見出し画像

「本を出してる人」は何を大切にしているか要点を5つにまとめました

いつもお世話になっております。松本でございます。

19年10月に、人生で初めて2冊同時刊行を経験させて頂きました。1冊でも苦しいのですが、2冊同時は「苦しい」を超過して「死ぬかもしれん」と思いました。でも良い経験でございました。



今の心境は書き終えてホッとした気持ち半分、ここから書籍を売って行かなければならないという気負い半分、といったところでしょうか。

「なぜ「つい買ってしまう」のか?」については新書大賞をマジで狙っています。それぐらい、多くの人の手に取って欲しいと思っています。

普段は、読者の皆さんが読みたいであろう内容を書くスタイルですが、たまには自分が読みたいことを書こうと思います。

それは「本を出している人は何を大切にしているか」についてです。

定期的に書籍を刊行させて頂く経験をしていると、情報の非対称性があると痛感します。

「本を出すうえでこれは大事だと思っている」「本を出すにあたってこれだけは心掛けている」経験や気付きが、多くの人からすると「へぇ~そうなんだ!」と思われるようです。

情報の非対称性は金になるってリクルートが言ってた、とマックで女子高生が言ってました。知らんけど。

そこで、よく頂く質問に答える形で「大切にしていること」についてお話させて頂こうと思います。


Q1.なぜ、そんなに依頼が来るのですか?

A1-1.文章を書き続けているからだと思います。

現在、ITメディア日経ビジネス電子版AgendaNoteで連載を持っています。本当に良い編集者さんに巡り会えたおかげで、ある程度の反響もありますし、おかげさまで連載は順調です。

そのおかげもあって「この人はちゃんと文章が書ける人だ」と広まっているのではないかと推察します。

それだけでなく、noteで定期的に文章を書いているのも大きいと個人的には思っています。

私にとってnoteは「見本市」のようなもので「こういう内容の文章を書けます」というアピールになります。ここで掲載した文章をキッカケに、話が弾んだケースもあります。

以前、オウンドメディアを運営していた際、Shannon lab株式会社の田中さんとの1万字対談記事を掲載しました。元媒体は亡くなっているけど、アーカイブされてましたわ。

これが偶然、光文社新書の編集長の目にとまり「この対談で書籍のイメージが掴めた」と言って頂けました。

そうして誕生したのが「誤解だらけの人工知能」です。

「この人は"文章"が書ける人だ」と知ってもらうためには、発信し続けることが大事だと私は思います。残念ながら転職を機にオウンドメディアが無くなってしまったのでnoteに移行している…という感じでしょうか。

吐くほどアウトプットしましょう。文章は書けば書くほど上手くなります。

正直なところ、日経ビジネス電子版は最初あまり反響がありませんでした。ITメディアでも「これ三振したな」と思うぐらい反響を生めなかった回もあります。

それでも次の打席に立つ。その勇気が大事だと思います。

A1-2.締切を守るからです。

当たり前ですが、原稿には締切があります。過去の偉人は締切が過ぎてから書き始めたそうですが、今そんなことやったら余程の人気がない限り、切られて終わりです。締切守ってない自慢はクソほどカッコ悪いです。あれを大々的に言ってしまう人の気が知れない。

MdNさん、光文社さん、それぞれ2冊目を出させて頂いています。いわずもがな締切を守ったからこそ「また次の本出しませんか?」という条件の1つをクリアしたんだと思います。

ちなみに、私が「締切」に拘るのは理由があります。締切までに原稿を書かないといけないというプレッシャーが、良い発想力を産むからです。締め切りが無ければ間違いなく私は何本かの原稿を落としているでしょう。

言い換えれば、締切を破ってまで書かなければならない原稿なんて無い…という信念のようなものが必要だと思います。

A1-3.断らないからです。

今まで書籍化のオファーをいただいて残念ながら断ったのは、ソフトバンククリエイティブと、某右系出版社のみです。

ソフトバンククリエイティブをお断りしたのは自分の実力不足で、今なら書ける自信があります。当時編集者だった○○さーん!見てたら声かけて下さーい!!

