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「お七事件」が「三人吉三」や「風花、繚乱」に至るまで

 あーあ!アーカイブも終わっちゃってつまんないね〜〜〜!再演まだかな〜〜〜!!
 さて、みんな「風花、繚乱」の関連要素についてどれくらいの知識感??わたしは配信見ながら学び直してみたよ〜!ボリューム爆発案件🤘🥰ネタバレ大豊作🫶✨

 まず、この記事がめちゃくちゃ分かりやすい!!ありがてえ!
 わてなりに、記事の内容をまとめました👇どのような流れの中で「三人吉三」が爆誕したか、です。

🟣主に書籍で調べた
🟡主にネット、論文で調べた

 つまり、「三人吉三」ってお七事件(天和の大火)の超超後のオマージュ?インスパイア?作品、200年弱の時を経て変化した姿。今回、それがさらに250年弱の時を経て「風花、繚乱」になりましたね、アツいね!いいね!

 最終的にはこちら👆の投稿に対して「ほんまそれ…ほんま…」となります。かっっこよかった…。

 さて、全部は無理なのでところどころで要素を拾ってくために原典を調べていこう〜〜〜!

天和の大火(お七事件)

 天和2年(1682)12月28日、八百屋お七が江戸の駒込大円寺を火元とする大火事の放火犯とされ、翌年3月29日に火刑に処せられた。
 お七の恋人の正体がはっきりしないため、様々な俗説や伝説を生んだ。し、なんなら記録も不鮮明なところがあり西鶴→事件があった記録の順で作成されたのでは?実際お七っていなかったのでは??ていう説もあります。

井原西鶴「恋草からげし八百屋物語」

 事件の直後に書かれたこちら!「好色五人女」の巻四にあります。

【登場人物】
・お七 16歳、八百屋の娘
・吉三郎 16歳、筋目正しい浪人の息子
・お七の母
・お七の父 八兵衛

【あらすじ】
 12月28日、火事が起こって江戸の人々が逃げ惑っている。八百屋の娘お七も大火の被害にあったので母に連れられて吉祥寺で避難生活をはじめた
 寺での日暮れどき、若衆の手に刺さった棘を抜いてやるとその若者はお七に夢中になり手を握る。お七とその若者、浪人の息子吉三郎は慕い合う仲となる。雷のなる夜に人気の少ない寺でお七と吉三郎は結ばれる。
 家が復興し寺から帰った後、お七の母は2人の関係を知り仲を引き裂こうとした。忍んで吉三郎が会いにくるがお七は満足できない。
 ある日、風の激しい夕暮れ時に吉祥寺に避難した大火を思い出し「またあのような火事になれば吉三郎殿にお会いできる機会も生まれるだろう」と思いついた。煙が立ち上ったその中よりお七が出てきて全てを自白したので放火の罪に問われた。17歳の春にお七は火あぶりの刑に処される。吉三郎は恋煩いで命もこれまでかと思われる様子になった。お七の百ヶ日になってやっと床上げした吉三郎は寺の中をゆっくりと歩いているうち、お七の死を知り腰の刀で自害しようとする。このことをお七の親が聞きつけて「お七は最期に出家して死んでいく私を弔ってくだされば、どんなに嬉しいかと言いのことして死んだのですよ」と言い聞かせた。吉三郎はこれを承知して帰ってきた出家した

ここがお七が語り草になる最初の地点!
🚨全章バージョン行ける気合いの入った人はこっち来てね!!💥

🌾💬お七は死出の旅路への手向けの花として渡された遅咲きの桜と自分を重ねて「浮名だけ残して死んでいく私は遅咲きの桜が散っていくようにあわれだ」と言っているし、吉三郎の出家では「美少年の前髪がなくなるのはまるで今が盛りの花に激しい風が吹いてたちまち散ってしまうよう」と表現されていて、若い命や人生の切れ目に花が散るようと言う表現を当てておりますね。で、風花のラスト(三人吉三の死後の池田播磨守のセリフ)では「風の中、雪降る夜に赤く咲かせた悪の華。風花、繚乱。三人吉三か」となる。
 ちなみに、こちらでは動揺ひとつせずに処されたお七、「その身は人の悲しみをさそう煙となって消えてしまった」そうです。花を見て歌詠んで好きな人を思いながら煙のように消えるなんて、どこまでも儚い女です。

 あとやっぱ、西鶴読んでて毎回思うけど「江戸時代に生まれてリアルタイムで読みたかった…!」自分の恋や愛に真っ直ぐ生きた女が、読み手の道徳や価値観を揺らしてくるの最高だね??はあ〜〜〜!!

