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絵本「こんとあき」から「じゅもん」という詩が書けた背景

まず、はじめに詩を読んでください。
「じゅもん」という題名の詩です。

じゅもん

だいじょうぶ だいじょうぶ
でもほんとはだいじょうぶじゃない
砂丘を超えてゆく おばあちゃんの家
(あそこまでたどりつけば、もうほんとうにだいじょうぶ)

だいじょうぶ にはふたつある
ほんとにだいじょうぶな だいじょうぶ
だいじょうぶじゃなくてもだいじょうぶな だいじょうぶ

しっかりとおなかの下の方にちからをいれて
相手の目をみて言う言葉
早口で言えば言うほど
とたんに言葉はかるくなる

だいじょうぶ にはみっつある
ほんとにだいじょうぶな だいじょうぶ
だいじょうぶじゃなくてもだいじょうぶな だいじょうぶ
だいじょうぶにたどりつくための だいじょうぶ

あきはこんを背負っていく
砂に沈むあきの足
すっかり暗くなっていく
ひとあし、ひとあし、前に進む

繰り返せば繰り返すほど
言葉はうすくなっていく
それでも繰り返す
歩きつづける
だいじょうぶ だいじょうぶ
だいじょうぶにたどりつくための だいじょうぶを連れて

今年の9月に【第10回 もろやま「本の帯」コピーライラ―賞】の審査員というお仕事をする機会をいただきました。

正直なところを言えば、私は学校の宿題で出るこういったコンクールの類には懐疑的な念をいだいていました。読書感想文とか、いかにもこう書けば感動が伝わる的なフォーマットがある気がして。

ですが、この「本の帯」にはなにか惹かれるところがあり、引き受けてしまいました。それが夏前のこと。

そして9月になり、毛呂山図書館まで審査に伺いました。293点もの小中学生たちの作品を見るのは、予想以上におもしろく、よいエネルギーを浴びる時間でした。気づけば2時間くらいあっという間にたっていた気がします。

そこで出会った応募作品から、上の詩は生まれました。
小学校4年生の応募者の本の帯には「『だいじょうぶ』いつでもこんがそういってくれたからあきはがんばれたよ」と。

林明子さんの絵本「こんとあき」は、「絵本といってなめてかかると泣かされる絵本ベストテン」とかあったら絶対上位に食い込むだろう知る人も多い名作です。ベタといえばベタ。

私もこの絵本は知っていましたが、実は私はこんが「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と繰り返すのがあまり好きではありませんでした。「大丈夫じゃないだろっ」てときにも「だいじょうぶ」と言ってしまうこん。でもそれって「だから人間だよね」(こんはキツネのぬいぐるみですが)という気もする。良くも悪くも。

だいじょうぶじゃなくても、だいじょうぶになりたいために言うだいじょうぶもあるかもしれない。と思ったら、詩になりました。

楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!