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詩が書けた、だから今日はいい日。

歯が抜けた日。
家族でピザを食べに行った日。
こわい夢をみた日。

子どもの頃は、毎日がいろどり豊かで、
それでいて次の日になると忘れてしまっていた。

大人になると特別な日をみつけるのは自分次第。
「詩が書けた、だから今日はいい日」ということにしておいてもいい。

「エッジ」

いびつな軌道を描いて
生は進行する
近づいているのか
遠のいているのか
たいていはそんなことに無自覚に
生活は進む
コーヒーの香り
積ん読の山
マテリアル、マテリアル
スタッフ・アンド・ナンセンス
ヒューマンビーイング
にんげんがにんげんにかこまれて
わすれてしまう
いともかんたんに
わすれてしまう

毎朝の通勤電車
毎日通う教室
工業団地へと続く朝の交通渋滞
見飽きるほど顔を合わせているのに
あの人たちのことはなにも知らない

なぜわたしはここにいる?
と問い続けて
一日は終わった

時々、小さな旅に出て
ふたたび帰るのは小さな家

なにも変わらない
ことを重ねれば重ねるほど
確信は薄れていった
軌道の上にわたしはいる
それはわかる
でも今、わたしは光を放っているのだろうか

わすれてしまう
ああ わすれてしまう
うっかりしてしまう
やらかしてしまう
ミルクを飲んでしまった
読み書きを覚えてしまった
恋をしてしまった
お金をもうけてしまった
宝くじに当たってしまった
オーロラを見に行ってしまった
起業してしまった
自己破産してしまった
結婚してしまった
不倫してしまった
くすりを飲んでしまった
子どもが生まれてしまった
また深淵から遠のいた

ひまはつぶれたが
これ
ではないのだ
わたしがここにいる理由は

たとえ子どもが死んでも
たとえ子どもを殺しても
わたしの刑は続いていく
いつまでたってもぎこちないステップを踏んで
軌道から逸れていかないよう
それだけに気をつけて

時に軌道のふちに腰かけて
彼方に消えていった星たちに想いを馳せる

スタンドFMでこちらのポエトリーリーディングを聴くことができます。

楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!