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辞書は紙が良い

NHKのドラマ「舟を編む」が楽しい。
中型辞書と言えば、とうぜん『広辞苑』。意味を調べると言うよりも、辞書を開いたときの偶然性が面白い。ドラマの中では「セレンディピティ(Serendipity)」と表現していた。そう、その偶然思いもしなかった宝物を得る、それが『広辞苑』などの中型辞書の面白さだ。

記事をアップしてから、「悠々自適」という言葉が気になった。

ゆうゆう【悠悠】2988頁
①はるかに限りないさま。悠遠。悠久。②ゆっくりと落ち着いているさま。③十分に余裕のあるさま。
ゆうゆう【幽幽】
奥深いさま。暗いさま。
ゆうゆう【融融】
融和して楽しそうなさま。のどかなさま。
ゆうゆう【優遊】
暇があってのんびりしているさま。思いきりの悪いさま。決断のにぶいさま。
ゆうゆうふだん【優遊不断】
ぐずぐずして、決断力に乏しいこと。
ゆうゆう【優優】
①しとやかでやわらいださま。②のびやかなさま。ゆっくりしたさま。
ゆうゆうし【優優し】[形シク]
やさしくみやびやかである。すぐれている。
ゆうゆうじてき【悠々自適】
俗世を離れ、自分の欲するままに心静かに暮らすこと。

広辞苑 題七版

「ゆうゆう」は漢字の連続だが、中国語では無いモノもある。和語に漢字を当てる事により、より和語の持つ意味を拡げたようで驚いた。

じてき【自適】1313頁
何物にも束縛されず心のままに楽しむこと。
してき【史的】
歴史に関するさま。歴史的。
してき【四滴】
茶道で、水滴・油滴・弦付(つるつき)・手瓶の四種も薄茶器の総称。四つ茶器。
してき【四敵】
四方の敵。
してき【私的】
個人に関すること。おおやけでないさま。プライベート。
してき【指摘】
問題となる事柄を取り出して示すこと。
してき【詩的】
詩の趣があるさま。詩のように美しいさま。

広辞苑 題七版

これなどは、和語と漢字の造語のようで面白い。

このように次から次へと読み進むと、日本語は44万語という、世界で最も多くの単語を持つといういうのも得心できる。ひらがなカタカナ漢字を組み合わせ、言葉の持つ意味を拡げている。さらに名詞に「する」を付けて、「ご飯する」「ラーメンする」「温泉する」などいう新語を造って語数を増やし続けてる。しかも語尾を上げるか下げるかで、「~する」という動詞の働きが、命令になったり確認になったり、自分自身へ向けた言葉にもなる。

中型辞書は広辞苑で25万語の収録、なので語釈が簡潔で古典からの引用もあり、あらためて日本語の深さを感じる。なによりも世界で唯一主語が無くても通じる言葉だそうだ。引用されてる古典を読むと、あからさまに主語や相手を指すような人称代名詞は少ない。

日本語のある意味「あいまい」さは、中型辞書を意味拡げていくことで、「ヒューリスティック」という、何というのか、簡略化したモノを紡ぎ合わせて、また新しいモノを生み出す、そういう可能性を秘めているようにも感じる。

だから辞書は紙でないとダメなのだ。


ドラマの中で、玄武書房の立て直しを図る社長が、これからは紙ではない、デジタルだ、という事を言っていた。

玄武書房の『大渡海』に比べ、『広辞苑』に関しては既に40年近い前からデジタル化されている。冒頭の写真は30年前に購入した物で、MD(ミニディスク:1990年Sony)の『広辞苑』だ。それ以前にも『広辞苑』電子辞書があった。現在は『広辞苑』他300種もの辞書類が収められた電子辞書が発売されている。

目新しい物に惹かれる訳では無いが、最初にデジタル化された『広辞苑』も持っていた。その後に発売されたのが冒頭のSHARP製の物で、MDを替えることで別の辞書にもなる。

購入した結果は、ほとんど使わない。面白味が無いので飽きてしまう。『新明解国語辞典』を3冊持ってるが、中型辞典よりも調べるだけなら使いやすい。孫娘に300種の辞書辞典の電子辞書を贈ったが、使っているのは漢字辞典と青空文庫だけだそうだ。デジタル化した中型辞書は使えない。語釈だけなら小型辞書で充分だし、今は孫と同じで漢字辞典のしようが多い。たまにしか開かないが・・・そのくらい小型の辞書は面白味が無い。

デジタルに頼って辞書離れをしてたが、ドラマのお陰で辞書に戻ってこられた。老後の暇つぶしにはこれほど良いモノは無い。


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