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渋谷100BANCHの血糖値をビジュアライズしてきました!

7/6-7/14で100BANCH ナナナナ祭での展示
Healthcare Museum「血糖値のデジタルアート」を実施してきました。

血糖を測定して、そのデータによって、デジタルアートがリアルタイムに変化していく仕組みを実装しました。4日間で200人以上の方にご参加いただき、それぞれ異なるデジタルアートが出来上がりました!
トリプルリガーズ合同会社の丸山さんと、PHCホールディングス株式会社との共同実施で、僕はデジタルアートの開発とUIデザインを担当しました。開発は、もちろんvvvv。

イベントの様子は、こちら。


以下は、長文になるので興味がある人は是非!要約すると、「デジタルアートが渋谷の民の健康に力添えできるのでは?」ということが書いてあります。


データビジュアライズの仕組み

血糖値に影響する因子を元に基盤となるデータを入力することで、デジタルアートを生成できるようにしました。加えて、自分の血糖値を予測してもらい、その値との差を「自分の身体の理解度」として色で表現しました。

使用したデータは、「実測血糖値」「予測血糖値」「測定時刻」「最終の食事からの時間」「食事の種類」「ストレス度(5段階)」のデータをそれぞれ用いて測定し、「測定者数」も流体の量として反映するようにしています。入力は、CSV形式でエクセル入力をし、データを定期的にプログラム側が読みに行っています。

生データで自動生成されるので、1日の中のデジタルアートが育っていく様子をたのしめます。


血糖値って測ったことありますか?

ところで、みなさん血糖値測ったことありますか?
来場されている方の中には、
「健康診断したことありますが、血糖値は測ったことがありません!」
「血液で測るんですね!はい!(腕を差し出す)」

という方もいたくらいでした。

ちなみに、健康診断では血糖値を測っていて、食事をしないで来てくださいね。と指示があるのは「空腹時血糖」を測っているから。
血液で測りますが、動画を見てもらえるとわかるのですが、針でちくっと刺してごく少量の血液で測定することができます。

100BANCHにくる人間では、正規分布をつくれない

デジタルアートは、当日の生データで自動生成で、渋谷に来ている人は標準からの外れ値が多くて面白い!

...のですが、昨晩以降何も食べずに来ている人がいっぱいいて、値が外れてしまっていているんだよな。

スタートアップ界隈とか、IT・クリエイティブ界隈の人は、今はすごくがんばっていて、自分の健康に興味がない人が多いのが現実ということをあらためて実感しました。

渋谷のリアル/データへの自己帰属感

今回の展示ですごく良かったのは、「リアルがそこにある」という感覚があったことです。健康診断とかで検査値をとって、標準と比較した先には、平均という自分とかけ離れたものと比較することになりますが、渋谷のデータは、想定外のことも含め、「身体のリアル」「渋谷のリアル」が確かにありました。

一定程度の集団の健康を見るときに標準と比較するのではなく、データであっても「近しい現実」と比較することで自己帰属感はかわってくる印象でした。

自分が確かにそこにいることというのが、保健師の健康教育においても、「無関心から関心」へ移行するときへのパワーが全然違うのではないかなと。


デジタルアートが渋谷の民の健康にできること

参加者の多くは、血糖値に無関心な層が多かったと思いますが、訪れた人はデジタルアートの体験だけでなく、スタッフの血糖値に関する説明を一生懸命に聞いていた人が多かったです。さらに、「デジタルアートの一部になるなら、測定してみようかな。」という方も多く、デジタルアートを言い訳に参加してくれた方も少なからずいたようでした。

実は、今回のイベントでは、本当にすごいことが2つ起きています。
1.普段取れない人たちのデータがとれたこと
2.無関心な人が少し関心を持ったこと


1.普段取れない人たちのデータがとれたこと

みなさんの多くが調子が悪くなってから病院に関わることが医療の接点かと思いますが、一定の地域の健康を見ている職種もあります。保健師と呼ばれている職業で普段は区の保健所とかで勤務していますが、一定の母集団の健康を見ています。ただこれには、限界もあります。

例えば、「渋谷に働きに来ている人」の健康はアプローチが難しいです。保健師は、住んでいる人のデータへは、アプローチすることができますが働きに来ている人は基本的には関わることはありません。

しかし、僕自身が保健師として渋谷を見たときに、渋谷にはいっぱい働きに来ている人がいて、スタートアップ界隈とかクリエイティブ界隈の人たちを一つの母集団とした時の共通のリスクがあるのでは…とハラハラしているわけです。

そんな人たちのデータを取る言い訳としてのデジタルアートは、渋谷の現実の健康を知るための仕組みとして役割を果たしていけるのではないかと思っています。


2.無関心な人が関心をもったこと

もう一点ですが、予防医療の観点では、無関心な人への介入というのは、なかなか成功が難しいと言われています。あぶないよーーーと、情報を与えても無関心なわけなので、なかなか響かないんですよね。

しかし、今回はデジタルアートを理由に測定をし、インタラクションを楽しみ、なぜこういうグラフになっているのか?なぜこういう表現になっているのか?ということを質問したり、説明を聞いている人が多かったです。

デジタルアートを通すことで、「無関心から関心」へ移行するきっかけを作れているのではないか。と解釈しています。

本質的には、血糖値に興味がなくとも、デジタルアートの仕組みやITに関わることなど、自身の興味のあるインターフェイスを入り口に知識を仕入れていくという考え方はすごく面白いのではないかと。

健康教育のステージング理論というのがあるのですが、「無関心期」から「関心期」に移行できているな。とニヤニヤ見ておりました。


まとめ

100BANCHの展示を見に渋谷に来ている人とか、スタートアップ界隈の人こそ、「身体データへの影響因子を知る」ことからはじめられることで、無関心から関心への移行ができるのではないかと再認識!

医療とクリエイティブの関わり方として、一つの参考事例となると嬉しく思います。

おまけ

ナナナナ祭のライブドローイングで描かれえていた、イベントの様子。100BANCHで生まれた未来のタネが描かれている様子はとても嬉しかったです。

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現在、Ready forにて、クラウドファウンディング実施中。
医療の現場へデジタルアートを届ける取り組みを進めています。
お時間ございましたら、クラウドファウンディングページもぜひご覧ください。


病院にデジタルアートを届けたり、3Dプリンタを使ってケアの現場を支える実践や研究をしています。 Digital Hospital Art / FAB Nurse/ vvvv Japan Community