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非営利の「モチベーション」理論~最新の研究から見えたコト

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

最近、ソーシャルセクターのモチベーションについて『Public Service Motivation(公共サービスを担う仕事への動機付け)』という理論があることを知りました。

これは、政府や自治体などの公共機関の職員に焦点をあて、彼らのモチベーションを最大限に引き出す方法として、アメリカで90年代後半に提唱され、急速に広がり今では世界40か国以上で研究されているようです。

日本では、まだ一部の研究者の方が論文を書いている状況で、まだまだこれからの様子です。

1.「Public Service Motivation(公共サービスを担う仕事への動機付け)」とは

他者を助けたい, 社会の役に立ちたい,有意義な公的サービスの提供に携わりたいという労働者の価値観もしくは選好
(Wright and Pandey, 2008)」

参考:http://gku-repository.gku.ac.jp/bitstream/11207/292/1/ronshu_52%283%29_069_mizuno.pdf

と定義され、

今日のアメリカでは、行政だけに限らず、非営利組織やソーシャルビジネスなどに従事する人も含めたモチベーション理論として研究されているようです。

2.PSMの構成要素

構成要素としては、

①「政策決定の魅力」(Attraction to Politics and Policy Making)
②「公益へのコミットメント」(Commitment to Public Interest)
③「思いやり」(Compassion)
④「自己犠牲」(Self-sacrifice)

参考:https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1798153/p212.pdf

の4つが現時点では主流のようです。

3.NPOやソーシャルセクターにおける解釈

日本のNPOやソーシャルビジネスにおいて、これをどのように解釈できるのだろうかを考えてみました。

①政策決定の魅力(Attraction to Politics and Policy Making)

「広く国民全体に影響のあるような課題に対する(政治的な)施策立案への関心」と言えますが、これでは行政色が強いため、ここでは「社会的な課題解決の方法を考え、実践することへの関心」として捉えてみます。

例えば、『スタディクーポン』や『こども宅食』といった事業は、それぞれ課題を浮き彫りにし、多くの人の理解と共感を得て、社会全体へ拡がりを見せ始めています。こうしたある種のムーブメントを巻き起こすほどの事業に従事することは、モチベーションの維持・向上に繋がり易いと思います。

もちろん、こうした活動のように目立つことはないにせよ、社会をより良くする方法を考え、実行することにモチベーションを得ることはあり得るのではないでしょうか。

②公益へのコミットメント(Commitment to Public Interest)

「一個人や企業など特定の人やグループの利益よりも、広く社会一般の利益を優先してコミットすること」として捉えてみます。

なんとなくですが、常に公共に関わるような仕事をしていると、それが当たり前になり、モチベーションとして薄まっていく気がします(そうじゃない人も大勢いると思いますが)。一方で、一般の営利企業にいる人にとっては、公益という観点で魅力を感じて、その公益活動に従事したい、というモチベーションが湧く場合があるのではないかと思います。そのため、定期的に、新しい人が組織に入ることで、彼らのモチベーションに触れることを意識的に行っても良いかもしれません。

③思いやり(Compassion)

「困っている人を助けたい、といったような他者を慮る気持ち」として捉えてみます。

事業やサービスの受益者を思い、自分たちの活動を通して彼らの喜ぶ顔や声が聞こえることは、大きなモチベーションになるでしょう。

④自己犠牲(Self-sacrifice)

「(自分のためよりも)他の人や組織、社会のために、自分の時間や労力、お金などの犠牲を払うような覚悟」と捉えてみます。

これは誰もが少なからず持っているのではないでしょうか。例えば東日本大震災でのボランティア活動のように、他の人や社会のために寝る間も惜しんで活躍した人がたくさんいます。そこにはきっと、思いやりに加えて、自己犠牲の要素も少なからずあったのではないかと思います。

ただ、これは一時的にアドレナリンが分泌して興奮するかのように、継続して維持することは、多くの人にとっては難しいかもしれません。常に、自己犠牲な行動をとれる人は稀な気がします。


最後に

このように当てはめようと思えば当てはまりますが、
実務として、自分自身や他のスタッフのモチベーションを維持・向上させようとした場合は、もう一歩踏み込んで考える必要がありそうです。

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

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