 でさ、まあまあ母が過干渉だよね??娘を管理しようとしているよなあ。お七の親が毒っぽいという事に関してはこちらを。幼少期の影響を勝手に噛み砕いて、お嬢の虐待の過去を想像しています💭!!名前の由来なんかも追記しました✍️

「中将姫京雛」

 吉三郎に関する要素としてお家騒動や敵討ち、重宝探しが増えていくきっかけはここ。(時代世話混交の脚色が初めて大胆に行われた。「中将姫伝説」×「八百屋お七」)また何よりの特徴は「火」が登場しないこと!

【あらすじ】
 継母に捨てられ人買いに売られた中将姫は八百屋彌右衛門の養女お七となった。お家騒動を避け身分を隠している唐橋宰相は妙円寺の小姓吉三郎となっている。2人は恋仲となる。ときに、お七は八百屋の養子庄九郎との結婚を強いられたばかりか、父の目の黒いうちは寺に行くことすら許されず、吉三郎に会いたさのあまり養父を殺してしまう。お七は旧臣の情けある裁きで救われ出家する。

浄瑠璃「八百屋お七」

 西鶴の話をもとに、海音は登場人物を増やし話を複雑化させていきました。類似している表現が多いことから、おそらく海音は西鶴作品を摂取したよねって言われてます〜!ここで「三人吉三」的要素がたくさん登場しますよ〜!!

八百屋お七/相関図

【登場人物】
・お七 
・吉三郎 寺小姓、長男で勘当の身
・安森源次兵衛 (没)元は千石取の旗本だった浪人
・八百屋久兵衛 お七の父
・万屋武兵衛 お七の縁談相手、貪欲者
・十内 源次兵衛の家臣
・太左衛門 武兵衛の相棒
・お杉 八百屋の女奉公人
・弁長 寺の小僧

【あらすじ】
 吉三郎は石高一千石の名の知れた浪人安森源次兵衛の長男。父からは出家するように遺言され親の忠実な家来の十内が遺言を守らせにくる。またお七には町人万屋武兵衛という貪欲者が恋心を抱いている。
 火事の避難先の吉祥寺で出会ったお七と吉三郎の恋は武兵衛と十内により邪魔される。(吉三郎とお七が交わした起請文を武兵衛が盗み、上人に吉三郎を追い出せと迫る。)八百屋の新築のための普請代二百両をお七の父久兵衛に貸し付けた武兵衛がそれの代わりにお七の嫁入りを要求し、家と親への義理の為お七は吉三郎に会えなくなる。(母がお七に義理と孝行をかざして説得、いったん嫁になって後から離別しろと諭す。)下女のお杉の手引きで軒下に身を隠す吉三郎は、武兵衛との結婚を願う母親の話を聞いてしまいお七に会わないまま立ち去ってしまう。お杉の話で吉三郎とすれ違ってしまったことを知ったお七は、吉三郎に立てた操を破らなければならない定めに(吉三郎が残していった蓑笠を抱きしめながら)半狂乱になり、家が焼けたら吉三郎のもとにいけると火をつけてしまう。お七の処刑の日、両親は悲嘆にくれる。処刑の直前に刑場にて吉三郎は自分の身代わりを申し出るがこれを取り下げられお七に先立って切腹してしまう

🌾💬海音独自の義理人情や金銭の描写。そして、色んな人が出てきましたね!登場人物の名前からしてだいぶ三人吉三めいてきました。
 吉三郎の父に浪人安森源次兵衛が設定されたことで、最後の切腹がいきてきますよね。やはり、出家した身とはいえ武士気質な吉三郎像のように感じました。この僧侶でありながら武士の血を引く吉三郎が分裂して別のキャラクターとして描かれるのはさらにさらにあとのお話…。楽しみになってきました!ね?!?!

