見出し画像

安宿とイケオジと瓶ビール




珍しく近所の仲間とSSTRに参加したときのこと。
例によって17時に金沢市内の某コンビニ集合という400km先の現地集合方式のツーリングにしながらも、実は早めに着いて金沢の回転寿司屋に行くという裏テーマを達成し(七尾のアジ最高)、余裕の表情で合流したあと無事に千里浜にゴールし、その夜の宿がある和倉温泉へ向かった。

あの有名は和倉温泉である。「和倉温泉に安宿など無い」と言い切る貴兄には申し訳ないが、ちゃんとベッドに寝られて2800円の宿がある。貧乏ライーダーにとっては最高だ。温泉街なのに宿で温泉に入れないことを除けば。
ゲストハウスなのでよくある二段ベッドになると思っていたが、予約時に性別を告げずに2名としか言っていなかったせいで、宿側が気を使って個室を取っていてくれた。ごめんね。オジサン二人組で。1泊とはいえ荷物をだらしなく広げて置けるのは少し助かる。そんなこんなで夕飯を食べに外に出た。

こんなときは人と来るのもいいなと思う。どこにしようか、いやあっちに行ってみようとフラフラと店を品定めして、目に留まった「ラーメン居酒屋」に入った。

「ラーメン居酒屋」は悪くなかった。
カウンターと他にテーブルがいくつか。決して広くはない。カウンター奥には“女将”なのか“大将“なのかエプロン姿の女性。テーブルとか椅子は食堂の趣。でも暖簾は居酒屋。奥のテーブルでは出勤前っぽいお姉さんが2人向かい合ってラーメン食っている。
「ビールください。」
「瓶ですけどいいですか?」
「じゃグラス2つで」
乾杯のあとは何品かツマミをもらって、今日走ってきて、ここがこうとか、あそこがあーだったとかの話をした。

3本目のビールを注文した頃、ヒゲを蓄えた一人のイケオジが入ってきた。歳は我々より上、服装からしてオートバイ乗りだった。
イケオジは少し離れたカウンターに座り、ビールを注文した。
出されたビールをコップについで1杯飲み干したあとこちらに声をかけてきた。
「SSTRですか?」
横浜から一人で参加したというイケオジはあーだった話に参戦してきた。ハーレーで来るつもりが出掛けにエンジンがかからず、仕方無くフォルツアで来たという。
「いや、それが快適でね。」ってそりゃそうだ。
一緒にひとしきり飲んで語って、〆のラーメンをキメたあとイケオジは帰るという。我々の分まで気前よく払ってくれた。
一通り感謝を伝えたあと、「どこ泊まってるんですか?」と聞くとサラりと返ってきた。
「加賀屋。」
加賀屋にお泊りのセレブイケオジのお陰でもう1軒回って、我々は2800円の宿に帰って寝た。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?