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AI(人工知能)がソーシャルセクターをどう変えるのか~米国のファンドレイジング活用事例から考える

~ソーシャルセクターの成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

近年、「A.I.(人口知能)」が話題になっていますね。ソーシャルセクターでも、特に米国では、このAIを活用した組織運営の事例が出てきています。今回は、ファンドレイジング(資金調達)の分野で、AIがどのような成果をだしているのかを見ていこうと思います。

成果1.データ分析による確度の高い支援者の抽出

AIを組み合わせた活用方法として、見込み支援者の確度評価があります。

その仕組みは、データベースに蓄積された過去の寄付情報や支援者の住所や年齢などの個人情報に加えて、米国では当たり前になっているウェルスデータといわれる富裕層の個人情報を購入したり、データベース自体がweb上にある情報をサルベージして得た情報などを組み合わせて、AIがそのアルゴリズムによって、確度の高い支援者リストを作成するようです。さらに、私も実際に目にしましたが、「今日電話すると寄付の可能性が高い人100人」といったリストを表示できたりもします。

海外の非営利組織で最も多く使われているBlackbaud社のデータベースをはじめ、多くの支援者データベースではAIと連携して実現できるようになりつつあります。日本でも「Salesforce」というシステムが非営利向けのパッケージを提供しており、有償になるかと思いますがAIを利用することで、(AIが理解できる言語の壁がどこまでかにもよりますが)似たようなことができるかもしれません(※ちなみに日本ではウェルスデータの販売は無く、web上のサルベージもできないようです)。

このようにAIを活用したデータ分析では
・今まで以上に確度の高い支援者にアプローチできること
・また、その中の何人かは今までの方法では見つけられなかった人であること
・さらに、彼らに対して最適なタイミングでアプローチできること

が利点と言えます。

参考
https://www.salesforce.org/ai-for-good-applications-for-nonprofit-fundraising-marketing-and-program-management/

成果2.ボットによる業務の効率化

AIは、業務の効率化や標準化を加速させてくれます。

多くの組織では、業務で作成したWordやExcelなどのファイルを共有ファイルサーバーや外部のストレージサービスを利用して保管しているかと思います。こうしたファイルを探す際に、チャットボットと音声またはテキストメッセージでやりとりすることで、得たいファイルをスムーズに提供してくれます。最近では、ボットを活用したFAQなどが進んでいたりもします。

ちなみに、海外では「Charity: Water」という非営利組織が、2年ほど前に世界で初めてFacebookメッセンジャーのチャットボットを利用した寄付集めを行ったようですが、web上の記事を見た限りでは否定的な見解が散見されます。(←あくまでも私の検索した限りです)

参考
https://www.forbes.com/sites/forbestechcouncil/2018/04/03/what-does-artificial-intelligence-mean-for-nonprofit-organizations/#2991be6018dd

成果3.メール文章の提案

AIは、支援者に送付するメールの草案を提案してくれます。

米国のチャールストン大学では、「Gravyty」というシステムを導入しました。これは、データ分析を行い確度の高い支援者を抽出できます。このシステムのユニークな点は、その支援者に送付するメール文の草案を自動で作成してくれることです。さらにAIは書き手の癖を学び、草案に反映していくようです。また、なぜその支援者を選んだのかという理由や、最近の寄付金額や日時なども参考情報として記載されていたり、はたまた、仮に食事を行う場合は、日本でいう「食べログ」(?)のような飲食店情報サービスと連携して、その中からあったお店を提案してくれるそうです(←ニーズがあるのか、なんとも言えない機能ですが)。

参考
https://www.prnewswire.com/news-releases/the-college-of-charleston-uses-artificial-intelligence-to-expand-advancement-workforce-300776557.html

AIとの付き合い方

このようにAIを利用することで、少ないリソースで多くの支援者とより密なコミュニケーションがとれるようになることが、近い将来には実現できそうです。さらに今後はますます、AIを中心としたテクノロジーが爆発的に発展することで、今では考えつかないことが実現できてくると思います。

しかしながら、非営利組織にとって支援者との間には「共感」「誠意」「信頼」といった想いが存在しています。AIをはじめとしたテクノロジーを使う際には、その便利さや高い効果も相まって「より多くのお金を得るにはどうすれば良いのか、そして、それに繋がる支援者を獲得するには」という思考や行動に傾斜してしまいがちです。これは、ソーシャルセクターにとって良い未来にはならないと思います。

そうではなく、「社会を良くするために支援者の力を借り、さらに彼らに仲間になってもらう」という観点で、より多くの支援者とコミュニケーションをとって、彼らに私たちのミッションやビジョンを伝え、また彼らの声を聞くために、AIをはじめとしたテクノロジーをどう使うのか、を考えていくことが大切な気がしています。

AIとの良い付き合い方について、今後も考えていきたいですね。

~ソーシャルセクターの成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

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