なぜ大谷はトミージョン手術を受け、藤浪は受けずに済んでいるのか

先月26日、筆者がロサンゼルスに大谷選手を観戦しにいった当日、”大谷、トミージョン手術に踏み切る”というニュースが入ってきました。誰もが手術は避けてほしかったと思う一方、「やはり、避けられなかったか」と思う部分があるでしょう。よく「メジャーに行くと靭帯を損傷する確率が高い」という意見を聞く事があるかと思うが、実際なぜなのか、そして今回の大谷選手のケースはどこにポイントがあったのか、また、手術後の「可能性」について書いていきたいと思います。

◆同学年の藤浪はなぜ大丈夫なのか

大谷翔平世代の中で大谷と”双頭の竜"として常に名前が上がるのが阪神の藤浪晋太郎選手かと思います。よくトミージョン手術を日本人選手が受ける際にメジャーリーグで囁かれるのが「アマチュア時代からの投球過多」。ただ、高校3年時の選抜初戦敗退、夏は地方予選敗退の大谷選手に対して、春夏連覇を成し遂げ、最後まで投げ続けた藤浪選手を比較するとおそらくアマチュア時代には藤浪選手のほうがより多く投球している事が予想されます。さらにはプロ入り後の2人の投球イニング数を比較すると、

大谷選手:594イニング(NPB543イニング+MLB51イニング)
藤浪選手:791.2イニング

と投手に専念している藤浪選手のほうが当然投球イニングが多くなっています。投球過多が影響しているのであれば、藤浪選手が靭帯を損傷していてもおかしくはないのですが、現状問題ない事をふまえると、やはり大谷選手自身に原因があるのではないかと考えられます。藤浪選手と体格もほぼ同等とうポイント(大谷選手:身長193cm 体重92.1kg 藤浪選手:身長197cm 体重:94kg)をふまえた上で、大谷選手の「投球MIXの変化」が1つのポイントになるのではないかと考えました。

◆通用しないストレートが原因に?

グラフを見ていただくと、大谷選手のNPB所属時とMLB所属時の球種ごとの割合がわかると思いますが、はっきりと変化が現れたのが、「ストレートが減り、スプリットが増えた」事だと思います。最高球速が165キロを誇り、今シーズンの平均球速もMLB平均を6.1キロも上回る155.7キロを叩き出す大谷選手がなぜストレートの割合が減ってしまったのかと疑問に思われる方もいるかもしれませんが、実はMLBの打者にとって大谷選手のストレートはあまり脅威になっていない事がわかりました。
スタットキャストによると、大谷選手のストレートのヒット率は投球数に対して26%ですが、MLB平均は14%となっていることより、大谷選手のストレートは"ヒットにしやすいストレート"という事がわかります。原因として言われているのが、球の質。MLB時代の上原選手が球速が遅いのにも関わらずストレートで空振りをとれる理由として"球の回転率"が話題になったかと思いますが、この回転率が高ければ高いほど、打たれにくい”質の良いストレート”だと言われています。
この回転率について大谷選手はNPB時代から指摘されてきたポイントではありましたが、MLBおいても平均よりも約5%低い数値となっているため、それが"ヒットにしやすいストレート"の1つの要因となっていると推測されます。

◆スプリットが掛ける肘への負担

"ヒットにしやすいストレート"となってしまった以上、打たれないためにはどうすればいいのか?その答えはもちろん「一番ヒットにされにくい球種の割合を増やす」事になるかと思います。それが大谷選手の場合はスプリットでした。
ニューヨークヤンキースの田中選手も武器として、メジャーリーガーが苦手とされるこの球種、大谷選手のスプリットについてみていくと、開幕から5月末までに44球のスプリットを投じて打たれたヒットはわずかに1本。加えて、投じたスプリットのうち空振り率が36%とほとんど打たれないもしくはバットに当たりもしない”魔球”となっていました。となると当然一番打たれない球種の割合が増えてきてしまったことが多少なりとも今回の靭帯損傷につながったのではないかと考えれます。
二本の指でボールを挟んで投球するスプリットは投球時に手首を固定して投げるため、腕を振った際の力を肘が負担する事になります。また、MLB使用球はよく言われるようにNPB使用球よりも滑りやすく且つ、大きいため(NPB球:重さ約141.6g 大きさ約22.9cm MLB球:重さ約148.8g 大きさ約23.5cm)、必然的に無意識のうちにNPB時代よりも腕に力が入った形で投球してしまう事が多くなるかと思います。
これらのポイントがすべてではないですが、大きな理由の1つになっているのではないかと私は考えます。

◆手術後は自ら打って、自らクローズする二刀流に?

今週、手術予定となっている大谷選手が投手復帰するのは2020年だと言われています。来年は打者として出場するようですが、やはり二刀流の大谷選手にどうしても期待したいと思うファンの方は多いのではないでしょうか。
では、2020年以降に再び二刀流として活躍する上でどういう可能性があるのでしょうか。技術面でいうとやはり"ヒットの打たれないストレート"に変えていき、変化球の割合を減らしていく事が重要な要素の1つではないかと考えるが、筆者はその方法の1つとして"クローザーへの転向"も有りなのではないかと考えています。イニング数を少なくすることでペース配分を先発時よりは気にせずにストレートを投球する事で、現在よりも打たれにくいストレートを生み出す可能性があるのではないでしょうか。また、やはり二刀流をシーズン通してやり続けることは非常に負担になるため、なるべく投球イニング数を減らしてあげることも多少なりとも復帰後の負担軽減になるかと思います。
自らホームランを打ってつくったリードを最後は守護神として自ら守りにく、そんな大谷選手の形も悪くはないんじゃないかと思いつつ、"二刀流"大谷翔平の復帰を待ち続けます。



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Kosuke Okura

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コメント1件

気になったんだけど、なぜ日本人ってまだ4シームが主流何だろう。。2シームが流行らない理由って何かあるの?
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