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非営利組織も支援者も幸せなれる「マンスリーサポーター制度」について〜鍵はサステナブルなリソース配分

~ソーシャルセクターの成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~


非営利組織を経営する上で「財源が安定する」というのは、極めて重要な要素と言えるかと思います。助成金・補助金や(単発の)寄付に頼りすぎると、どうしても年度や季節ごとの変動が大きく、経営者や事業責任者は特に(私も似た立場として)ヒヤヒヤな気持ちになります。

財源を安定化するには、事業収入と並んで、近年は国内でも爆発的に増えている「マンスリーサポーター制度」(毎月/毎年の継続的な寄付を、ここではそう呼称)があります。今回はこのマンスリーサポーター制度についてみていこうと思います。

1.マンスリーサポーター制度から組織が得る効果

マンスリーサポーター制度の最大の特徴というか、その効果は「(組織の)財務基盤の安定化」と「(社会課題解決を促進する)ファン層との繋がり」にあります。

効果1.財務基盤の安定化
毎月または毎年継続的に収入があることで、組織のキャッシュフローが安定します。これによって、収支予想も立てやすくなり、スタッフの雇用やその待遇改善また各種設備への投資など、経営上取り得る選択肢が増えます。当然、事業の強化にも直結し、社会課題の解決に繋がります。まさに、組織を維持・成長させ、社会課題の解決を早めるという、極めて重要な効果を生み出します。

効果2.ファン層との繋がり
支援者から見ると、継続的に寄付することで、その組織または社会課題の解決の輪に入った感覚を抱きます。NPO側としては、コミュニケーションを通じて彼らのロイヤリティを高め、社会課題を一緒に解決する仲間へと誘うことができます。この延長線上に、米国で主流になりつつある「P2P(ピアツーピア)」という仲間を集めるファンドレイジング手法を位置付けることで、その真価を発揮させることもできます。
また、単発寄付に比べて支援者のことをよく知れることから、大口寄付者などへのステップアップを促す「ステップアップ戦略」の基盤となり得たり、緊急災害時など何かあったときに協力してもらえるなど組織運営において様々な協力をしてもらえたりします。

2.マンスリーサポーター制度を活かすための投資

ここからがマンスリーサポーター制度の成否を左右する話になります。まずは上記の効果を得るために、必ずクリアしたいハードルを見ていきましょう。

ハードル1.初期投資が必要
・管理システム(支援者データベース、領収書等の一括発行ツール、メルマガ発送などのコミュニケーションツールなど)を準備する
・クレジット決済(口座振替)といった、自動引落しの手段を準備する
・カスタマーサポート体制といった、入退会の手続きや決済などの事務手続きを行うサポート体制を整備する

ハードル2.継続投資が必要
・上記のシステム及びサポート体制を維持する
・新規サポーター契約に向けた広報費用(webマーケティングや「Face 2 Face」と言われる街頭キャンペーンなど)を捻出する

ここでのポイントは、業務の効率化になります。

マンスリーサポーターの特徴は、ご存知の通り「寄付者が多くいる」ことです。やや極点な例ですが、今までで年1回寄付していた人が、毎月寄付に変わることで、それに係るNPO側としての作業が12倍に増えると仮定します。そうすると、NPOとして少ないスタッフで制度を運用するには、ITテクノロジーを利用した業務効率化が必須となります。また多くの支援者に丁寧かつ誠実に対応するためのカスタマーサービスも欠かせませんが、組織として割けるコストとリソースも考慮すると、カスタマー業務の効率化も必須と言えます。

限られた人員で最高の対応をするには、どれだけ少ない業務量で運用できるかが成功の鍵と言えそうです。そのためにシステム等の投資がどうしても必要になってきます。一方で、後にも触れますが、効率化できるところは極力効率化しながらも、支援者の満足度を高める業務には出来る限りリソースを割いて支援者の気持ちに応える、というメリハリを意識するとよいでしょう。


