娘とポケモンガオーレに挑む物語 ~ミュウを確保せよ~

ミュウ・ミュウツー

“どんな大人たちも最初は子供だった。でもそのことを覚えている大人はほとんどいない。”
―  サンテグジュペリ -

【進化と普遍】

熱い週末が訪れる―
今夜は興奮気味だ…。
娘が『☆5』を獲得できるよう、『かつまたん』のユーチューブで事前勉強は済ませた。
本気になると事前に攻略法だけは知っておきたくなる…

楽しみは半減するが…知識は増える。
悪い癖なのかもしれない。

『☆5』がゲットしたければ、気合いを上げ『☆5』との『遭遇率』を上げるしかない…らしい。

気合いを上げるにはディスクを排出していくか、さもなければ初戦はじっくり戦うのがいい…らしい。つまり、すぐに倒すな、という事である…らしい。

気合を溜める…

簡単に言えば計500円出せば『☆5』に遭遇しやすくなりますよ…という事か。
資本主義を地で行くゲーム…。富める者はより得やすい。
しかし子供は富める者ではないので、ほどほどで楽しむバランスが要求される。

上手さで勝ち残るのとは違う…。

テクを競い合って、弾薬の雨の中をかいくぐって最終ステージにたどり着くイメージではない。子供を得意にさす裏技もなさそうだ…パパの腕の見せ所が無くて少し寂しい…。

布団に潜り込みながら明日の戦闘イメージを湧きあげる。

手持ちディスクと『ミュウ』の相性をイメージする。

温かい羽毛布団にくるまりながら、うつらうつら…いつの頃からか…

週末は送迎を兼ねて息子のサッカー観戦に行くことがこの6年間の生活の一部になっていた…。週末はどこどこに遠征に行く…google mapで下調べする…こんな生活もほぼなくなり、娘と公園に行くのが週末の日課という…平々凡々とした家庭の休日であった…。

『フフ』と笑みが踊り出る、今度はガオーレ通いか。深夜に布団の中でこれだけ口角を上げる事もいつ以来であろうか…。

明日が待ち遠しい…

ミュウのディスクを見てみたい…

丑三つ時に一人微笑む旦那を嫁が見たら気持ち悪がるだろうな…と、記憶を失っていく―
夜は落ち着くけれども一転怖いものでもある…
静寂をどう感じるかはメンタル次第なのかもしれない。

娘の寝息が静かに生命を感じさせる。
心地よい深い深い眠りが訪れる―

決戦の日がきた。バトル日和だ。
朝から娘が持って行くディスクをポーチに詰めている。玄関から車まで、グーチョキパーじゃんけんで行くことになる。
『グー!』『グリコ』
『チョキ!』『チヨコレイト』
『パー!』『パイナツプル』
あ~全然進まない。なるべく勝たせてあげるが、娘よ…なぜ『ぐー』ばかり出す…。
早く行きたいのに…

いよいよだ。ガオーレ!
地の底から這いあがってくる高揚感。
ミュウを捕まえ、娘が喜ぶ顔を見たい。

ミュウ・ミュウツーコースを選ぶが…調子が悪い。たまにブラックキュレムに浮気する。
コスモッグ…。
『進化さそ!』娘が喜ぶ。
『弱そうなのに進化?』
『進化するの知らないの?』
次のバトルからコスモッグを進化せることにするのだが…
『え!?しかし、なにもおこらないって?攻撃しないのか?』
そんなこともつかの間、ついに進化チャンス到来。『え!?弱いまま…』なに?

『☆5』が出現してこない。
欲しくないディスクは取りたくない。
しかし…ディスク排出しないので気合が低いままだ。

勝てない雰囲気―
登場しない雰囲気―

と、いう波はなぜかゲームには存在する。
学生時代にモーニングで並んだ『アレジン』ほどではないにしても…もう少し予感が欲しいものだ。

気を取り直して翌日曜日も挑戦する…
昨晩の坊主めくりでパパから連勝しまくりで勝利への流れを掴んでいる娘の運に期待値が跳ね上がる。

ゲームには運もつきものなのだ。

嫁『え?今日も?』
…『う、う~ん…娘ちゃんがどうしても行きたいって言うからなぁ、たまにはいいかなと』
嫁『なんか甘くない?そんなに連れて行ってどうするの?そんなに楽しいの?』
さらに畳みかける『一回にいくら使ってるの?』
…『う~ん』嘘をつくときに必ず目が泳ぐので、よそ見しながら追撃をかわす作戦に出る。
男は自分自身の弱点を知っておく事も大事だ。
…『まぁ、トータル600円ぐらいかなぁ』
嫁『ふ~ん』
娘『今日も行けるの?やったぁ!!』
…パパは君の笑顔を見られるのが最大の幸せなんだよ。
…ちとゲームで釣っているところに罪悪感を感じるところではあるが。
…許せよ娘。パパもやりたいのだよ。

しかし…ふと思考する。
いったい嫁という生き物は、いつを境に旦那より強くなるのであろうか?
いや、確かに結婚前は優しかった…。
結婚後も当初は優しかった…。
いつから旦那を詰問する立場になるのであろうか?

誤解を恐れずに言えば、いつから妻は旦那との強さの立場が逆転するのであろうか??

『なんでも鑑定団』でも、妻には内緒で買っただの、妻には本当の買値は言っていないだの、
威厳のある人生の大大先輩ですらこうなのである。

この疑問に解決できるであろう手段はただひとつ『探偵ナイトスクープ』しかない…。
いや、しかしやめておこう…『依頼者』で出演がバレた途端に苦難の道を歩むことになってしまう。

八甲田山には挑めない。

やはり勝負の流れがきている日は必ずある。
同日でミュウが二体も取れた。先輩…あなた最高だよ…GJ!これからは先輩にお祈りをする事から始めようと心に誓った。

娘の最高の笑顔と至福の満足感が私をたまらない心地に誘ってくれる。

1945年物のロマネコンティとはこのような味わいなのかもしれない。

しかし満足感も束の間…こうなるとミュウツーが欲しいと言い出す娘。
娘よ…
古代ローマ時代から人類と言うものの根源は変わらないという事か。

“渇望する憧れは、とても達せられないうちは、それが他の何物よりも優れたものでもあるかのように見えるに過ぎない。その渇望も、一旦達してしまえば、またその後から別なものを我々は渇望するようになる”

― ルクレティウス ―

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