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陽が落ちるまで80km

その日の晩は輪島に宿を取っていた。
夜明け前から600kmぐらい走って、さあもう一踏ん張りと海岸線に別れを告げ、のと里山道路を目指して走リ始めたのだが、ふと太陽がまだ意外に高いところにあるのに気がついた。
いまから海岸線に出れば海に沈む夕日を見ながら走れるじゃないか。山の中のバイパス走るのと比べたら断然エモい。
そう思ったらすぐに路肩に停まってナビをリルートした。なんだあと80km。2時間だから20時すぎに輪島ならば文句はない。
海岸線に出るまで少し時間がかかった(少し迷った)けれど、やっと太陽に追いついた。

徐々に太陽が降りてきて、海に溶けていく夕日を見ながら、見通しはいいけど少しうねった海沿いの道をしばらく走った。
夕日が沈んだあとは奥能登の夕方の少し青みがかった空気を吸い込みながら、(夜が始まるなぁ)と思いながら、今日の最後の目的地を目指した。
やがて日が落ちきった頃に山道に入る。灯りもなくてもう真っ暗で、前を走る地元ナンバーVOXYのテールが勇気をくれた。家についたのかVOXYがウインカーを光らせて横道に入っていった頃、遠くに街の灯りが見えて少しホッとした。

20時半を少し回った頃に宿についた。今夜の宿は、築70年余の古い町家を改築した、中華そば屋とくっついていて、鍵付きのガレージまである全てが“イイ感じの“ゲストハウスだった。
宿でもらった無料券で近くの温泉に浸かってフラフラと夜道を歩いたあと、宿の中華そば屋で餃子とビールとつけ麺を頼んだ。
お会計したらおそらく15秒後にはベッドに飛び込んでいた。その日はそのまま歯も磨かないで寝てしまった。

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