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ジュウ・ショのサブカル文学マガジン

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文学についてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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#読書

横光利一とは|新感覚派の旗手の生涯を蠅などの代表作とともに紹介

「小説の神様」といわれた人間は2人いる。1人は「暗夜行路」などで白樺派の代表的な作家にまで成長した志賀直哉。そしてもう1人は新感覚派の旗手・横光利一だ。 はじめて読んだ横光利一の作品は「春は馬車に乗って」だった。そのあまりの美しさ、鮮烈な比喩表現に衝撃を受けたことをマジで今でも覚えている。 すごい作品だ。鳥の内臓を「瑪瑙のような」とか書いてて、表現がエグすぎて、もう逆にマジでよくわからなかった。 昔に活躍した作家や画家は、今見ると色褪せてしまうこともある。しかし横光利一

太宰治の「人間失格」で笑えなくなった人は、いったん寝るべきだ

太宰治といえば、非常にネガティヴかつ陰鬱な作品ばっかりで、読んでいて暗くなると思われがちだろう。はい。その通りです。一見、死ぬほど暗い。ずーっと、うじうじしている。 しかし人によっては、笑いながら読める人も多い。渋谷のクラブでコロナビールの瓶にレモン沈めてる兄ちゃんが読んだら「いや、こいつ自分好きすぎるっしょ。ウケんだけどやばくね」と笑いながら読むに決まっている。 なかでも「人間失格」という名作はヤバい。とにかくずーっと自分語りで、自意識過剰が止まらない。「他人に気を遣い

日本文学史を年表でまとめ!作家・代表作で一気に振り返る【奈良時代から平成まで】

文学というでっかいカルチャー領域を理解するために、いったん日本の文学の歴史を年表でデータベース化したらわかりやすいかも! と気づいたので、時代ごとに代表作家と代表作品をざっくり書いていきます。ちなみに今後、いろんな記事を更新するなかで、このざっくり文学史年表をアップデートしていく予定です。 では!いざ歴史が長くてややこしい日本文学史を奈良時代から平成まで、代表作品と代表作家を見ていきましょう。 奈良時代の日本文学奈良時代の代表的な作家・ディレクター ・太安万侶 ・額田王

横光利一の蠅を徹底考察! あらすじや新感覚派の特徴など

横光利一といえば、1920年代の日本文学における超重要人物だ。新感覚派の中心となったその作品はまさに「横光節」といえるほど特徴的なものだが、なかでも「蠅」は横光利一感MAXの、かなり特殊な作品である。 「蠅」を最初に読んだとき私は高校生3年か大学1年くらいだったが、その衝撃は今でも忘れない。「なんじゃこのオチ!」と叫びながらひっくり返って机のヘリに後頭部を強打し永眠しかけた。そして気づけば、まるで誰かに命令されたかのように図書館で横光利一全集を読み始めた覚えがある。 その

澁澤龍彦やばい。最期がやばくて龍子のあとがきがやばいので、結果やばい

澁澤龍彦はやばい。何がやばいって、人が避けるものを好み、真面目に追求していく姿勢がやばい。ちゃんと変態。丁寧な変態。シュルレアリスムやらエログロやらSMやら少女偏愛やら……あらゆる秘宝に首を突っ込んでは徹底的に研究するフロンティアスピリッツがやばい。これらのバックボーンにあるのが「フランス文化」ってのもやばい。もはやフランスってやばい。 ほんで若い時の写真がコレ。(出典: http://perimari.gjpw.net/majick/20150525 中央公論社) 出典

『一千一秒物語』を徹底解説! 稲垣足穂自身が「代表作」とした作品

私が折にふれてつづってきたのは、すべてこの作品の解説にほかならない 稲垣足穂が「一千一秒物語」について宣言した言葉である。足穂の生涯や作品解説については前に書いた以下の記事をどうぞ。 いちょっともうこれ、やはり名作すぎる。デビュー作こそ至高。と宣言することってものすごく勇気のいる行為だと思うんですけど、この作品だったら確かに胸を張れるな、と思った。 昨晩に読みながら眠ったんですけど、どうしても語り足りず、今回は『一千一秒物語』について、背景や影響を与えた作品なども加えな