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『ニートのクロちゃん』

小学校の頃、すでに60Kgを超えていたクロちゃん。それをきっかけにいじめられて引きこもりに。その後、部屋から一歩も(真夜中のトイレ、家族が誰もいない平日昼間のシャワー以外は)外に出ない生活を続けることで平均的な、というより少し痩せ過ぎと言えるほどの体重に戻ったが、クロちゃんに聞かれていないと思って開かれていた家族会議で飛び交った「ごくつぶし」「すねかじり」「ヒッキー」という言葉がすべて自分の事だと知ってしまい、今になってもまだ外に出ることが出来ずにいる。AB型の23歳。

ある日、いつものようにインターネットで自分の人生を振り返りながら、かなりの長文で(まだ十数年しか生きてないというのに)まるで世界のすべてを知っているかのような口ぶりで、世界に満ちている悲しみやそれに対する不満、人生というものの儚さやそのただ中で翻弄されてすり減らされていく生き方への懸念、そしてそんな生き方を強要される自分の憤りなどを書き綴って公開した。クロちゃんにとってそれは、積もりに積もった日頃の鬱憤の発散であったり、別に不満を感じていたわけではない引きこもりという生活でいつのまにか無意識的に感じていた外界への憧憬でしかなかったが、なぜかネット上には絶賛するものがいた。いままで時折、死にたい(というより消えてしまいたい)と願い続けていたクロちゃんにとって、それらの誰とも分からない絶賛の言葉は希望の光となった。絶賛の言葉、と書いたがそれは、「鬼才現る!」とか「文章は下手だが鬼気迫るものがある」とか「なんなんだよお前、怖ぇーよ!」といったネット上では非常によくある、賞賛とも嘲笑ともとれる非常にありふれた言葉の数々だったが、それらすべてが、誰とも話をせず、誰にも相手にされていないと思い続けていたクロちゃんには、目に見えぬ師匠からの、強い輝きを持った導きの玉言のように心の中に響き渡った。

それからクロちゃんは、それでも家族と顔を合わすことは相変わらず出来なかったので、平日昼間に冷蔵庫から牛乳を、戸棚からロールパンを盗み出し、部屋に籠って小説家を目指すべく孤軍奮闘している。

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