飲食店

なぜ飲食店ではダイナミックプライシングを導入しづらいのかを考えてみる

こんにちは、カワナミです。日々出される田端大学のお題、マーケ脳トレでこんなテーマが投げかけられました。

ホテルや航空券では、もはや当たり前になってきた、需給に合わせて値段を上下させるダイナミックプライシング。レストランではどうか?という話。
皆さん、自分がレストランオーナーだとして、どうして、混雑状況に応じて、値段を変えないのでしょうか?

なんでだろう?と考え始めたら眠れなくなってきたので寝る前に整理がてら考えをまとめてからぐっすり眠りたい思います。※1/30 0:30現在
飾り気なしの短い文章となりますがご容赦くださいませ。

目次
1.ダイナミックプライシングで得たいことはなんだっけ?
2.導入しているサービスに共通する点と構造
3.飲食店に導入しづらい3つのポイント
4.飲食店でダイナミックプライシングが向いているお店とは?

1.ダイナミックプライシングで得たいことはなんだっけ?

まずはじめに、需給に応じて価格を上下する、つまりコントロールするダイナミックプライシングが何を得たいかを考えねばなりません。
私が考えるに得たいものは単純に「利益の最大化」です。高くても払ってくれる時に価格を上げ、設定した定価では売れないときには価格を下げる。色んなモノを省いてものすごくシンプルに考えると

売上(客数×平均単価)ーコスト=利益

となるので、キャパシティが埋まるまでなるべく単価を高くコントロールするというのがダイナミックプライシングのキモになる訳です。

そう考えると、飲食店でダイナミックプライシングが導入されていないのは、この構造のどこかのコントロールが難しい(コントロールしようとすると逆に利益を悪化させる恐れがある)のではないかと考えました。
そこでこの「コントロール」が効きやすいサービスなのかが、導入のポイントになりそうだと考え既存サービスから共通点を考えてみることにします。

2.導入しているサービスに共通する3つの点

ダイナミックプライシングを導入しているサービスに(飛行機・ホテル等)に共通すると考えた点は以下の3つ。

・”予約”というプロセスによりサービスを受けるはるか前から購入できる
・単価が高く検討に時間をかける
・代替手段が少なくミスるとダメージが大きい
(枠やスケジュールの制約)

これって、簡単に言えば価格のコントロールをできる猶予を長く持っているということだということです。猶予が長く持てるということは、高い金額で出してみて、キャパが埋まればそれで良し、もし埋まらない場合は段階的に価格を下げて徐々に高い単価で埋めていくこともできると。
もちろん価格を下げると付け替えが起こる(予約済みの高いプランから安いプランに乗り換える)ので工夫が必要ですが、毎年設定した価格の記録が溜まっていくので予想も立て易くなりロスが年々減らしていけたりします。(だから早割が適用外の期間が存在したりしますよね)

また飛行機なんかは当日にいって、空いてなかったら目的地にたどり着けないとか、ホテルは部屋が空いてないとマンガ喫茶やファミレスで徹夜とか、なにかしらのダメージを食らうのでどうしても前々から検討・予約をせざるを得ない、代替が聞きにくくダメージがでかい。できるなら悲惨な状況を避けたいですよね。
ところが飲食になるとコンビニがどこでもあったり、最悪一食くらいなら「食べない」ということができるため、予約の必然性が上記のサービスほど生まれなかったりするのが苦しいポイントかなぁと思いました。

3.飲食店に導入しづらい4つのポイント

上記の共通点を元に考えると3つは裏返しで、さらにプラス1つ、飲食店に導入しづらいポイントがあると考えました。

・予約も一定数存在するが、当日来店の割合が多い(特にランチ)
・単価が低く意思決定が直前(ぶらっと歩いて居てとか)
・代替手段が多くミスしてもダメージが小さい
・コスト部分に当たる食材は傷む・腐るものなので持ち越しが効きにくい

これは先程とは逆で、「価格を高くしてみてだめだったら下げる」という価格のコントロールの猶予がほとんど与えられておらず、一発勝負のような戦いになってしまうということになります。
その一発勝負も代替手段が多い(コンビニ、家飯、他の店)ため勝ち目が濃いとはいい切れず・・・。天才的な勝負感を持っていたら別なのでしょうがそんなにうまい話があるわけでもない。

またさらに、コントロールに失敗して集客が下がると多めに用意していた食材が傷んだり腐ったりして持ち越しすることができない。つまりコスト増加のリスクを飲み込む必要もあるというのが難点です。
最初にお伝えした通りダイナミックプライシングが「利益の最大化」を目的にしたとすると

売上(客数(↓)×平均単価)ーコスト(↑)=利益(↓)

利益を下げる要因が増えてしまうことが飲食店がダイナミックプライシングを導入しづらい原因ではないかという結論に至りました。
そう考えると単価をある程度の幅で固定し、集客の見立てをつけやすくして客数・単価の平準化を図るほうが結果としてコストもコントロールしやすいということが起きているのではというのが個人的な意見です。
ランチなんかだと、商材が多い(選択肢が多い)ので一つ一つ価格をイジるのも管理コストがかかりすぎたり、価格の上下が激しいと予想がつかないのでめんどくさくなってリピーターにならないという損失もありますよね。

余談ですが「日替わり定食」なんかはプライシングは変えないけど、コスト部分をうまく変えて利益調整をすること(人の入りが悪いと予想できる日はコストを上げて見栄えの良くして集客優先、入りの良いと予想できる日はコストを下げるて利益優先など)ができるので上手く使えたら面白そうです。

4.飲食店でダイナミックプライシングが向いているお店とは

今までのポイントを踏まえると、完全予約制・コースのみの高級店が価格コントロールをしやすい飲食店ではないでしょうか?

価格設定も同じメニューで価格を変えるのではなくて、代替が効かない日。例えばバレンタインやクリスマス、正月といった需要の高まる日程では、「~○月○日まではイベント特別コースのみの予約受付とします」と高単価でスタートをする。
空き枠が出た場合は、グレードの下がるライトなコースを受けつける。(特別な日なので特別コースを頼んだ人が付け替えるリスクが下がるのでは?)いわゆる安いコースを予約した人が「ラッキー」と思うのではなくて、「あぁ、本当は特別コースが良かったのに。。。」と思う仕立てを作るのが良いのではないかと思います。早めに予約を固められれば食材の仕入れ見立ても必要な分だけで済むのでコストも安定しますしね。
もちろん、これで成り立つためには相当の人気店ではないと行けないので簡単ではないのですが、「絶対に失敗したくない時に使う店」ということを言えるかどうかが重要だと思いました。

最後に

自分の立場になって考えてみると、飲食店の決定って「どんなものが食べたいか」よりも「どれくらいの予算で探すか」の制約が先に来ていることも多いなぁと思います。
価格の調整幅を大きくするとそもそもの検討にかすりもしないということを考えるとプライシングの安定性が優先され、飲食店の方々がダイナミックプライシング踏み出しにくいのもわかると感じたテーマでした。

以上、長々とした文章になりましたが、「なぜ飲食店ではダイナミックプライシングを導入しづらいか考えてみる」でした。
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川波 佑吉(twitter @ykch_


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