注目されはじめたにざえもん

にざえもんのお話の続きです。子供もらえてが見つかり、奥村さんという。優しい飼い主を見つけて幸せたにざえもんでした。しかしときどき見ると。だんだんは調子に乗っている様子が見受けられました。にえざえもんはメスなのになぜオスの名前なのかというと、京都近郊に奥村さんがよくいく立ち寄り湯がいくつかあり、その一つが仁左衛門の湯というものでした。奥村さんはメスなら竹千代、オスなら仁左衛門と名付けようと思ったそうです。竹千代というのは竹千代の湯というのもあるからです

それは動物病院などによく連れてこられる飼い主より上にたってしまう犬の様子に大変近いものでした。何か要求があるとにざえもんは吠えて奥村さんをよびつけます。奥村さんもあまり犬を飼ったことがなかったのでしょうか、犬に従順な飼い主でした。

呼ばれると飛んで行きます。にざえもん要求は一層募って行きました。「あまりこれうはよくないよね」そんな気がする主従関係でした。

しかしまあ。本人が良いと思っているのだから、これでいいのかなと。そういう感じで、私たちは見守っていました。

ににざえもん、タイに行く

ざえもんに変化が起きたのはそれからしばらくしてからです。ある人がにざえもんをを連れてタイに行ってはどうかという話を持ちかけたのです。

タイも暑いところで、の私は心配したのですが、なんとか許可も取ったようで、タイに渡航しました。ご存じの方も多いと思いますが、ペットの渡航は大変なのです。

その企画をした人は素姓のよくわからない人でしたが、どうもマスコミ関係のようでした。費用を負担するのでにざえもｎがタイで子ども達と交流している様子を取材したり、映像にしたり、そういうことを考えていたようです。事情を少し知るあるフリースクールの先生は、「奥村さんは人が良いから、こういう人がよってくるのかもしれない。何か悪いことが起きなければいいけれど」とおっしゃっていました。

それが本当になってしまったのは、にざえもんがタイに渡ってからです。
他の方を通じて「にざえもんががタイで死んだ」という話が伝わってきました。奥村さんからも、状況報告のようなメールが送られてきました。

にざえもんタイに死す

タイにいる間ににざえもんは何かの理由で急死してしまったのです。
奥村さんの嘆きも大変でした。予感が当たってしまったのです。急に様態が悪くなり、死んだということでした。
毒蛇や何かに噛まれたのでしょうか？それとも暑い気候で体が耐えられなかったのかもしれません。
今となっては知る方法はありません。

獣医師として言わせていただければ、ざわざ渡航が難しい暑い場所に連れて行って飼い犬を死なせています。一体なんなのだと思いました。
奥村さんのメールでは、タイに埋葬したということが書かれていました。そして、にざえもんは鎖に繋がれていたのですが、その鎖をいくつかに分けてタイの子供たちが埋葬してくれたという話も書かれていました。

思いました。「暑いところにわざわざ火をかけてかってに犬を連れて行って死なせて、何正当化してんだよ？」というのが獣医師として私が持った印象でした。「にざえもんがつながれていた鎖は、いくつかに分けてタイに埋めました」ともありました。丁寧な供養より死なないで帰国するとを犬は望んでいたと思います。

彼はにざえもんと一緒に居ると、急にちやほやされたり注目されたりしたので、何かそれも嬉しかったのでしょう。しかし、犬が死ぬというとても残念な結果になりました。金の卵を産むガチョウが死んでは何もなりません。

飼っていた犬が死んでしまったことは、奥村さんにはとても残念なことだと思いますが、こうした飼い主とペットの珍しい関係を自分の仕事のためにしようとした人には怒りすら覚えます。せっかくの飼い主と犬の関係をそっとしておいてあげることはできなかったのでしょうか？四匹の子犬のもらい手を見つけて、にざえもんの世話をしていた奥村さんはとても、幸せそうでしたのに、残念でなりません。

この写真は私のの自宅を修理してくださった時に、奥村さんが停めていた車と犬の画像です。さすが一級建築士だけあって、軽乗用車をコンパクトにして。犬も住みやすいようにしています。飼い主として1種の憧れを感じます。
にざえもん物語全編はこちらです
にざえもんという犬の話｜似内　惠子 (note.com)

似内惠子（獣医師・似内産業動物診療所院長））
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似内のプロフィール
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オールアバウト「動物病院」コラム
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