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イヴ・サンローランのラブストーリー

 ある女性が、サンローランに「現実の暮らしの中でおしゃれをどのように楽しめばいいか」と尋ねました。すると彼は次のように答えました。

 あなたは編み物ならできますね。黒い毛糸を買って、セーターを編んで下さい。次に黒いタイトスカートを作るのですが、あなたがきれいな足をしていれば短めに、そうでなければ長めに仕上げて下さい。それから黒いハイヒールを一足。ご主人に頼んでベージュのウールのオーバーを買ってもらいましょう。できれば、革のベルトも買って、そのコートをベルトでしめます。(参考:堀江瑠璃子『イヴ・サンローランの世界』中央公論社1995)

 彼が彼女にすすめたのは、とてもシンプルなスタイルでした。これならば、当時の女性たちも、私たちのようにお手ごろなお店や古着屋などで手に入れることができます。でもここでのポイントは「セーターを編み、スカートを作る」ことです。それも自分で、自分の身体に合うように。

 イヴ・サンローランのメゾンでは、マヌカン(モデル)がムッシュ(サンローラン)と出会った時に初めて、美しいスタイルが完成するそうです。つまり彼にとって、ドレスを纏う人々があってこそのファッションでした。私はこのエピソードから、彼は質問した女性に対して自身を見つめ直すことを提案したのだと思いました。 

 コレクションは、全ての女性に対する「ラブストーリー」でした。そしてそれは色とりどりで、私たちを本当にワクワクさせてくれます。現在サンローランを率いている、アンソニー・ヴァカレロは次のように語っています。

誰もが、“サンローランはこうあるべき”という、それぞれに異なるヴィジョンを持っている。つまり、僕が何をしようと、それを好む人もいれば嫌う人もいる。(…)けれど、それでいいと僕は思う。(参考:Vogue Japan「受け継がれるDNA−−サンローランを築き上げたデザイナーたち」オンライン2018/10/2)

  これから紹介するサンローランのたくさんの「ラブストーリー」の中で、きっとあなたも恋に落ちるものがあるはず。それが、あなた自身を見つめるきっかけになれば、そのスタイルはもうあなたのもの。

 まずは彼のことを知るためにも、映画を見てみてほしい!

「イヴ・サンローラン」2011.  “本人と当時のコレクションの映像が見られるドキュメンタリー作品”

「イヴ・サンローラン」2014. “公私共にパートナーでであったピエール・ベルジェ公認の作品”

「イヴ・サンローラン」2014.“公には見せられなかった彼の感情を描いた作品”

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