🌾💬お七の放火に至った心情描写ですが「あいたい見たいゆきたい」→「かたちもみだれきもみだれ心の。家がやけたら寺へゆき。又あふ事のあろうかと。ふつといでたるでき心」でして…「あいたい見たいゆきたい」が強すぎストレートパンチですよね🤜💥!
 風花で言うところ、火の見櫓の「私はあんたに会いに行くよ」→終幕の「あんたのそばにいたかったのさ」ですよね〜〜!あ〜〜〜かわいい〜〜〜😭!
 純粋な恋心かわいいなあ。まだまだ若者のお七だから人心を掴むところもあるよね。(許されざることをしたといえど!)そしてかわいい恋心だけで終わらず、死ぬ直前も火刑台で「我心からなすわざを少しもくやむ事ならず。あふてしぬれば今ははや。心にかかる事はなし」と真っ直ぐな覚悟を見せています。(そして身代わりをしようと来た白装束の吉三郎と対面します、よかったね会えて)お七の芯の強さや筋の通った思考には惹かれるほかないだろ〜!!!と絶叫です(?)
 風花でも死ぬ前に和尚に会えてよかったよね…!命をかけて会いたい人が、自分に命をかけても良いと思ってくれている状況、この上なく幸せですね。

浄瑠璃「伊達娘恋緋鹿子」

 こちらでは火の見櫓の段が有名。そう、櫓のお七です☝️!放火ではなく火事を装って半鐘を叩く櫓のお七像。「火事を装って半鐘を叩く」ということだけでも死罪になるほどの重罪でした。

【登場人物】(火の見櫓の段)
・お七
・吉三郎
・武兵衛

【あらすじ】
 吉三郎は、御上へ献上する「天国の剣」を紛失した責任で切腹となった父の後、100日間の猶予をもらい、剣を探していた。しかし、その期限も今日まで。 吉三郎も剣を見つけ出し届けなければ切腹を免れない。お七は店の再建のため、好きでもない万屋武兵衛と結婚することになっていたが「天国の剣」とやら、この武兵衛が盗み持っていたことを知る。(ここから火の見櫓の段が始まります🪜)そのことを知ったお七は吉三郎のもとに行きたいが、夜間の事ゆえ町の木戸は固く閉まっている。今夜の内に宝刀を取り戻さないと吉三郎の命は救えないため、処される覚悟でお七は櫓に登って半鐘を鳴らす。

 お七の心情描写から始まる火の見櫓の段では、舞台中央に火の見櫓が設置されるのが特徴。(本作以降、大詰めに火の見櫓の半鐘や太鼓が用いられるようになった。「お七物=半鐘や太鼓を叩く見せ場」の原点!)以下に冒頭から少し引用しておきます。

降り積もる雪にはあらで恋といふ、
その愛しさの心こそ、いつかは身をば崩れはし
後にお七は心も空、『二十三夜の月出ぬ内』と体はここに魂は、
奥と表に目配り気配り、よその嘆きも白雪に冴えゆく遠寺の鐘かうかうと響き渡れば
ヲヲさうぢや、アノ火の見の半鐘を打てば、
出火と心得、町々の門々も開くは定。
思ひのままに剣を届け、夫の命助けいでおかうか。鐘を打つたるこの身の科、町々小路を引き渡され、焼き殺されても男ゆえ、ちつとも厭わぬ大事ない。思ふ男に別れては所詮生きてはいぬ体、炭にもなれ灰ともなれ

と女心の一筋に、帯引き締めて裾引き上げ、
表に駆け出で、四つ辻に
咎むる人も嵐に凍て
雪は凍りて踏み滑る
梯子は即ち剣の山
登る心は三悪道の通ひ道

🌾💬ここの!!この!覚悟が!!