3.効果が高いマンスリーサポーター制度とは

では、ハードルを越えて、実際に運用する上でのポイントも見ていきます。

-効果を高めるポイント1
投資回収を考える

マンスリーサポーター制度の効果を得るには、上記のようなシステム及び人的な投資が必要になります。そのため、その投資した費用に対して、何人のマンスリーサポーターが、いつ契約(維持)できれば、費用が回収でき、事業に回せる寄付を上げられるようになるのかを、必ず考えましょう。
「マンスリーサポーターを始めたけど、業務は大変だし、うまく回らない」という組織の多くは、まずここで躓いている可能性があります。

計算式の例
月額平均マンスリー金額×人数×12か月×N年 > 投資額

この計算式を用いて、月額○○円で、毎月△△人ぐらいのサポーターを維持すればN年で、投資額を回収できる、ということを考えてみると良いでしょう(「正味現在価値」などを踏まえた計算を行えればベストですが、ここでは割愛しました)。さらに、いつまでに、いくらを基準金額として、何人募るのか、という目標を立てるよりよいかもしれません。

ちなみに、マンスリーの難しいところは、目標達成が困難な場合に撤退する、という選択がとりにくいことです。。ただし、やり方さえ間違わなければ(ないしは正せば)、投資コストを越える大きな寄付を集めることができますので、あきらめず!

効果を高めるポイント2
新規募集のためのPRを最適化する
マンスリーサポーター制度の効果は、いかに多くのサポーターを募り、維持するかにも左右されます。新規では、多くの人に組織または事業について知ってもらい、共感してもらい、そのまま簡単に寄付できる方法、が大切です。つまり「知ってもらう」×「共感してもらう」×「寄付しやすい」という掛け算を考えて、広報媒体やその内容、寄付の受付方法を検討します。

(この新規募集にはじまり後述のアップグレードまで、その手法が多く確立されているので、いずれご紹介できればと思います)

効果を高めるポイント3
継続のためのコミュニケーションを最適化する
継続率を高めに保つために、支援者コミュニケーションを行います。一般的には継続率が90%前後がベストと言われています。また、新規および維持のための施策を検討する際に、LTV(ライフ・タイム・バリュー)という考え方を用いて、その費用対効果を考えることもあります。

-効果を高めるポイント4-
モニタリングを行う

上記の新規及び継続率、また新規につながった媒体は何か、投資の回収状況はどうか、などマンスリーサポーター制度が本体の目的である効果をだしているかを確かめます。

-効果を高めるポイント5-
年間の計画をたてて回す

理想は、投資回収及び寄付に回せる金額を向上させるために、実施事項を計画書にまとめることです。ただ、難しい場合は最低限、マンスリーサポーターへのコミュニケーションを計画に落とし込み、サイクルとして回していけるようにしましょう。

-効果を高めるポイント プラス-
アップグレード

金額をアップグレードしてもらうためのコミュニケーションを行います。

ワンポイントアドバイス:初めてのマンスリーサポーター運用
初めてマンスリー制度を導入する場合は、既存の支援者→マンスリーへの切り替えを案内しましょう。
また、デフォルトの金額(webフォーム上の初期設定値やパンフレットの案内金額など)が、一般的には一番多く選ばれる金額のため、投資回収の計算をするなどして慎重に決めましょう。
その上で、上記の新規と既存支援者の維持(+アップグレード)施策、モニタリングを行い、その結果に応じて修正していきましょう。

3.「効率化によるリソース確保」と「満足度向上へのリソース配分」のバランスをとる

マンスリーサポーター制度が効果を発揮するには、まず何よりも業務効率化の要素が重要になります。多くの支援者に対して、少ないスタッフで対応するには、システムの力を借りる、業務を平準化する、業務の一部をアウトソーシングする、などの対策を経て、はじめて効果的な運用の道が拓けます。その上で、継続及びアップグレードを目指して、支援者の満足度向上に向けたリソースをねん出します。
この「効率化によるリソース確保」と「満足度向上へのリソース配分」の二つのバランスを押さえた運用を行うことで、「財務基盤の安定化」と「ファン層との繋がり」の効果が得られるのではないようでしょうか。
マンスリーは、多くの支援者に寄付をとおして、社会課題を知ってもらい、その解決を一緒に歩める道を拓く最高の方法になり得ます。

~ソーシャルセクターの成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

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