スケッチノートに期待する7つのこと

前回の記事では、スケッチノートを描く際に意識する3つ「I」(Information/Insight/Idea)について書きました。今回は、前回の内容を踏まえて、スケッチノートを描くことで何が得られるのか、スケッチノートに期待できることをお話しします。

(1)「考える」の習慣化

手に入る情報量は爆発的に増えています。それから、SNSのような手軽なアウトプット先もあります。

インプットも簡単、アウトプットも簡単ということは、気をつけないと無思考に入ってきたものをそのままただ垂れ流しているだけになりがちです。

自分の頭で咀嚼したわけでも、新しいものを生み出しているわけでもないため、情報の拡散には貢献できても、自分自身の身になっているとは言えません。

スケッチノートに何か描くためには、インプットを取捨選択し、そこから気づきや考えを導き出して、どういう表現で描くのかを考える必要があります。

インプットからアウトプットの流れの中で、3回の「考える」が介在するので、考える習慣を身につけるのに適しています。

(2)内省の機会

多数の人に向けてリアルタイムに描くグラフィック・レコーディングと違って、スケッチノートはパーソナルなものです。ノートやiPadと向き合うことは、もう一人の自分と対話しているようなものです。

グラレコや情報伝達が目的のインフォグラフィックが外側に向かうアプローチだとしたら、スケッチノートは内側に向かうアプローチです。

グラレコが場に属し、インフォグラフィックが情報に属するものなのに対し、スケッチノートは個人に属するので、自分の気持ちや考えを込めやすく、内省したり、後から見直して振り返るのに適しています。

(3)集中と心の安静

スマホやPCで文字をタイプするのと比べて、手描きのスケッチノートは身体的な行為で疲れます。

ジョギングにも似ていて、描きながら頭の中で考えをぐるぐる巡らせながらも、終わった後には頭が空っぽになります。

集中力を高め、かつ気持ちを落ち着かせることができるため、僕は心の安静にもスケッチノートを活用しています。

(4)自分らしさの確立

社会は目まぐるしく変化しています。やっと見つかった答えもすぐに時代遅れとなり、陳腐化していきます。

「人生100年時代」「VUCA時代」「個の時代」などといったワードが飛び交う中で、押し寄せる不安を希望に変えるにはどうしたらいいでしょうか。

それには、外部環境に関係ない軸を自分の内部に打ち立てて、自分らしさをアイデンティティとして社会にはっきりと示していくことでしか、不確実な世の中で周囲に翻弄されずに生きる術はありません。

では自分らしさをどう確立するのか──自分の関心、日々考えていることや学習している内容をスケッチノートに描いていくと、おのずと自分が何を軸に生きていきたいのかが明らかになります。

描く行為は面倒でもあります。それを乗り越えても描きたいと思うことがあるのならば、それが自分のしたいことに深く関係していると考えていいでしょう。

そうやって、自分の軸の芯となる部分を強化できるだけでなく、手描き文字やイラストといった他の人と違いが出やすい表現を繰り返していくことで、総合的に自分らしさが形づくられていきます。

(5)人柄の発信

一度も会ったことのない人と、一度でも会ったことのある人。チャットやメールでコミュニケーションをとる際に、人柄をイメージしながらやりとりできると随分と安心感があります。

スケッチノートは、描いている内容と文字やイラストから人柄を感じられるため、SNSでの発信を通じて、それを見てくれた人との心理的な距離を縮めるのに役立ちます。

コミュニケーションにおいて、伝える内容が大事なのはもちろんですが、発信者の人柄がわかることで円滑になることも多々あります。

一度も会ったことのない人と、一度でも会ったことのある人。

チャットやメールでコミュニケーションをとる際に、人柄をイメージしながらやりとりできると随分、安心感があります。

スケッチノートは、わかりやすい情報発信という点ではインフォグラフィックに劣りますが、人柄発信という点で優れています。

人柄発信を通じて、それを見てくれた人との距離を縮めるのに役立ちます。

(6)アイデアの引き出し・ネタ帳

何千冊もの膨大なノートを描いていたレオナルド・ダ・ヴィンチやトーマス・エジソン。彼らには遠く及ばないにせよ、僕もノートが溜まっています。

時々見直しては、忘れていたアイデアに出会うこともあり、ネタ帳として活用しています。

(7)インフォグラフィック/グラレコのトレーニング

スケッチノートは、インフォグラフィックやグラレコと共通するところも多く、そのトレーニングにも適しています。

インフォグラフィックは、日常的に作るには手軽さがありません。インフォグラフィック制作のプロセスとスケッチノートを描くプロセスのおおまかな流れには共通点も多いのですが、スケッチノートの方が短い時間で済みます。

インフォグラフィック制作の流れについては、前著『たのしいインフォグラフィック入門』にくわしく書きましたので、参照頂けるとうれしいです🙌

次に、グラレコはどうでしょうか。最終成果物が模造紙かノートかの違いはあるにしろ、見た目上は近しいアウトプット。

ですが、人に見られながらリアルタイムにまとめることと、模造紙に描いていくことが高いハードルとなります。それが、スケッチノートでは一気に下がります。

グラレコの手順については、グラフィック・レコーダーの清水淳子さんの著書『Graphic Recorder 情報を可視化するグラフィック・レコーディングの教科書』がおすすめです😉

スケッチノート、インフォグラフィック、グラレコはバラバラな存在ではなく、厳格に分類できるものでもありません。分類にこだわり過ぎるよりは、自分の適性や利用シーン、用途に応じて、どのアプローチに寄せるかをイメージするとよいでしょう。

スケッチノートに対する7つの期待
(1)「考える」の習慣化
(2)内省の機会
(3)集中と心の安静
(4)自分らしさの確立
(5)人柄の発信
(6)アイデアの引き出し・ネタ帳
(7)インフォグラフィック/グラレコのトレーニング

これら7つのことがスケッチノートに期待できるだけでなく、コミュニケーションとテクノロジーのトレンドからもスケッチノートに注目しています。

そこで次の記事では、なぜいまスケッチノートなのか、スケッチノートの時代性についてお話しします。

次の記事はこちら

前回の記事『スケッチノートの3つの「I」』をまだご覧になっていない方は、そちらもあわせてどうぞ。

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櫻田潤/インフォグラフィック・エディター

NewsPicksで働きつつ、個人でも活動中。データや情報を視覚化して、見えにくかった事実やストーリーを見えるようにする人。ビジュアルシンキングラボ主宰。📚著書に『たのしいインフォグラフィック入門』『図で考える。シンプルになる。』 ほか。

たのしいスケッチノート入門

スケッチノートに関する連載。「考え方」「描き方」「使い方」を解説。スケッチノートとは何か。インフォグラフィックやグラフィック・レコーディングとの違いは? なぜいまスケッチノート? どうやって描くの? など。
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