2023/09/28 昼 お嬢吉三〜Centuries

私が半鐘をならす、木戸が開いたら私のことは気にせず逃げておくれ。私はやっぱり和尚を置いて行くことはできない。」「お坊、木戸が開いたらすぐに逃げるんだ。わかったね、私はやっぱり吉さんの元に行くとするよ……かかっておいで!」のかっこよさっすよ!!!!!!好きな男のために命散らせてやらんかい、という若さと強さが炎のようにかっこよくて突き刺さってくるわ…。我らがお嬢、気迫があって凛としてかっこよかったねええ。
 原文の「思ふ男に別れては所詮生きてはいぬ体、炭にもなれ灰ともなれ」がかっこよすぎて震えた。文楽の映像でも振袖や髪を振り乱して、まじでかっこよかったっす。

🌾💬ちなみに〜〜〜!歌舞伎「松竹梅湯島掛額」(上演される数少ない全幕物の八百屋お七)においての火の見櫓の段では、お七が駆け出すところまで描かれます。
 宝刀を武兵衛から奪って吉三郎に届けたいと考えた下女お杉とお七は町の木戸を開けるよう番人に頼むが、断られる。目の前の半鐘を打つのは重罪であるとお杉は恐れる。やがてお杉は主人に呼ばれる。一人になったお七は決心し櫓に登って半鐘を打ち木戸が開く。そのときお杉が宝刀を取り返してくる。追ってくる武兵衛をお杉が阻止している間に宝刀を持ったお七は木戸を通って吉三郎のもとに走っていく。
 と言うような様子です。女2人でかっけえね!この立ち回り感(?)たまんないね!

黙阿弥「三人吉三廓初買」

 登場人物も増え、話もまたまた複雑化します。あらすじ書いたけど、あら?とは??すみません、長いです。要素が多いんだもん…。
 初演が1860年1月だったこともあって正月の江戸の情緒が詰まっています!さすが「初買」!わーい!おめでとう!

三人吉三/相関図(あらすじ)

【登場人物】
・お嬢吉三
・お坊吉三
・和尚吉三
・久兵衛 八百屋、十三郎養父
・安森源次兵衛 お坊・一重父
・土左衛門伝吉 夜鷹宿を営む、和尚・おとせ父
・一重 花魁、お坊妹
・おとせ 和尚妹
・海老名軍蔵
・文蔵(文里) 小道具商、木屋主人
・十三郎 木屋手代

【あらすじ】
安森家は頼朝公から預かった名刀庚申丸を何者か(実は伝吉)に盗まれた。安森源次兵衛はその申し分けに切腹、安森家は断絶。兄吉三は盗人、妹一重は花魁になった。
 庚申丸は川底から見つかり小道具商木屋文蔵の手に渡る。海老名軍蔵は安森への遺恨と出世のため借りた百両で庚申丸を買い取る。木屋手代十三郎は取引の帰り、夜鷹のおとせと遊び100両を落としてしまう。
 おとせは昨夜の100両を返そうとしているが、お嬢吉三に盗まれ川に蹴込まれる。お嬢がたまたま居合わせた和尚と100両を巡って斬り合っていたところ、和尚吉三が現れて仲裁する。3人は義兄弟の血盃を交わす。一方、軍蔵は安森の若党に殺され庚申丸はお嬢の手に収まる
 100両を落とした十三郎は申しわけのため身投げしようとしているところを夜鷹宿を営む土左衛門伝吉に救われ、伝吉の家に身を寄せる。そこへ八百屋久兵衛に救われたおとせが帰ってくる。伝吉はおとせの父、八百屋久兵衛は十三郎の養父。(実子お七は5歳で誘拐された、知る由もないが今のお嬢吉三)伝吉は話を聞くうち、十三郎とおとせが双子の実子だと気がつく
 伝吉の庚申丸を盗み紛失し、そのために妻が発狂して死んだと言う懺悔を聞いた和尚は不孝の詫びだと(お嬢から預かった)100両を押し付ける。伝吉が100両を悪銭はいらぬと投げ捨ると釜谷武兵衛の手に収まってしまう。
 お坊に武兵衛は100両を盗まれ、取り返そうとした伝吉は斬り殺される
 重なる悪事の詮議のため逃げ、吉祥院で再会した三人吉三。お坊は伝吉を斬った罪、お嬢は100両を盗んだ罪を悔いて死のうとする。和尚は畜生道に落ちたおとせ十三郎を殺しその首を身代わりとし、2人を逃してやる。
 お嬢が捕物で閉まった木戸を開けるため本郷火の見櫓の半鐘を鳴らす。通りかかった八百屋久兵衛に庚申丸と100両を預け、安森家再興と木屋復興を頼み、降り頻る雪の中3人は三つ巴、刺しちがえて死ぬ

