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バァバから優美ちゃんへ #シロクマ文芸部

十二月一日  優美ちゃん初めてのお誕生日おめでとう。

今日生まれてきてくれてありがとう。
抱っこしたら、生まれたてなのに髪の毛もまつ毛もフサフサで、ずしりと重くて驚きました。

「優美」という名前は、あなたのお母さんとお父さんが相談して決めたそうです。
「優美」と書いて「ゆうみ」と読む。
どうして真ん中に「う」を入れたのか、お母さんに聞きました。
「う」は、「うれしい・うふふ・ウキウキ」の「う」ですって。
清美は笑顔で言っていたけれど、その時バァバには意味がよくわからなかったです。
けれど、抱っこしたらとても嬉しくて、うふふとつぶやいたから「ゆうみ」なのねと納得しました。

バァバは今日決めました。
優美の誕生日には、毎年おめでとうのお手紙を書きます。
優美が五十歳になるまで書くので、その後は自分で自分におめでとうのお手紙を書いてください。

今六十六歳だから、あと五十年も生きてられないかもしれないけれど、頑張って書きます。

優美、優しくて嬉しくて美しい。素敵な名前ね。元気に育ってください。
私も百十六歳まで元気に生きます。

バァバより

・・・

今日が私の誕生日なんてすっかり忘れてた。
なんで思い出したのかって?
50通も手紙が出てきたの。
封筒に「バァバから 優美ちゃんへ」って書いてある手紙。

引っ越しでバタバタしてたらさ、押し入れの奥でみつけたのよ。
鳩サブレの黄色い缶の蓋にマジックで書いた「おばあちゃん」という私の字があまりにも雑でちょっと笑っちゃって、これ何が入ってるんだっけ?と思って開けたら、中から新聞紙に包まれたひと回り小さい箱が出てきた。

そこには「優美が五十歳になったら開けて見て下さい」って書いてあったの。

私、今日でちょうど50歳じゃない!と気付いて箱を開けたら、大好きだったキキララのマスコットとね、ピンクのリボンで結んである封筒の束が入ってた。
リボンを外して封筒を数えてみたら50通よ!50通。
また笑っちゃって読んだわよ、全部。

最初は必ず

「十二月一日  優美ちゃん◯歳のお誕生日おめでとう。」
って書いてあるの。

「七五三の着物よく似合ってたわね。」
「四月からは小学生。優美は可愛いからお友達沢山できるよ。」
「運動会楽しかったね。バァバから頑張ったねメダルをプレゼントします。」てメダルの絵が描いてあったり。

おばあちゃん、82歳で亡くなったから、前の年の15通目までは綺麗な字なんだけど、その後の35通は81歳の時に一気に書いたみたいで、だんだん字がよれよれになっていくのよね。

「来月は成人式ですね。おめでとう。これからは優美が自分で自分の道を決めて生きていく。でも、辛い時は一人で頑張らないで、信頼できる人に相談したり、支えてもらいお互いに助け合うのよ。」
「もう三十歳になりましたね。お仕事してるのかしら?結婚してるのかしら?周りの人がどう言おうと、優美のやりたいことを自分の心によく聞いて考えて生きていきなさい。」
「四十歳過ぎると体がいろいろ変化して辛いから、今まで以上に健康に気をつけなさい。栄養と睡眠とウキウキが大切。バァバもあと十年元気に頑張るわ。」とか。

50通目にはこう書いてあった。
「人生半分よく頑張りました。これからは今まで支えてくれた人達に感謝して、誰かを支えられるようにね。でも無理は駄目。自分自身を一番大切に。楽しいことに目を向けて、嫌なことに引っ張られないようにする。うれしい・うふふ・ウキウキを忘れずに。」

それでも最後はやっぱり

「優美、優しくて嬉しくて美しい。素敵な名前ね。元気に育ってください。
私も百十六歳まで元気に生きます。

バァバより」

なのよ。

予定より34年も早いじゃない!
ていうより、116歳なんて無理よね。

50通目に「人生半分」なんてさ、あと50年なのか、116歳までの66年なのかわからないし、そもそも100歳までもどうなの?って思わない?

もう、おばあちゃん意地っ張りで面白くて可愛いなあって笑いながら泣いたわ。

しょうがないから来年から私も書くわよ。

最初に

「十二月一日  優美ちゃん◯歳のお誕生日おめでとう。」

最後に

「優美、優しくて嬉しくて美しい。素敵な名前ね。元気に育ってください。私も百十六歳まで元気に生きます。

優美より」

ってね。


・・・・・


久しぶりに #シロクマ文芸部
参加できました。

小牧幸助さん、素敵な企画をありがとうございます。

お読みくださったみなさんありがとうございます。


読んでくださりありがとうございます! 嬉しくて飛び上がります♪ 私の心の中の言葉や絵を見て何か感じてくださればいいなと願いつつ。