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「光る君へ」の吉高由里子

久し振りに真剣に、NHKの大河ドラマを見てる。「光る君へ」でまひろ(後の紫式部)役の吉高由里子さん、何となく紫式部の若い頃ってこうだったのだろうな、と思えてしまう。真剣に代筆をしてる姿など、スゴく良かった。撮影のエピソードとして、実は彼女は左利きで、右手で筆文字を書く場面が多くて現場での撮影30分前から緊張して練習をしてるとか。あの真剣に紙に臨む眼差しって、それから来ていたのかな。

『源氏物語』って、現代語訳を読んだ事は無いけど、余り読む気にもなれなかった。チョット現実離れして女ったらしで、何よりも紫の上という、初恋の藤壺に似てるという事でわずか10歳の女の子を強引に引き取り、理想の女性に仕上げていき、父親として添い寝をしてやがて自分のものにしてしまう。しかも自分の女房の一人として、他の女性との間の子供を育てさせたりして、光源氏はまた他の女と結婚をして。精神的に追い詰められた紫の上は、出家を申し出るが許されず、ついには憔悴して死んでしまう。なんというか、こういう男って心底嫌なんで、『源氏物語』は読む気になれなかった。

日本の文学史に置いて、多くの伝奇・説話・伝承・歌謡・和歌、それらの結晶として『源氏物語』が生まれ、後の日本文学に長く影響を与えた。世界的に見ても初めての長編小説であり、世界に誇れる事でもある。でも、光源氏って何となく気に入らない、最も嫌いなタイプの人間だ。


でも、吉高由里子さんの演技を見ていて、本物の紫式部ってこういう人かもと思えてきた。頭が良くて美人なのに、父親が下級貴族の貧乏生活で、20歳を過ぎても結婚できなかった。30歳近くになって、テレビでは父の友人の藤原宣孝と3番目の妻として結婚、数年後には死別してしまう。

そう、この紫式部の彰子に仕えるまでの生活を想像すると、意外と紫の上の様になりたかったのでは、などと想像してしまう。

男性にとって理想的な容姿と教養を兼ね備え、理想の男性像の光源氏に最も愛された、そして悲劇のうちに儚くなる・・・、夢見る乙女には有りがちな。他にも光源氏に誘われれば、嫌々と言いつつもなびいてしまう女性が出てくる。

紫式部も当時としては行き遅れの晩婚で、わずか3年の夫婦生活を思うと、小野小町や清少納言や和泉式部のように奔放な生き方をしたかったのかもしれない。だから『紫式部日記』などで彼女達の悪口を書き、年取ったら絶対に苦しむぞなんて呪ったのかもしれない。事実三人とも老いてからの、特に小野小町の落魄伝説は有名だ。

清少納言とは一緒の時期は無かったそうだが、藤原行成などとの孟嘗君の函谷関を開いたニワトリの声などの例えから、和歌を交わし合ったなどは当然知っていたろう。才覚溢れる美男子達との交流を聞き、きっと僻んでいたかもしれない。

愛されて苦悩する、理想的女性像の、美貌の乙女に自分を重ねたかったのかもしれない。などと妄想をすると、また別の読み方も出来そう。

現代語訳『源氏物語』を読もうかな。


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