「食品ロスは年間643万トン」の計算方法が曖昧過ぎるというツッコミを入れる

さっそく使ってみました、noteに投稿する機能。今回は、以下の記事に関して簡単に調べてみました。

食品ロス年間643万トンの不思議

まだ食べられるのに捨ててしまう食品が年間643万トン。

その数字は、国連世界食糧計画による食糧援助量(約320万トン)の2倍にもなると言われると、おいおい日本はとんでもねぇ国だなと思います。

一方で、食品ロスとは言わば「食べられるのに捨てられたゴミ」ですから、誰がいつどのようにして643万トンも計測したんだ!と突っ込まざるをえません。

私は生ゴミと燃えるゴミを一緒に捨てる派なので、ごみ処理場の方々がゴミ袋を開けて生ゴミと燃えるゴミを分けているのだとしたら、結構ゾッとしてしまうタイプです。ふと「戦時中、東条英機が民家のゴミ箱をあさっていた話」を思い出してしまいます。

そこで、食品ロス年間643万トンの算出方法を調べてみました。

結論だけまず先に書いておきます。

・家庭から出る食品ロスの算出方法が相当脆い。実際は289万トンも無いのではないか?(と言われても仕方がないと感じる)
・事業所から出る食品ロスも、推計に推計を重ねる。特に、可食・不可食の定義づけを現場に求めているので、それは酷だ。
・事業所から見た「食べられない食品」が、私たち一般人から見たら「食べられる食品」になっている可能性がある。食品ロスの実際が立場によって違うのは大問題。


概要(食品ロスの背景など)

食品ロスの発生源は、食品系事業所(=事業系廃棄物)と家庭の食卓(家庭形廃棄物)です。つまり事業所(企業)と家庭が主になります。

平成27年度推計によると、事業所からは357万トン(規格外品、返品、売れ残り、食べ残し)、家庭からは289万トン(食べ残し、過剰除去、直接廃棄)も出ているようです。

食品ロスの概要や詳細なデータについては、消費者庁消費者政策課の食品ロス削減関係参考資料が参考になります。

この資料の7ページ目に、食品ロスの推計方法が記載されています。

事業系廃棄物由来
1.農林水産省が、食品リサイクル法に基づき行っている定期報告及び統計調査の結果により、食品産業全体の食品廃棄物等の年間発生量を試算。
2.定期報告者へのアンケート調査により得られた食品廃棄物等の可食部割合を、1で試算された食品廃棄物等の年間発生量に乗じることで可食部(食品ロス)の量を推計。
家庭系廃棄物由来
1.環境省が毎年、市区町村を対象に行っている食品廃棄物、食品ロスの発生状況のアンケート結果に基づき、家庭から発生する食品ロス量を把握。
2.食品ロスの発生量を把握していない市区町村については、1の結果を基に算出した。食品ロス量の食品廃棄物に対する割合の平均を食品廃棄物量に乗じて食品ロス量を推計。

事業所(企業)系食品ロスについては、食品廃棄物等のうち可食部割合を試算することで推計。家庭系食品ロスについては、食品ロス量を把握を把握している市区町村の結果から全体に当てはめて推計していると分かります。

この時点で、約650万トンと言われる食品ロスの数字が、実態ではなく概念で、それ以上かもしれないし、それ以下かもしれないと分かります。

もう少し見てみましょう。


家庭由来の食品ロスの算出方法

詳細な算出方法は、環境庁が「食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査報告書」として、まとめています。今回は平成29年度版を参照します。

どうでもいいですが、noteはたまにタイトル取得できませんね。単に未設定だからでしょうか。せめてタイトル未設定なら編集できるようにして欲しいところ。ダサいな~と思っちゃいます。

資料を見ると、

家庭から発生した食品廃棄物・食品ロスの発生量及び処理状況、食品廃棄物・食品ロスの発生抑制や再生利用に関する取組の実施状況等を把握するため、全市区町村に対してアンケート調査を実施

とあり、1741ある市区町村のうち1710から回答があったと分かります。

その回答結果から、以下のように推計しているようです。

まず、「食品ロスの発生量を把握・推計している」と回答した市区町村の結果を元に食品廃棄物に占める直接廃棄・箇条除去・食べ残しの割合の「平均値」を算出するです(平均値から2σ以上離れた値を外れ値として対象外としているようです)。