🚨全幕(全場)バージョン行ける気合いの入った人はこっち来てね!!💥

 ちなみに参考程度に庚申丸と100両の動きを相関図に乗せてみました。

三人吉三/庚申丸と100両の動き(あらすじ)

あと悪ふざけで重ねたバージョンも載せておきます(?)

わ〜〜!たいへんだ〜〜!

「風花、繚乱」

上記で要素はたくさん語りましたので、本当に簡単に…(?)

風花、繚乱/相関図

【登場人物】
・お嬢吉三
・お坊吉三
・和尚吉三
・安森源次兵衛 
・伝吉 和尚の父
・おとせ 和尚の妹
・海老名軍蔵
・池田播磨守 南町奉行
・お七 八百屋の娘
・森之助(※) お坊の弟
・太郎右衛門 金貸商

※作中で名前は出てこないですが、次男ということから推測で「森之助」と記載しています。

【あらすじ】
安森家から伝吉が庚申丸を盗むが紛失する。
お嬢吉三は太郎左衛門から庚申丸を盗む。庚申丸を巡って、通りかかったお坊とお嬢が斬り合っているところ和尚が現れ仲裁。3人は義兄弟の血盃を交わす。(盗人和尚を追っていた南町奉行池田播磨守は三人吉三がそろったことを知る。)
 その晩、和尚の家で父伝吉はお嬢を見るなり激怒。お嬢は和尚の妹おとせから10年前に村八分にあった原因が八百屋お七と和尚の関係にあったと聞かされる。なんの因果かお嬢も本名お七と言い、惹かれ合う2人はいい仲に
 一方、海老名軍蔵は安森への遺恨と出世のため庚申丸を手に入れたい。伝吉は海老名の指示で庚申丸を探している。伝吉はお嬢が庚申丸を持っていることを知り奪いにかかるが、敵討ちをしたいお坊に斬られる。父の死を知った和尚は10年前からの因果のためにこうなったとお坊に詫びる。
 庚申丸を追う海老名家に追い詰められる3人。(と、その場にいたおとせ)和尚が場を引き受け、おとせ、お嬢、お坊を逃す。奉行所が加勢し3人を追い、捕物のため町の木戸が閉じられる。
 3人を捉えた合図の半鐘が鳴れば木戸が開くと知り、和尚を逃すためお嬢が半鐘を鳴らす。義兄弟の契りを重んじた3人は誰一人置いて逃げる事はなく、雪降る中死んでいく。庚申丸は安森家再興のため次男に渡すよう池田に託される。

🌾💬まず、「100両出てこないんだ!」と言う点。三人吉三だと、100両の動きがまあまあ複雑でしたものね…、風花では👇のような庚申丸の動きのみ。

風花、繚乱/庚申丸の動き

 「お宝」の移動をこのくらいに収めてあると「めっちゃ見やすい〜わかりやすい〜!」と思いました。初見でもこんがらない!!

