ノイエ・ムジーク~パラドクシカル

音楽は生まれた瞬間に死ぬと知りつつ
音楽を作り続けるしかない男がいた
彼が音楽を人々と共有するとき
それは再生ではなく、再死なのだ
なんどもなんどもくりかえされる もっともうつくしいいきものの し
いたましいスペクタクルと にぎやかな弔いが
パラードのようにゆきすぎる

指揮棒が宙を舞った
みんなは息を殺した
そして
郷愁はついに見棄てられた

「ここぞという時に音を外し、
ハーモニーの最高潮で不協和音を鳴らしなさい」

今度のコンサートマスタァは音楽家ではない
挑戦者である(センテ、ニイヨンフ)

「いいかね
誰もついてこられないように、目印の赤いリボンは外してしまいなさい
帰り道がわからなくなるように、ビスケットの食べかすはカラスについばませてしまいなさい
歌というものが生まれて以来
人類が夢をみるようになって
眠りの質が落ちたということだ」

カナリーアイランドには
忘れられた歌がたくさん落ちているという
それを拾い集めにくるのは翼のない生き物だ

ト音記号や四分音符の形をしたビスケット

カエリタイ
という眠りにも似た感情を始動させるための、スウィッチ・オン

「それは再び生きるのではなく、再び死ぬことを意味するのだよ」
コンサートマスタァは続ける
彼はそれ、のみを愛する
愛するがゆえに、台無しにする
何度も何度も繰り返される、もっとも美しい生き物の死
いたましいスペクタクルとにぎやかな弔いが
てんでんばらばらなパラードみたいにゆきすぎる

世の中の不協和音を一手に引き受けたような音をたてて
霊柩車(くるま)は通りを出ていく

またひとつ  新しい音楽がうまれる


楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!