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SPAC『アンティゴネ』空間デザインノート(13)「魂の世界」

「巨大な影絵というアイディア自体は悪くないと思う。けれど、それだけでは90分間、観客の集中力を持続させられないよ。影絵という仕掛けに飽きてしまう。」宮城さんは続けてそう言った。

なるほど、確かにそれはそうかも知れない。

演劇は時間と空間を操る芸術だ。演出家は、法王庁中庭という空間を支配すると同時に、90分間という時間を支配する必要がある。その観点からは「影絵」というアイディアでは不充分だ、という事だ。

それに、法王庁中庭という巨大な空間を活かすために思いついた「影絵」というアイディアだったが、それが単なる「思いつき」に見えてしまううちは、観客がその思いつきに「付き合わされる」事になる。それでは弱いのだ。

影絵の持つ空間的な効果は確かにある。しかしそれだけでは『アンティゴネ』の世界観を表現するのに充分ではない。影絵も含めた時間と空間全体が一つの世界観を作る必要があるのだ。

では、『アンティゴネ』の世界観とはどうあるべきなのか?

宮城さんが訥々と語り始める。

「『死ねば皆仏』という日本人の死生観を表現する事、それが今回の大きな目標・・・

だから、舞台上にいる俳優たちは皆、死者である、という前提にしたい・・・

死者であり、同時に生まれる前でもある、『無垢の魂』が舞台上を漂っている・・・」

演出家、宮城聰のスイッチが入った。

~つづく~

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