「想像ラジオ」より

こんにちは(*´ー`*)

はじめに一曲きいていただきましょう。2010年リリースアルバム、ポルノグラフィティ『∠TRIGGER』より「∠RECEIVER」。~♪

こんど、よく立ち寄る書店が主催する読書カフェに参加してきます。その課題本を読んでいました。


「あのですね、俺らは生きている人のことを第一に考えなくちゃいけないと思うんです。亡くなった人への慰めの気持ちが大事なのはよくわかるんですけど、それは本当の家族や地域の人たちが毎日やってるってことは体育館でも仮設住宅でもいくらでも見てきたじゃないですか。段ボールで位牌作ってでも、皆さんは鎮魂をしています。

その心の領域っつうんですか、そういう場所に俺ら無関係な者が土足で入り込むべきじゃないし、直接何も失ってない俺らは何か語ったりするよりもただ黙って今生きてる人の手伝いが出来ればいいんだと思います。

ガメさんもSさんも無神経な人じゃないのは十分知ってるんで、逆にっつうか、だからこそ口をはさませてもらうんですけど、広島のことだってそうなんじゃないかとさっき聞いていて俺は思いました。もっと遠巻きの周囲から見守らせてもらうくらいのことしか、俺らはしちゃいけないし、そうするべきなんだって」


「ゴホン、ナオ君さ、ガメさんは聴こえたことにしてあげたいんだと思うし、それは大事な気持ちじゃないかと思うんだよ、俺は。いっぺんにあんなことが起きて、それは広島だってたぶんそうで。いや全部似たものとして片づける気は絶対ないんだけど、東京だってゴホッ、それは俺が植木職人の下についてバイトしてた時に何度も教わったことなんだけど、東京の大空襲でも大勢がひと晩で命なくしたって聞いてて。爆弾落とされて火の海になって焼けた人もいたし、隅田川に飛び込んで溺れたり窒息したりした人もいたんだぞって親方のおやじさんが、そのおやじさんにとっても親からのまた聞きなんだけどってゴホン、俺に話してくれたんだよね。

亡くなった人が無言であの世に行ったと思うなよ、とおやじさんが仕事帰りに植木道具を置きに行くと奥の座敷から廊下に出てきて茶碗酒片手で俺によく言うんだよ。叫び声が町中に響き渡ったはずだし、悔しくてどうしようもなくて自分を呪うみたいに文句を垂れ続けたろうし、熱くて泣いて怒って息を引き取るまで喉の奥から呻き声あげたんだぞって。先代の親方は、自分が知らないその夜のことをおやじから聞いて、しょっちゅう夢見て飛び起きたんだって言ってたけど、先代は話を聞いて後悔したことねえぞって言うんだ。

ゴホッ、俺は亡くなるまでのその声を考えるのと、亡くなったあとを想像するのにそれほど差があんのかって思う。恨みはあるし、誰かに伝えたかったこともあるし、それが何だったか考える人がいてもいいし、いやいなくちゃいけないし、それがSさんだったりするんじゃないかって、ゴホン、俺はそう思うんだよ、ナオ君」

いとうせいこう

『想像ラジオ』(河出書房新社、2013年)より


自分が被災したのではない二人の、真剣な会話(対話)です…被災地で新たに生活をはじめるのに必要な片づけを手伝うボランティアに従事した5人が乗っている、帰りの車の中。

どちらが正しいとかわからないし、そもそも結論を出すべきことなのかもわかりません。わかるのは、二人が現場で感じたことや体験したことをそれぞれ真摯に胸に落とし込んでいること。

文庫本の帯に著者インタビューが記してあります。

「小説には死者の声を届ける回路がある。

眼前の利益だけを考えるような世の中で、想像力がやせ細り、格差が生まれ、敗者が切り捨てられる。死者と共に生きるという思想が今、求められている。

世界中で災害が起きている。人類にとって被災するとはどういうことなのか。課題を百年かけて考えていかなくてはいけない。今年は始まりの年であって、終わりの震災十年にしてはならない。」

さて、読書カフェでは参加者&ファシリテーターが一つの作品について思い思いに語ったり、関連するテーマを決めてしゃべったりします。ひとりで読んでるときとは違った視点に出会えるのが魅力のひとつだと思ってます。どんな会になるのか、楽しみです!

Live with the dead …☆

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