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奥村さんの語る空間となわばり

先日から作品などを紹介している一級建築士の奥村氏の話、続きです。

なぜ建築をこころざしたのか?


。この人が建築を志したいきさつがちょっと変わっています。
彼はお父さんが早くに亡くなって、お母さんとお祖母さんと弟・妹の5人家族で同居していたそうです。
家が狭かったので、自分のスペースがなく、いろいろな場所に自分の空間を作るというのが、創作の第一歩だったそうです。なんでも、家の近所にいろいろ構築物をつくる・親が恥ずかしいので壊す・また作る、の連続だったそうです。

これがフリースクールのっために作ったかにゅーです
楊と不明の隠れる場所

家庭ではお母さんとお祖母さんの折り合いが非常に悪く、個人のスペースが確保できない家屋構造がそれを一層助長した、と彼は言うのです。
さらに彼は言います。

「不適切な関係の人同士が、不適切な状態で空間を共有したとき、その関係は最悪となる。」

なにか私がよく説明する、「縄張り理論」の発展形のような見解です。なわばり争いの素地には、良好でない人間関係もあるのですね。

個人の心地よいスペース


彼の設計は、過去の苦い経験をふまえて、個人が居心地のよいスペースを所有する、ということに重点が置かれています。
前の原稿で紹介した、押し入れを利用して作ってもらったベッド、人が気に入ったのはもちろんですが、同じ官舎の子供が面白がって何人も泊りに来たのには驚きました。
要は居住者のなわばりをよく認識して、それにあうスペースを割り振ってやることなのだそうです。
それは必ずしも広くある必要はありません。誰にも邪魔されない安全な場所がひとつ確保されれば、それでよいのです。
女性の獣医師が増えてきた昨今、職場でのトラブル(特に狭い診療所で)を最小限に止めるために、「なわばり空間の配置」ということが大切だということなのですね。
給与や時間でいい条件を出しても、人間関係でうまくいかなければ楽しい職場にはなりません。しかし、そういうことにまで思い至る上司・経営者はどのくらいいるものでしょうか。

奥村氏のバスハウスです

マッド・アーキテクト奥村氏

このように相手の希望をよく聞いて、自ら設計して作るという大変素晴らしい。建築士が奥村さんです。私は奥村さんにバックトゥザフューチャー二。出ていたエメット・ブラウンのような印象を持っています。
エメット・ブラウンはタイムマシンを設計する科学者ですがが、奥村氏にはどこかマッドサイエンティストのような印象があります。
奥村さんはいわばマッド・アーキテクト。もちろんほめているのです。
普通の常識をはるかに超えて、斜め上の設計をする人でした。
このユニークさがどこから出ているのか?といつも不思議に思っていました。

子供の教育って…


当時、私たちは思い切った改築等する経済的な余裕がありませんでしたので、奥村さんのアイデアによる改築は大変ありがたかったです。
こうして改築していただくことで子供たちの居場所ができたり、友達が見に来たり大変楽しい経験をさせていただきました。
にざえもんのことはとても残念でしたが奥村さんは京都北部にあるバスハウスを拠点にしながら各地を移動して、面白いものを作り続けました。
子供たちたちにとっても、こうした人と接点があったことはとても喜ばしいことだったと思います。何かできるまでずっとそばにいてみているのです。影響を受けないほうが不思議です。

さらに「減築」


更にいうと、当時のバブルや建築ラッシュのとき、「減築」という言葉をつかったのも奥村さんでした。
「これからの時代は建てた物を壊したり、減らしたりする時代になる」という意味で、まさにそんな時代がやってきています。家が余るなど、考えられなかった時代にこの予言はすごいと思います。
お元気ならまたお会いしたいものです。

自宅で一緒にお食事しました。

奥村さんと飼い犬の話はこちらです。
にざえもんという犬の話|似内 惠子 (note.com)
ユニークな構築物の話
一級建築士・奥村さんは実はすごい人だった|似内 惠子 (note.com)

似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)

似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/edit/
オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/

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