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【メディア】どうした!「朝日新聞」のミス・テリー <#2>

懐かしや、反骨の「噂の真相」誌の名物コーナー

その昔、月間販売部数で「文藝春秋」を(都内の大書店で)抜いたこともある反骨の雑誌「噂の真相」(1979年創刊~2004年休刊、岡留安則編集長)には、最後のページに各紙誌の<お詫びと訂正>がずらりと転載され、その一覧が名物となっていました。
 
その名物コーナーを真似したわけではないのですが、最近の朝日新聞紙上に文字の誤りがあまりに目立つので、今回も朝日新聞の<誤字>ケーススタディ>とまいります。

なんかヘンだよ、朝日新聞<誤字>ケーススタディ

まず、次の記事は、長い間、“我が世の春”を謳歌してきた自民党の最大派閥<安倍派>の内紛(!?)をレポートしたものです。
 
11月に入っても、<安倍派>は領袖(会長)が決まらず、山口選挙区の故安倍晋三氏の跡目も安倍夫人が亡き夫の“弔い合戦”の立候補を辞退したと囁かれるなか、衆議院小選挙区の“十増十減”の区割り変更によって、山口県は1議席減となり、前回の衆院選に鞍替え当選した林芳正外相(岸田派・山口3区)に、安倍家三代の地盤をも奪われそうな雲行きです。
 
もっとも、岸田首相が衆院解散を宣言しない限り、国政選挙(地方選は来年)はないので、<黄金の3年間>などと呼ばれているわけですが、岸田おろしの風が強まれば、菅前首相が断念した解散の賭けにでるかもしれません……もし、そうなったら、<安倍派>はどうなるか。
 
まあ、<安倍派>がどうなろうと、こちとらには関係ないことですが、暗雲垂れ込める朝日新聞の行く末は大いに気がかりで、まして記事の凡ミスなんぞでケチがついては、社員はいたたまれないでしょう。
 
さて、岸田政権の派閥均衡スタイルも<安倍派>の出方いかんでは、揺らぎかねないという重要な記事なのですが、こっちの老眼のせいなのかな、と天眼鏡を手に何度読み返しても、やっぱり、文字づらがヘンなのです。
 
本文の上から3段目の前から6~8行目の文章を見てください。

(2022年9月30日付朝日新聞総合面より)

そこには、こうあります。
「新会長選びは、大所帯の派閥が分裂する引き金になりかねなない。」
 
これはどう考えても、「新会長選びは……引き金になりかねない。」――ではないか。(<な>の1字を削除)
 
いや、まさか、朝日新聞政治部記者ともあろうものが、とか、こんな言い回しもあるのかも、とか、しばらくは確信が持てなかったのですが、念のため、国語教師だった連れ合いに見せたら、「これは、なりかねない、よね」。
 
“老眼もまたよし”という赤瀬川原平さんの『老人力』にはまだ達していないようです。
(いや、天眼鏡の力を借りているので、立派な「老人力」が身についてきたのかもしれない)

<国際面>で入力ミスとは、これいかに

そんな文字のダブリ程度なら、ちょっとした校正ミスだし、目くじらを立てるほどの問題ではないと思いますが、こと<国際面>の記事に誤りがあったら、どうでしょう。
 
次の記事がそれです。

(2022年10月13日付朝日新聞・国際面より)

この記事は、テレビで前夜さかんに報道されていたせいか、ザッと読んでしまったのですが、翌日の<訂正とおわび>を読んで、初めて間違いに気づきました。
もちろん、ミスと言っても、ささいなことですが……。

(2022年10月14日付朝日新聞・社会面より)

つまり、写真キャプションに、×衛生画像⇒〇衛星画像、という誤字があったというわけなんですね。
 
これもパソコン入力の際のミスでしょうが、こんなことも指摘できなかったなんて、“鬼の朝日校閲部”もネジがゆるんでいたのかもしれません。

ささいなミスで、朝日新聞に叩かれた!

