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ポエトリー

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2016年8月の記事一覧

夏

私たちの短い夏が始まった

短い

は既知の未来を予想させ

始まった

というからには終わりを連想させ

さらに私たちの、

と所有を表明すれば

それはいつか失うということで

くっきりと屹立するあの雲も

真っ黒なあの影も

大きな、あるいは小さな音を出す虫も

鳥も

光っていたり、ぬらぬらしたりする生き物たちも

私たちも

近いいつか消失する実をはらんで咲く、季節

this is world poetry

はじまりの鐘が鳴る

同じ音で八つ

ひとつ上がって四つ

それから散らばるビーズのように

食べてる途中で飽きてしまった

宿題のように積み残るミルクレープ

もしもこの世が詩でできているのなら

たいていのことはゆるされてしまうだろう

ていうかゆるすとゆるされるの境がない

同じ音で八つ

なのにぜんぶちがう風に聴こえる

音楽は愛されることに慣れ過ぎて

詩は万年の片想いをわずらっている

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誰も君に、

誰も君に、指一本触れさせてはいけなかった

誰も君を、殺させてはいけなかった

(都幾川はとてもきれいな川)

誰も君に、指一本触れさせてはいけない

誰も君を、殺させてはいけない

君自身にさえも

(花の咲いた分だけ実るわけではないのだ)

(けれど花は咲く)