仕事が仕事を呼んでくれると私は勝手に思い込んでいます。だから私は仕事を断りません。ちなみに2016年から「グラフをつくる前に読む本」を書き始めてから、本を書く仕事は途切れていません。

ちなみにですが、断らなければどうなるでしょう。

以下のスケジュール表は2018年04月から2019年10月までの大まかな執筆量です。書籍はオレンジ、 WEBはブルーで表現しています。本は寄稿したコンテンツ、回はイベントや講演への登壇です。

スクリーンショット 2019-09-26 23.08.11

この1年半で4冊書いて、ITメディアは38回・日経ビジネは8回寄稿。noteは56回書いて講演は9回。阿呆ですわ。本当に死ぬかと思った。

19年2月〜4月は、MdNさん光文社さんの原稿書いて、ITメディアで取材してnote書いてたんです。

「あれ?まだ余裕あるかな」

と思って、大和書房さんの原稿書いて、日経ビジネス電子版の連載始めたら首と肩が悶死しました。プロ野球選手が「肩の故障」「肘の故障」で1軍登録抹消されますが、あれと一緒。

マッサージに週1で通っていたのですが、どうにも完治せず、最後の最後にファイテンさんに頼りました。1万円したんですが、以下のネックレスを買いました。

マッサージ3回分…かなり迷ったんですが、買って良かったです。肩が楽!首も楽!もっと早く買うべきだった!人生損してた!

まだ、あと1つ連載持てます!いや2つ!! よろしくお願いいたします!


Q2.いつ書いているんですか?

A2-1.土日どちらか、平日は22時〜23時半

嫁がビューティアドバイザーでございまして、土日どちらかは出勤しないといけません。そこで、休日のうち1日は執筆に時間を充てています。

さらに平日は会社に帰って晩飯を食べて犬を散歩させてから、疲れ果てた肉体を1畳しかない執筆部屋という名の納屋に閉じ込めて、ひたすら原稿を書きます。我が家の犬が足元ペロペロ舐めながら。

画像5

1週間のうち完全オフ日は土日のどちらかなのですが、ここ数ヶ月は締切が重なってしまい、嫁が家にいるのに原稿を書いています。嫁も理解をしてくれていて、そこに甘えてしまっています。

家族の協力はめっちゃ重要。嫁の理解なしには、ここまでやれません。なので週1で美味しいもの食べに行きます。

A2-2.たまに会社で

影に隠れて副業という話ではなく、依頼の中には「会社経由」で来るパターンがあります。AgendaNoteさんで連載を持たせて頂いております。

その場合、別にギャラが私に振り込まれるわけでもありませんので、会社で原稿を書きます。

ちなみに大和書房さんの本は「会社経由」の依頼だったので、私にギャラは一銭も入りません。ギャラで奢ってって絶対言うなよ。絶対だぞ!(©ダチョウ倶楽部)

A2-3.ちなみにめっちゃ早筆です

他の人がどうなのかは分かりませんが、私は相当早筆だと思います。1万字なら、だいたい3時間くらいで書けます。

というのも、「文章を書く」という行為を「何について書くか考える」「どのような流れで書くか考える」「実際に書く」の3段階に分けており、実際に1万字を書く段階で、何をどのように書くか決まっているからです。

「どのような流れで書く」かは事前に紙にまとめておきます。例えばこのnote。全体で、だいたい5000字あります。

事前に、紙にこんぐらいまで解像度を上げて書き起こしています。なので、書くだけなら2時間かかっていないと思います。

図1

他には、このnote。なかなかのヒット作でございました。100人以上にお買い上げいただきまして、誠にありがとうございます。

こちらも、事前に構成やらなにやら固めてます。タイトルがどうしても浮かばなくて土壇場で「私たちマーケターは「意味」の世界で戦っている」といたしました。

図2

これは密かな自慢なのですが、ここ数年は編集さんに「コレとコレとコレ、書き直し!」と言われたことがありません。

文章3分割テクニックを生み出したキッカケになったのは「グラフをつくる前に読む本」です。この本はめちゃくちゃ苦戦していて、どうすれば良い文章を書けるかを苦心して、3分割を編み出しました。これは改めて当時の編集さんに感謝しなければなりません。


Q3.なぜそんなにアウトプットできるんですか?

A3-1.インプットしているからです。

さきほど「吐くほどアウトプットしましょう」と表現しました。でも、吐くほどアウトプットできるぐらいインプットしているか考えると、そうでも無いように思います。

重要だと考えているのは、過去のインプットとの繋がりです。

新たなインプットを、今まで35年間生きてきて得たインプットと絡ませて、これまでと違うアウトプットをするよう心がけています。私の中では「アウトプットのレバレッジ法則」と名付けています。

多くの人が「5をアウトプットするために、5をインプットしなきゃ」と考えていると思います。

でも私は「1をインプットしたら、脳内に蓄積された無数のインプットと組み合わせて、5をアウトプットする」と考えます。

私の頭の中には、ドラッカー、グラフ、統計、データサイエンス、デジタル含むマーケティング、様々な粒度も違う知識がいっぱい詰まってます。これらを繋げて吐き出しているだけです。

