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廃香 【終末メンタリティ】

 写真を趣味にしていると、自分が撮った過去の写真を見返す機会は多くなりますが、今年の前半は特に撮り歩くという行動に大きな制限が生じたこともあり、過去のライブラリを振り返ることが多かったように思います。

 自分の場合はRAW現像が独立してひとつの趣味になってしまっていて、一度現像し終わった写真の新たなRAW現像の可能性(大げさ)を探る遊びに興じたりしているとやはり、以前の写真を引っ張り出す機会は多くなります。そんな自分の、今年撮った拙写の数々を眺めていて、ふと気付きました。


暗い写真が多い・・・。

 年末恒例の今年の漢字一文字にするならば、絶対に「枯」「廃」「朽」だろうなというくらいに。「おまえの今年の写真を写真集にまとめるのでテーマを決めろ」と誰かに言われたら絶対に「終末」だろうなというくらいに。

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 もともと、いわゆる『映える』写真が苦手というのがありますが、やはり世相も影響しているのでしょうか(世の中のせいにしてみました)。

 一つ思い出すのは、virus禍で人がいなくなってしまった街並み・風景を撮った際に、”ひっそり感”を醸し出すRAW現像を試行錯誤していて偶然、自分のお気に入りが完成したことが影響していそうです。3月から7月くらいはひたすらに、彩度下げ下げの「自称・終末プリセット」を適用させまくっていました。さすがに8月の眩しいキラキラの海やヒマワリの写真には似合わずに頻度は減りましたけれども。

 そんな終末メンタリティ(笑)が影響したのか、久しぶりに撮ってみたくなったものがあります。

人のいなくなった村

 今年、10年ぶりに「消えた村の探訪」を再開してみました。私が生まれ育った秋田県には、数多くの廃村・廃集落があります。そのほとんどは、雪深い内陸の地ゆえ、豪雪に圧し潰されてしまい嘗ての面影すら失くしてしまっておりますが、中には、往時を忍ばせる佇まいで現世に残る遺構として当時の建造物に出会える地もあったりします。

「秋田・消えた村の記録 」

 11年前に偶然見つけた一冊の書籍のタイトルです。目にした瞬間に手に取ってレジに走った記憶があるくらい、「オレのためにある本!」的バイブルです。 

 人の往来が無くなり、誰も住まわなくなってしまった秋田県内125の集落についてまとめられており、時代の波にのみこまれ消えてゆくまでの経緯や、移転者からの言葉などが記録されております。合わせて、現地までの大まかな地図が記録されており、現地訪問の際には大変参考になります。当時は、休日になればこの「冒険の書」を手に秋田県内を縦横無尽に車で巡り、現地に赴いては買ったばかりの一眼レフを振り回しヘッタクソな写真を量産しておりました。     

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 冒険の書は、現地訪問の際に必ず持参することにしていました。

 集落としての役目は終えている場所であっても、先祖代々続く農地を守り続けている方は多く、遠く離れた市街地から農耕に通っている昔の住民の方に現地でお会いすることがあります。  

 そんな元住民の方と現地で初めてお話しさせていただいたとき、訪問の目的を告げた後この書籍をお見せすると、大変感慨深そうに書籍に載った写真を見つめられていたのがものすごく印象に残っています。「当たり前だけど、この方たちにとっては大事な場所なんだもんな」と思った瞬間が、なんだかとてもノスタルジックで、少し寂しくて、変わり果ててしまった現地の情景と相まって何とも言えない「香り」として自分の中に今でも残っています。

 今回、自分の心の中に巻き起こったムーブメントは、またこの「香り」に触れたくなったのが原因かもしれません。

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廃香という

 ということで(何を伝えたいのか全く分かりませんが(笑))、そんな私にとっての「冒険の書」を入手以降、せっせと現地訪問を繰り返し、地元の方との会話を楽しみながら撮りためた「廃香」を、少しずつ載せていきたいと思います。

 以前に、同じ「廃香」のタイトルで尾去沢鉱山の写真を載せております。廃村・廃集落に限らず、自分にとって同じ香りを感じられる物・場所・建物・植物等を「廃香」シリーズとしてまとめてみようかな、と考えています。

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※11年前・・・2009年当時はNikonの入門機であったD40、その後ステップアップ機に相当したD90を使用していました。どちらも素敵なカメラでした。決定的に残念なのは、当時写真の仕組みが全く分かっておらず、「なるほどパンフォーカスっていうのがいいわけね」と、入門書を斜め読みしてしまった罰としてほぼすべての写真をf22で撮っていたことです(笑)。

手ブレ量産\(^o^)/

それからほどなく、例に漏れず「絞り開放病」を患い、2020年9月現在は「f9が至高病」で通院中です。

※秋田・消えた村の記録・・・著者は「佐藤晃之輔」さん。御高齢とは存じますが、もしもどこかでお会いすることが出来るのならば、一度心からのお礼を伝えたいくらい素晴らしい内容の書籍です。



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