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PSMの勝利が鹿島に示したものについて

昨日行われた茨城サッカーフェスティバル。
鹿島アントラーズは3年ぶりに水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチを1-0勝利した。

今シーズンから就任したポポヴィッチ監督の元での公式戦初勝利であり、ここ数年停滞していた鹿島の新たな船出となった試合と言えるだろう。

僭越ながらここまでのポポヴィッチ鹿島について自分なりの見解を示したいと思う。

鹿島の勝利がもたらした最初の到達点

まず勝利したということの意味は大きい。
ここまでポポヴィッチ監督になって以来、甲府を相手に惜敗したものの、今回を含め残りの三試合では相手を上回っている。

しかし、このPSMに至るまでポポヴィッチ監督の台所事情は正直最悪だった。

主軸の一人佐野海舟が日本代表に招集されていた中で
①初戦で柴崎岳を欠いてから
②鈴木優磨、植田、関川と怪我で欠き
③鹿島にとって最適ともいえる補強だったチャルシッチがアクシデントで契約合意できない

というアクシデントがあった。

それでもクラブは、ガタガタに崩れることなく、ここ数年からみれば上出来の内容でなんとかこの時期を3勝1敗で乗りきった。

その要因はシーズンが始まってから解ることも多々あるだろうが現在の時点で
①2種登録選手がプロに通用する嬉しい誤算
②監督の解りやすい「ブラボー(良い)」「ナンデ(悪い)」表現で要求が浸透しやすく選手の迷いが減少
③良い意味で選手を色眼鏡で判断せず横一線での評価が下され適材適所に振り分けられている
④上記で選手のモチベーションを感じる

④は記事や選手のコメントから感じ取った私の主観の域をこえないが、概ねこのような要因が考えられる。

ポポヴィッチ監督の要望である
①スピーディーに
②連動してコンビネーションで崩し
③ゴールに迫る回数を増やすこと

は現段階では如実に実行されていることが誰の目に見ても明らかで、新生鹿島の完成の未来を現実的に思える。

内容にはまだまだ問題、課題を感じる部分は多々あるのは承知のところだが
この短い期間で明確な目的、意図を指示し、勝利できる段階まで落としこめた。まずまずのスタートといって良いのではないか。

このPSMまでに最初の到達点として
①ポポヴィッチがどのようなサッカーをしたいのかを表現し達成
②そのサッカーで3勝1敗の成績

と2つの点を達成できたことは凄まじい進歩、収穫だと思う。
スタイルの確立は迷いを消し、長いシーズン必ず訪れる不調の時に、戻るべき場所を得ることになる。それを獲得できただけで大きな強みなのである。

ポポヴィッチ監督の起用方、そのスキルと可能性

ポポヴィッチ監督になってから明確に変化した戦術に加えて、もうひとつ目を見張るのが選手の器用方法である。

在籍期間の長さ、キャリア、既存のポジション、あらゆることが良い意味で“滅茶苦茶”である。
まず、サイドバックのスタメンに濃野くんが抜擢された。昨年までのスタメンだった広瀬が移籍し、本来であればそこを埋めるのは須貝。
プロ戦績がまだない濃野くんはその須貝の後ろで控えて、徐々に先発器用を高めるのが定石だが、いきなりの抜擢。

勿論OBの内田篤人はサイドバックで新卒即スタメンを果たしているし、他のクラブでも決して珍しいことではないが、そうした年功序列をはからない実力主義の攻めた采配ができる監督であることの証左である。

更にスポーツ新聞、各種メディアも大いに沸いた「ボランチ知念」
元々柴崎岳が初戦で怪我をし、突貫工事的に起用されたらしいが、本来ここも船橋や名古といったいわゆる本職が流動的に起用されるのが本筋だがポポヴィッチ監督はストライカーとしてプロキャリアを積んでいた知念を採用。
これがピタリと的中。

一部で本職を起用しないことに強い疑念を抱く声もあるようだが私はハマっている以上、本職を使わないことに意義はない。
これまで本職の選手は実戦でも練習でもそのチャンスを与えられてきた筈だ。
ポポヴィッチ監督はその上で知念をボランチとして起用し、現にうまく行っている。
その選手のポテンシャルを見抜き、伸ばすことも監督の手腕のひとつ。
このスキルの高さに、ポポヴィッチ監督への期待は大きく高まった。
今後も加入選手や、戦術の浸透に併せてポポヴィッチの目は新たな可能性を見抜き、引き出すかも知れない。

突きつけられた課題

ここまでポジティブな話が続く新生鹿島アントラーズだが、当然課題も少なくない。

主力を欠いて残した成績は誇れるものだが
①怪我人がどこまで今後戦力として計算できるか未知数
②新人はあくまでも可能性でありまだ不充分
③佐野をはじめいつでも海外移籍のリスクはあり

実際に主要クラブより戦力が不足しているのは否めない。

それに伴い、今回の試合で露呈したのは
スタメンと控えでは後者が明らかに戦力が落ちるという昨年からの課題はなにも解決されていないという点である。

本来であればスタメンも戦力が落ちてるので、監督の手腕でなんとか戦えているという見方もできる。

この改善は
①戦術の浸透
②選手自身の成長
③補強

というパターンがかんがえられる。

①はどちらにしても今後も取り組んでいく部分であり、必須の条件であるが
②も重要である。特に、関川不在でいよいよ試合に出場せざるを得なくなった津久井くんが、クリーンシートを成し遂げたのは実に喜ばしいことであるが今後もこのようなことは③の進捗によっては度々起こりうる。

補強は経済状況、他クラブとの兼ね合いもあり、上手く行かないことも想定できる。
ここ数年の鹿島は常々補強よりも育成に力を入れると発言していた経緯もあるが、若手が奮起しスタメン争いを激化させることがクラブを押し上げる原動力になるのである。いまの鹿島にはそれが強く要求される。

また得点力不足は健在である。
昨年の得点シーンの多くは樋口と鈴木優磨を中心に回っていた。
樋口の得点はセットプレーが主となり
鈴木優磨は前線プレスからのボール奪取、セットプレーが多く、樋口との関連も多かった。

逆にこの二人を除いた得点は極めて少ない印象で、鈴木優磨がピッチを退くと途端に得点の匂いがしなくなるのが昨年までの鹿島アントラーズだった。

今年はそこに濃野→藤井ラインやパレジの積極性、チャヴリッチの存在が加わり新たな得点の芽を感じさせるがまだ開花には至っていない。

ここが改善されれば鹿島にもいよいよタイトル奪還の芽がでて来ることだろう。

以上、現段階の鹿島アントラーズに対する私の見解である。
多々問題を抱えるクラブ状況であるが、想定より悲観する段階ではないというのが正直なところで、新たなシーズンに大いに期待している。


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