画像6

そうしてできたアウトプットが、例えばこれ。

もともとは小川貴史さんの書籍だけがインプットでした。この書評を書くにあたって、ただ書くだけじゃ面白く無いよなーと考えて「データドリブン」「インサイト」などを紐付けただけです。

構成のうち「手元にあるデータが全て…ではない」は誤解だらけの人工知能でも言っているし、「私たちはどんな問題を解くのか?考える癖を付ける」はデータサイエンスビジネスをしていて得た気付きです。

「松本はすごい量をアウトプットしているから、すごい量をインプットしているに違いない」

と思われているかもしれませんが、それは勘違いです。量をレバレッジしているだけで、実際はそれほどです。


A3-2.とりあえず机に向かいます。

アイデアを思いつくから書くんじゃない。書くからアイデアを思いつくんです。知らんけど。とにかく机の前に座る。形から入ります。書かないといけない場面に追い込まれたら、なんか出ると思っているタイプです。

あと、ネタは思い付いたら直ぐ使います。温めません。このネタはあれで使おう〜なんて温めても、どうせ使わないんです。腐っちゃう。

ネタはとにかく直ぐコンテンツ化して使い切る。脳内が「次のネタが無いやばい」くらいの状態じゃないと、新しいネタ出ないです。

ただし、むやみやたらに新しいネタに走るのは良くないです。例えば私が旅行記、エッセイ、食レポを書いても意味がありません。恐らくユーザーが求めているのは、それじゃないでしょう。

私の持論ですが、自分の軸となるようなネタから離れても、そんなにバズらないし(知らない内容だし)、何より文章力を高められない。「高める」という表現が錯覚を招くのですが、文章力は高めているようで実際には深く掘っています。穴を掘り続けるイメージを持っています。


Q4.なぜそんなに本を出すんですか?

A4.楽しいからです。

今まで紙の書籍を10冊出しています。これまで増刷した経験は2回。2勝8敗です。もっとも、書籍単体で赤字か黒字かで考えたら7勝3敗ではないか、とも思ってます

本を出すって楽しいです。自分の知識が体系化されて、整理される機会なんてそんなに無いですから。

でも、売れなければ地獄です。苦労して生んだ子供が、数週間店頭に並んだだけで後は跡形もなく消え去るのです。自分自身が否定されたような、心がズタズタな気持ちになります。

画像7

だから、売れなきゃいけないんです。「売れなかったものは作品ではなくゴミ」って鳥嶋和彦さんも言ってた。

「売れていないけど良い本」なんて言い方がありますが、私はそれは違うと思っています。売れている本が良いんです。

内容が良いのに売れていないなら、それは内容が世間に伝わっていないか、良いと感じる層が圧倒的に少ないか、とにかくマーケティングが圧倒的に不足していると思うのです。とくに出版社の「マーケティング」は実質無いに等しく、「セリング」があるだけ…という感覚があります。

この企画とか。夏の牧場に素足で訪れて牛のウンコを踏んだ並に「そりゃそうなるよ」案件です。考えうる限り最悪を詰め合わせた企画がなぜ通ったのかが逆に分からない。百田尚樹さんという高度に政治案件化した存在を、なぜネット上の企画とした…。

どこかの出版者様、私をマーケティング担当で雇ってみません? 一個人の才能に依存するのではなく、組織としてマーケティングフルネスな状況にしませんか?

日本で一番、書籍のマーケティングとして成功しているのは幻冬舎の箕輪さんでしょう。日本中の編集者が箕輪さんを嫌いでも、無視はできない。コミュニティに月1回書籍を買って貰う形で最低部数を確保し、かつ初動数字を大きく伸ばすというマーケティングは「上手い」と思うのです。いわゆる「AKB商法」を上手く書籍マーケティングに横展開しています。

が、箕輪さん自体は否定されているご様子。

マーケターこそ知ってほしい!「バズを生む男」箕輪厚介が語る「熱狂的なムーブメント」の起こし方
https://marketingnative.jp/sp02/

ちなみに「AKB商法」は、古くは「幸福の科学商法」でもあり、「キリスト教商法」でもあります。キリスト教を広めるために「聖書」という書籍を編み出しましたのであって、聖書を売るために聖書を作ったのではない。だから、そんなに新しい手法でも珍しい手法でもないし、別に"汚れた手法"でも無いので正々堂々としたら良いのに…。

