好も変わる

祖母は人生の話をする名人でした

「お金は紙切れになるから
 気をつけて投資しなさい」
「親孝行の嫁不幸」
「親に恩返ししようと思うな
下の世代へ愛をかけなさい」

戦時中の辛い話しや嫁姑の確執から学ぶべきことを教えてくれました。こんなところへ嫁に寄越した親を恨むと言いながら、天真爛漫な祖父に「学のない山猿」と暴言を吐かれても根に持たない高度なスルースキルを身につけた人。プロレス好きの恐ろしい姑に40年余りお仕えしながら地元の美味しい食材を大量に買い続け、自身が食べるより家族や周囲にふるまって喜んでもらうのがライフワークでした。無自覚に経済を回す推定身長145cm程のladyは地元スーパーから表彰されて欲しいくらいのお得意様。
長年家族に尽くしたご褒美は、コロナを知ることなく民度の高い老人ホームで可愛い可愛いされながら天寿を全うしたことかもしれません。

一方
父方の祖母については本人が明言していないものの

「おばあちゃん多分チーズ好きじゃないよね」

孫の第六感で気づいていました
本人に言いません
ご馳走になってるし 言わぬが花

グルメなお出かけに私を誘ってくれた「食の師匠」
銀座と人形町を愛すモダンガールは池波正太郎の著書を愛読して
煉瓦亭によく連れていってくれました
つばめグリルを見ると祖母を思い出します

アンタ、三越の特別食堂行かない?

いくいく!

江戸情緒を醸す祖母は、振り返ると今でいうミニマリスト風情のある人でした。子や孫の世話にならぬよう自身の生活は自分で作りたい。終活の準備を万端にして旅立つべく、東京の街散歩で健脚を誇ります。目の黒いうちに孫へ伝えていこうではないか

「粋」とは何かを

言葉ではなく行動で示す気高い女性。譲り受けたベルベットのマントはハリー・ポッターの仮装に役立つ
逸品

グリフィンドーール

魔法使いの真似事をして
マントの裏地が破れかぶれになったとしても、お直しすれば蘇る

一生の宝物

チーズ嫌いの現在地

現在はチーズを少しだけ食べます。
モツェレラチーズが食べられるようになりました。プルプルして食感も食べやすく口あたりが爽やかです。美味しいティラミスに感動したら、「これチーズ入ってるよ」と教えられても拒絶反応は出ず、再び食べたいと思うようになりました。

チーズを大好きになるのは難しいですが美味しいと思えるチーズを発見できたことが嬉しい

チーズを克服するまで
だいぶ月日と手間がかかってしまいました。年を重ねた孫は祖母の胆力よりだいぶだいぶ器が小さいです。

感謝を込めて


Junko Summer


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