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創造系不動産みんなで教科書づくり。『建築学科のための不動産学基礎』で届けたいこと。

こんにちは。建築と不動産のあいだを追究する、創造系不動産の高橋寿太郎です。

お待たせしました。いよいよ、建築やまちづくりの学生のみなさんに特化した不動産学が、本格的にスタートします。そのテキストになる『建築学科のための不動産学基礎』。2020年のXmasに、書店やAmazonで販売開始します。逆境だからこそ生まれる優秀な学生のみなさんに、読んで欲しいと思います!

このテキストは、全員が建築学科を卒業している、創造系不動産の有志12名による共著です。メンバーそれぞれの専門性を生かして、コロナ禍真っただ中に、各章を一気に書き上げました!

建築学生が、なぜ不動産を学ぶのか?

建築学を補う形式での不動産学は、日本で初の試みです。プロローグの冒頭から「このテキストの必要性を、建築学科の教師と学生が共に考えることが最大の目的」と述べられています。

その答えは、各章の様々な箇所に書かれていますが、いきなり表紙にもヒントがあります。この不動産学のプログラムを考えるにあたり、建築学科で教鞭をとる多数の先生方にインタビューをさせて頂きました。そのうち、HEAD研究会の副理事を務める東京大学の松村秀一先生は、「建築をマネジメントする時代に、考えることの多くは、自然と不動産のことになってくる」と言います。また建築コンサルタントとして名高い明治大学の田村誠邦先生は、「不動産や民法を学ぶことは、建築で戦うための根本的なルールを知ること」と話しました。

実感として、私たちが学び働く、建築業界の土台の変化が進んでいるのです。永く不変と思われた幾つかの外部環境が、ここで一気に変わる。だから建築の足下を見直し、考え方をアップデートするきっかけを掴む。それも不動産学が必要になる理由なのでしょう。

社会課題にアプローチするために

建築学は、計画学、構法、意匠論、力学、建築史、環境、設備、住居論、まちづくりや都市計画学と、高度な専門性の集合体です。建築学科にいるあいだ、限られた時間の中で、こうした領域の基礎を習得しなければなりません。

同時に、社会から求められるものの変化を、特に若い学生は私たちよりも敏感に感じ取ります。だから自主的にテーマを探す設計演習課題や、与条件の全てを考える卒業設計では、着目される社会課題の傾向にも変化がみられ、またテーマ設定や建築企画に関わる部分の説明や表現が、年々緻密になっているように思います。しかしその前段階に時間をかけ過ぎれば、自分たちの専門である設計自体に費やす時間が足らなくなる、というジレンマもあります。

だからこそ、日々感じている社会課題に素早くアプローチするためのひとつの入り口としても、不動産学は役に立つはずです。本書でも述べられていますが、言わば不動産は、社会と建築の接点をよりはっきりさせます。

ここでの不動産学のキーワード

ぜひ本書を手に取って、皆さんの建築学の役に立てて欲しいのですが、もう少し内容をお伝えします。以下が、本書の代表的なキーワードや、巻末索引に記載されている主な用語です。きっとこれを見ていただくだけで、どんな内容で、どんな可能性があるか、分かるでしょう。

所有権/賃借権/民法/相続/お金/ファイナンス/資産形成/空き家/空き施設/商店街/人口減少/中古流通/仲介/マッチング/リノベーション/ストック型社会/シェアハウス/コワーキングスペース/与条件/未条件/境界線/不動産証券化/新築着工戸数/サードプレイス/設計課題/卒業設計/商業建築/保存再生/地方創生/空き家バンク/二地域居住/テレワーク/サテライトオフィス/マーケティング/まちづくり/リサーチ/エリアリノベーション/エリアマネジメント/減価償却/キャッシュフロー/Eコマース/経営戦略/デザイン経営/マネジメント/コミュニティビジネス/インタビュー/ファシリテーション/バイアス/ワークショップ・・・

これらは本書で学ぶことができる、不動産学の範疇です。しかしきっとみなさんは、これらのキーワードの大半は、大いに建築の課題でもあると感じるのではないでしょうか。

建築と不動産のあいだの壁とは?

建築と不動産のあいだには、大きな壁がありました。この十数年間で、実務の世界では、たくさんの専門家や経営者の努力により、この壁を軽やかに超える、新しいプレイヤーが多数生まれるようになりました。そして大学教育が、彼らの力を借りて、建築学と不動産学のあいだの課題を克服するのは、まさにこれからです。

12名の著者の試行錯誤によるこの基礎編では、あえて不動産の実務的な側面は減らしました。また宅地建物取引士の資格試験の内容も、ほとんど含めていません。

それよりも、建築学に関係する部分を、特に掘り下げました。建築学の素晴らしいところは、実務や資格に直結するものだけではなくて、建築やまちづくりをすることの理念や哲学をしっかり学ぶところです。今回の不動産学も、できるだけそうなるように努めました。

建築学科の先生へのインタビュー

冒頭で、田村先生と松村先生のインタビューを紹介しましたが、建築学科で教育に情熱をかたむけるたくさんの先生方へのインタビューを通じて本書は完成しました。ご協力に感謝致します。その一部を、本書の注釈で紹介させて頂きましたので、理解の参考にしてください。

・饗庭伸教授(東京都立大学)
・青島啓太特任助教(芝浦工業大学)
・泉山塁威助教(日本大学)
・岩瀬諒子助教(京都大学)
・垣野義典准教授(東京理科大学)
・木下昌大助教(京都工芸繊維大学)
・小池志保子准教授(大阪市立大学)
・田中貴宏教授(広島大学)
・谷村仰士先生(呉工業専門学校)
・田村誠邦教授(明治大学)
・土屋進之助講師(明治大学)
・富永大毅講師(東京都立大学・日本大学)
・中薗哲也准教授(広島大学准教授)
・野村和宣先生(三菱地所設計)
・藤村龍至准教授(東京藝術大学)
・松村秀一教授(東京大学)
・宮崎晃吉講師(東京藝術大学)
・矢部智仁先生(ハイアスアンドカンパニー)

壁を越えた価値を

創造系不動産を創業してから、多くの建築士に支えて頂き、はや10年が経ちました。その間に、建て主や設計事務所を不動産やお金の領域からサポートする、300件を超える大小様々なプロジェクトに参加しました。

その経験を通じて、建築と不動産のあいだには確かに壁があるが、それを超えれば「価値」があると、ようやく確信することができるようになりました。

そしていよいよ、建築学と不動産学の融合のサポートを始めたいと思います。みなさん、どうかご協力をよろしくお願いいたします!

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