箕輪さんもまた、別に本を売ろうと思ってませんよね。本を書いている人を売るために、手段として本を使っている。結果的に本が売れているだけで。

「AIとBIはいかに人間を変えるのか」とか「己を、奮い立たせる言葉」とか全然面白くなかった。逆に「HELLO,DESIGN」はめちゃくちゃ面白かった。でもそれぞれ、他のシリーズに比べたらそんなに売れていない。それは人で推そうとしている箕輪さんの弱点なのかしら、とも思ったりします。

今の時代、人々の興味関心の軸が「共感」に移ってきています。「共感」を支える1つは「人柄」だと思っています。その意味において、本でなく人で推そうとする箕輪さんは正しいと私は思っています。

が、人柄が見えるとなると、対象となる人物が限られてきて、結果書籍界隈がすんげー面白くなくなるのではないか、とも思います。


Q5.どうしたら売れる本ができますか?

A5.こっちが知りたい。

それが分かったら苦労しないんですが、なんとなく「そういうことなのかなあ?」と思うようになってきています。当たっているかどうかは不明。

適用できる範囲は推理小説やSF小説など情緒性の高いカテゴリではなく、ビジネスや自己啓発など機能性の高いカテゴリに限られるかもしれません。

それに気付いたキッカケは、飯高さんが刊行された「僕らはSNSでものを買う」を友人に勧めたときです。

「SNSマーケティング」について書かれたこの本は控えめに言っても名著。ただ、SNSマーケティングをやっている友人に「読んだ?」と聞いたところ買ってすらいませんでした。その理由を聞いたところ、

「ここに書かれた内容は知っているから」

と答えてくれました。その瞬間、「あっ、そうか」と思ったのです。

「この本は"SNSマーケティングをやっている人が読む本"ではない。"SNSマーケティングをやっている人が、「私の仕事」を理解してもらうために勧める本"なんだ」

と理解しました。SNSマーケやっている人全体が「そうそう!私の仕事をわかってくれている!」と共感して宣伝してくれるから、そりゃ売れるよな、と思ったんです。

どんな書籍のジャンルにも「理解の階段」があると思っています。階段を登れば登るほど、読者対象は狭くなります。

例えばAI本であれば以下のような感じでしょうか。

図2

まず第1段階に「そのジャンルの入門編ではなく、そのジャンルで仕事している人が、そのジャンルを知らない人に薦める本」があると考えています。

第2段階から「そのジャンルを知りたい人の期待に応える本」になるでしょう。いわば「あなたの知らない内容が書かれた本」です。

階段が高まるほど読者層は狭まります。つまり、売れる確率は低くなります。だから階段はなるべく降りて書いた方が良い。でも「その界隈では皆知っていること(≠実践できていること)」を整理して纏めて発信することを、意外と皆できないんです。

「えっ、そんなこと、皆知ってますよね?」

と思うからでしょう。それは、その界隈であって、大勢にとっては知らない情報なんですけどね。

ただし、この法則は「情緒性」が絡むと崩壊します。例えばピケティの「21世紀の資本」は、第5階段の本なのに、バブル経済なみに盛り上がって一瞬で消えました。「格差社会を皆で盛り上がって議論できて、自分もコメンテーターになった気分」みたいな情緒価値が絡んだからでしょう。

「これからのデータサイエンスビジネス」は、明らかに第1階段を狙いにいった本であり、おかげさまでシリーズ最高の初速だったそうです。

ちなみに「なぜ「つい買ってしまう」のか?」はマーケティングに携わる人が勧めたいと思う第1階段の本、「アイデア量産の思考法」は第2階段の本だと勝手に考えております。

少なくともプロモーションに限らないマーケティング業務に携わっている人であれば、「なぜ「つい買ってしまう」のか?」を読んで「そうそう、全てに同意しないけどだいたいそう!だから皆まずこの本読んでよ!」と思ってくれるはずです。


最後に一言

読みたいことを書くって、大変だ。それはそれで。

(胴体着陸みたいなオチですいません)


改めて、纏めます。

Q1.なぜ、そんなに依頼が来るのですか?

文章を書き続けているから。締切を守るから。断らないから。

Q2.いつ書いているんですか

土日どちらか、平日は22時〜23時半。たまに会社でも。

Q3.なぜそんなにアウトプットできるんですか?

インプットしているから。とりあえず机に向かいましょう。

Q4.なぜそんなに本を出すんですか?

楽しいからです。

Q5.どうしたら売れる本ができますか?

こっちが知りたい。





1本書くのに、だいたい3〜5営業日くらいかかっています。良かったら缶コーヒー1本のサポートをお願いします。