曼荼羅道02文庫サイズ

「新・小説のふるさと」撮影ノートより『曼荼羅道』について思ったこと。

霊峰立山を舞台に、薬売りという日本国のみならず世界を旅して生活の糧を稼いだバイタリティ溢れる男とマラヤの女、そして現代の男女を軸にこの怪奇な物語は展開してゆくのだが、その年ちょうどある儀式が復活していた。
布橋灌頂会である。

立山信仰において女人禁制による女性を救うためにうまれたこの灌頂会は
堂川にかかる布橋を目隠しをして渡り、黄泉の国に降り立ち、うば堂で念仏を唱えまた橋を渡り戻れば死後、極楽浄土に至ることができるという儀式だ。

あの世とこの世、現世と来世、あるいは過去と未来を往還する装置をもつ
立山の芦峅寺という場所そのものが、この小説世界の骨格をなしているのだった。


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