その結果が以下の通り。

この結果を踏まえて、全体に適用します。

うーん…食品廃棄物に占める食品ロス(箇条除去)=10.7%の元データが、たった3市区町村ってさすがに少な過ぎやしませんか。

1710市区町村が母集団だとして、標本(n=3)の食品ロス(箇条除去)比率が10.7%だったとして、本当に母集団の食品ロス(箇条除去)比率も10.7%でしょうか? いや、違う気がする…。

それに、直接廃棄している69市区町村についても、大都市なのか田舎なのか不明なので、ちょっと一概に言えない気がするんです。


事業所由来の食品ロスの算出方法

詳細な算出方法は、農林水産省が「食品産業リサイクル状況等調査委託事業(食品関連事業者における食品廃棄物等の可食部・不可食部の量の把握等調査)報告書」として、まとめています。今回は平成29年度版を参照します。

資料を見ると、

我が国の食品関連事業者全体から発生する食品ロス(食品廃棄物等のうち可食部)の量を推計するため、まず、食品リサイクル法に基づく定期報告の平成 27 年度実績を提出した事業者に対しアンケート調査を実施した。次に、その結果をもちいて食品産業全体から発生する食品ロスの拡大推計をおこなった。

とあり、4780ある事業者のうち2200から回答があったと分かります。その回答結果から、75業種単位で可食部・不可食部の割合を算出し、4780事業者の定期報告された食品廃棄物にかけ合わせて算出しています。

こちらは回答者の元データ。

この結果を元に、まずは4780ある事業者の食品廃棄物で推計。

食品製造業は比較的可食部が少ないけど、卸・小売り・外食はだいたい半分が可食部分というのは、目を見張りますね。

こうして得られた回答結果を、以下のように全体推計していきます。

すると、可食部分(食べられる=食品ロス)の年間発生量がおよそ約357万トンだと分かります。なるほど、この内容だったら多少なりとも「確からしさ」はありますね。

一方で、どのようにして「食品ロス」の量を計測しているかと言えば、精緻に図っている場合もあれば、勘の場合もあるので、注意が必要です。

特に外食産業は割合設定(経験上、●割程度が可食部と推計されるため、食品廃棄物等の発生量に割合をかけた等)が過半数を占めており、本当はどうなの?とは思います。

特に、何をもって可食で不可食とするかは定義づけが必要かもしれません。以下のような意見も出ているようです。

つまり会社、状況によって「可食「不可食」の定義は変わるし、誰が食べるかによっても変わるでしょう、という指摘はおっしゃる通りですよね。

その判断を企業サイドにゆだねてしまうと、いかようにも数字は作れてしまいます。

ちなみに、今回紹介している資料はよくできていて、「食品廃棄物等として発生する可食部の量の削減が困難なものの回答内訳」を読むと、卸・小売りは発注問題、外食は食べ残しが挙げられています。

言い換えると、ここに企業の「不」が隠れているので、起業したい人は発注ロス解消、食べ残し解消のためのビジネスモデルを開発すれば爆発的に売れるであろうと推測されます。

発注ロス問題と言えば、TOC信者の私からすれば「意外と楽勝じゃね?」と思ったりするんですがどうでしょうか。

  

食品ロス問題、今後の課題

今回の調査で色々気付いた点を最後に記します。

家庭の食卓から出る食品ロスについては、統計予算の拡張が求められるでしょう。さすがにこのデータで300万トン近いと言われても、頭にクエスチョンが浮かびます。

事業所から出る食品ロスについては、統計手法よりも「食べられる」「食べられない」の定義づけが重要かもしれません。何ももって食品ロスと言うのか。

ニュースでは、消費期限切れの食材が捨てられるシーンが映る事例を多く見受けますが、事業所からすればこれらは「食べられない」で一致します。すなわち不可食です。

したがって、消費期限切れ食材を何とか改善したとしても、食品ロスの数字は微動だにしません。

この辺のミスマッチを早急に解消しないと、良いように数字の定義づけがなされて、食品ロス削減に成功しました!と言われかねません。

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松本健太郎

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