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ファンドレイジングにおけるデータ分析~ある大学の事例から見えた効果

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

近年、ファンドレイジングにおいて、データ分析を活用する流れが加速してきています。

例えば、アメリカのニューヨーク大学では、寄付金額が多い支援者へのアプローチでは、11か月の期間をかけ、5回の接触(主に訪問)が、最も寄付に繋がり易い。一方で、寄付金額が多くない支援者へのアプローチは、6か月の期間をかけて、2回の接触(訪問に限らず)が、寄付に繋がり易い、という傾向が分析の結果わかったそうです。

アメリカでは、2010年代前半から大規模な組織を中心に積極的に取り入れ、今日では、小さな組織でも活用が進んでいるようです。今回は、昨年からデータ分析を取り入れたアイオワ大学の事例を紹介したいと思います。

アメリカの中西部に位置するアイオワ大学では、2018年9月にデータ分析チームを結成しました。彼らチームは、支援者データを徹底的に分析し、6か月でファンドレイジング戦略を大きく変える成果を生み出しました。

成果1.小さくても賢く

チームは、アメリカの大学界隈で一般的に言われている"ファンドレイザーが抱える見込み支援者が多い方が良い"常識を疑うことから始めました。

アイオワ大学では、ファンドレイザー1人が管理している見込み顧客の数は120人以上でした。しかし、1人でその全員をフォローするのは難しいと仮定し、直近5年間の寄付情報から、見込み層をランク分けしました。その結果、フォローすべき見込み支援者の数が、3分の2、ないしは人によっては3分の1へと絞られました。

当初は、そんなに少ない見込み数で成果が出るのか不安があったようですが、結果としては、支援者との接触回数が減少した一方で、平均の寄付額が増加したそうです。

成果2.金脈を見つける

大学にあるホール(1,800席)では、大学主催によるオーケストラ・コンサートや講演会などが有料で開催されてきましたが、その参加者情報を、見込み支援者情報と紐づけて分析をしてきませんでした。そのためチームは、数年分のチケット情報を分析し、その参加回数や金額に応じてカテゴライズしました。

その結果、例えばオケのプレミアムチケットを頻繁に購入していながらも寄付をしていない人を、確度の高い見込み支援者として追加されたり、また寄付額が少ない人でも、講演会に頻繁に来ている人は、確度が高くすることで、見込み支援者の質をあげることができました。

最後に

データ分析の効果は、多くの組織が抱えている「限られたスタッフ」というリソース不足を前提とみなして、その限られたリソースで最も効果的な方法を採ることをサポートすることだと思います。

一方で、冒頭のニューヨーク大学の担当者は「『あと5回訪問すればいいんだ』という効率性一番に考えて行動するのではなく、『支援者が最も関心を持っていることは何か』を一番に考えて行動するようにしていました」と話しておりました。

この辺のバランス感覚と言いますか、ファンドレイジングを通して何を実現したいのかをいつも意識しておくことが大切な気がします。

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

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