 次に、登場人物の配置に関して。
 「お七吉三郎」から分裂したりしてきたキャラクターたちですが、風花の特徴は三人吉三よりさらにキャラ分裂?回帰?して「八百屋お七」が登場します。ご本人登場。言わずと知れた八百屋お七の物語がそのまま組み込まれているから、こっちも話に入りやすいかったです。お七事件とお嬢吉三の要素がブラーがかかったように交差しておもろかったな。お七の可愛らしさそのままに、お嬢吉三としての強さもあって終始「かわ!?かっこよ?!」となっていました。でも、放火犯を元にしたキャラなだけあって影もあるところが、余計に魅力的で…。愛した🫶すき。
 そして、和尚。あくまで今は和尚であるところ、お七と恋仲になるところ、お七に命をかける覚悟があるところ、が、元来の吉三郎みを強調して良かったです…、作中で「吉さん」と呼ばれるに相応しいね、と思いました。(だってみんな吉三、つまり吉さんやん?なのに1人だけ「吉さん」と呼ばれるには理由が欲しいと言うオタク心満ちた。)あ〜!小粒な山椒の年上(?)お兄さんかっこよかった〜!3公演見るうちどんどん惹かれて好きになりました。
 最後に、お坊。元来の吉三郎の「武士の血」要素をぎゅーっと煮詰めたようなキャラクター。ひときわ義理に真っ直ぐ生きていたから、2人の人情に揺らぎながらも惹かれているような感じがした。周りを読んで自分の立場や道理をしっかり通すところが絶妙に不器用でかわいかったなあ。不器用さにはもちろん武士の血筋の影響もあると思うが、彼も10年間の苦悩の中で劣等感や悔しさからくる不器用拗らせてたものね。でも、最後には思いを遂げられて、一本筋の通ったかっこいい人生だった…!!切腹かのように1人で死んでいくのも良い〜〜!

 あと別枠で三人吉三が叶えられなかったピュアラブ実現の期待を込めた存在として、おとせ。3人の因果、縁では叶うことのない「いい人と幸せになる」を託されているのは彼女よな。「いい人見つけて幸せになれ」ってお嬢からもお坊からも言われて(もちろん和尚もそう願っていたろうし)3人にない未来に続いていく幸せをかけたみんなの妹なんだなあ、と。お嬢が最後に「おとせちゃん」と言ったの、「おとせちゃん、のあとにいろんな言葉を繋げて幸せな気持ちにしてくれる相手を見つけなよ…」的な深読みをしましたね、ええ。好きな人に名前を呼ばれるっていいものなんだよって伝えてるような〜〜。

🌾💬まとめ

 「三人吉三」がお七事件(天和の大火)の超超後のインスパイア作品という流れの中で、さらに200年以上の時を経て良い意味で全く別の「お七事件」関連の作品が爆誕していたんだということが分かりました。めっちゃかっこいい!!知れば知るだけおもろい本!!すごいすぎる…。「三人吉三」を敷いて脚本するってことに、お七事件からの流れを組み込んでおられてオタク心が喜びすぎた。初演直後の「脚本すごかった…」の気持ちがここまでしっくり裏付けされると思ってなくて、さらに歓喜🙌手放し!何百年とかけて変遷してきたお七もの、Centuries使われてんのもかっけえな〜〜〜!らぶ!
 で、「お七」が自分本位に愛に生きたかっこいい女として終始刺さってしまって大変でした。いやまじで推しがお七やったの夢だった???めっちゃ可愛かったし、泣け仕方なかったし天才だったな????
 もはや本noteを通してまで「お七」の話しかしてないわけだけど、もうこれは仕方のないことだね??お七がいなければここまでのことにはならなかったのだから、お七のことばっかり喋ってうるさいのは推し贔屓とかではないよね!!(?)

 配信終了してしまったけども、こんなに配信が終わるのすら寂しいと思った公演は初めてだ〜〜〜!こちらのnote、物語のことばかり話していたけど何より舞台を見て体感する風がたまらんかったのでまた見たい〜〜!
 最高でした、また会う日まで!!愛を込めて🤘!!

参考文献


・井原西鶴 谷脇理史 訳注『新版 好色五人女』角川文庫、2008年
・乙葉弘 校注、日本古典文学体系『浄瑠璃集 上』岩波書店、1959年
・利倉幸一 他編『名作歌舞伎全集 第10巻 河竹黙阿弥集一』東京創元社、1968年
・今尾哲也 校注、新潮日本古典集成『三人吉三廓初買』新潮社、2020年
・竹野静雄「西鶴-海音の遺産:八百屋お七物の展開」『日本文学』32巻7号、日本文学協会、1983年
・有働裕「恋草からげし八百屋物語」試論(上)-西鶴と海音-」『国語国文学報』78巻、愛知教育大学国語国文学研究室、2020年
・丹羽みさと「岡本綺堂の戯曲「お七」と本郷座」『第35回国際日本文学研究集会会議録』35巻、2012年

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