もっとも、誰にだって仕事上のミスはつきもの――わたしもつまらないミスで、天下の朝日新聞に叩かれた悔しい思いはありますが、そのとき会社の同僚たちに「朝日なんて取る(購読)の、止めれば」と慰めてもらいつつも、(こちらのミスはミス。朝日の記者は手柄をあげたかったのだろうし、彼はきちんと取材して記事にしただけ。それに信頼のおける新聞は他にないからと)月ぎめ購読は止めませんでした。
 
朝日の「慰安婦報道」[☛(1)~(3)]が大問題になったときも、東京本社に「誤報」に至る総括資料を請求するため電話した際、「頑張ってください」と告げたら、社員がいかにも嬉しそうに「有り難うございます」と言っていましたが、その口調から、風当たりが厳しい中、殺到するクレームに電話口で平身低頭で対応する社員の苦しい心情が伝わってくるような気がしたものです。

それにしても、いまだに謎なのは、第2次安倍政権が発足して間もない時期に、過去の一連の「慰安婦報道」に対するバッシングがいきなり始まったのはなぜか、という点です。

ちょっと考えればキー・パーソンは想像がつきますが、これは、ある政治的意図をもって、朝日新聞を狙い撃ちしたものと思われます。

なぜなら、「慰安婦報道」については、保守系の読売産経も、朝日とほぼ同様の論調で、報じていたにもかかわらず、朝日だけがバッシングを受けたことで明らかです。
(くわしくは、下記のWEBサイト≪女たちの戦争と平和資料館≫で特集が組まれていますので、ぜひお読みになってください)

☞(1)「慰安婦報道問題」については、「慰安婦が強制連行されるのを目撃した」という、いわゆる<従軍慰安婦>の存在を裏付ける“吉田証言”が、実は本人のものではなく伝聞、つまりは<誤報>だった、と朝日新聞社が2014年8月に認めて謝罪訂正し、また韓国女性の慰安婦証言の報道についても戦前の大日本帝国政府による女子挺身隊の動員と混同していたのではないか、総じて<ねつ造記事>ではないか、と右派の論客から批判され、国会内でも与野党で激論となり、韓国などとの外交問題にも発展したと記憶しています。

☞(2)しかし、吉見義明氏の『従軍慰安婦』(岩波新書)、WEBサイト≪女たちの戦争と平和資料館≫に収録された資料、また当事者である元朝日新聞記者の植村隆氏のYouTubeに多数収められた動画会見などを見るかぎり、当時の陸軍兵士の慰安のため日本や朝鮮半島をはじめ、フィリピンなどアジア諸国の女性たちが<組織的>に動員あるいは人身売買されたという<事実>まで消し去ることができるのだろうか、と考えてしまいます。
☞<参考>wam アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(東京都新宿区)

☞(3)「慰安婦問題」論争のポイントは、慰安婦の大量動員があったことは<事実>なわけですから、その動員が果たして当時の軍部による組織的関与、強制連行だったのか、それとも人身売買の業者の募集に応じて身売りした能動的な行為だったのか、という点です。
 
それらは本来、文書記録などの<事実>によって検証されるべきなのですが、終戦時に政府によって機密書類がすべて焼却されてしまった(半藤一利著『日本のいちばん長い日』にくわしい)現在、残された記録と証言(オーラル・ヒストリー)を踏まえつつ、最終的には、戦前の大日本帝国政府および多くの国に侵略した軍部をどう評価するかという<戦後の立脚点>を問い返すことに直結すると思います。
 
今また、「アンネ・フランクはフィクション」だとか「アウシュビッツは存在しなかった」などと平然と言ってのける風潮が頭をもたげている時代、トランプ流の勇ましい発言には、よくよく注意したいものです。

プロ野球ドラフト速報のお粗末

でも、心の中で朝日新聞にエールを送っていたとしても、大好きなプロ野球のドラフト速報記事にも、お粗末な誤字があったのはホントに残念でした。
 
記事は小さな文字なので読みづらいかもしれませんが、パ・リーグ楽天1位の荘司康誠投手のところに、ご注目ください。


(2022年10月21日付朝日新聞=プロ野球ドラフト会議・12球団指名選手一覧より)

すると、翌日の朝日新聞スポーツ欄に、次のような<訂正>記事が載り、この誤りは盲点だったな、と気づかされました。

(2022年10月22日付朝日新聞スポーツ欄の訂正記事)

本来、「球速」と書くべきところを「急速」と書くなんて……こんな単純なミスに誰も気づかないなんて……。
これで、いよいよ<朝日新聞>の現場はたるんでいるなと思ったのです。
 
柴又の寅さんなら、「高給取りのえらい学士様がよ、雁首ならべて、何をボサッとしてやがんでぇ」とタンカを切る場面ではないか。
 
でも、もっと深刻な記事の誤りが、そのあと見つかり、朝日は<訂正とおわび>を出す羽目になりました。
 
なにせ、社員記者が書いた記事ではなく、著名人が寄稿した文章を編集する際に起きたことなのですから、事はホントに“深刻”です。
 
(次回につづく)

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