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「光る君へ」第6回が面白い

「光る君へ」第6回「二人の才女」の録画したのを見た。平安時代の和歌に興味があり、なので「光る君へ」を毎回面白く見てる。ただし、史実のように受け止めてしまうと、全くおかしな事になってしまう。あくまでもドラマとして見ると、王朝文化をのぞくようで、和歌や『源氏物語』や『枕草子』を読むときのイメージが湧きそう。


紫式部を「まひろ」とか清少納言を「ききょう」などというが、平安期までの女性の名前は表には出さなかった。諡と言われ、忌み名に通じたのか、朝廷より任官された記録のみで実名が分かり、実際に実名が判明された女性は少ない。


紫式部と清少納言が会ったという記録はなく、宮中に入った時期もずれている。『紫式部日記』で清少納言を嫌っているのは、夫の宣孝を『枕草子』でけなされたと思っているからだと思う。

『枕草子』より(勝手に意訳)
金峰山の参詣では、例え身分の高いお方でも簡素な身なりでいくものだと聞いていた。ところが右衛門の佐である藤原宣孝というお方は、大そう目立つド派手な服装で参詣に行くという。皆がそれを見ると「権現様が粗末な服装で来い、などと言っていない」という。息子も一緒に派手な服装で、いや~とにかく目立つ目立つ。あんな奇抜な服装で良いのかと思っていたら、なんとちゃんと御利益が出てしまった。四月に下山して六月には筑前守に任官されたそうだ。そんな事もあるんだね。
『紫式部日記』より(勝手に意訳)
清少納言の得意そうな利口ぶってるのは何とも嫌味な人だ。如何にもと漢字を書き散らしているが、漢籍などの知識もまだまだ未熟なものだ。人と違ってその程度で目立とうとしてるが、こういう根性では将来が知れるわ。

宣孝と結婚して3年も経たずに死別してしまった。幼い女の子を抱えて大変だったと思う。必死に生きているのに、まだ傷心の時にこういうのを書かれて、カチンときたのだろう。

清少納言の『枕草子』は、江戸時代に入り北村季吟の『枕草子春曙抄』が出て、やっと一般庶民でも原文が読めるようになった。『源氏物語』の、和歌と物語で展開する華やかな王朝文化の世界と違い、『枕草子』は自由に感じたままを書いたという、随筆文学の原点とも思う。別のジャンルだが、『源氏物語』と並ぶ偉大な文学作品だと思う。


『蜻蛉日記』について倫子のサロンでの意見があったが、まひろが、高貴なお方と通じたことを誇りに思っているようだ、と言っていた。この『蜻蛉日記』こそが、知れ渡る前の『源氏物語』を書いた切っ掛けではないかと思っている。作者の藤原道綱の母は、当時は三代美人とうたわれ、歌人でもあり文才にも優れていた。道長の父が通い婚で道綱をもうけるが、その後は足が遠のいてしまった。父正四位下藤原倫寧(ともやす)も死去し、後ろ盾を失い、不安もあったろう。それを書き遺したのが『蜻蛉日記』である。

紫式部がこれを読んでいたなら、夫を亡くし後ろ盾を失い、幼い子供を抱えて収入も少なく、さぞ不安であったと思う。その気持ちと通ずるものを感じたとしても不思議ではない。その不安を紛らわすために、『源氏物語』を書いて、それを友人が読み、評判になった。道長はそれを聞いて、一条天皇が物語を読むのが好きだと言うことで、娘中宮彰子の女房として出仕させ『源氏物語』を書かせた。

『蜻蛉日記』は『源氏物語』の下敷きにもなったのでは、などと勝手に思っている。


兄の開いた漢詩の会で、まひろへの想いを白楽天の詩に託した道長、実は道長は自分が藤原氏の長になるとは思っていなかったので、漢文は相当に苦手で、漢字も間違えていた、と言うのを何処かで読んだ覚えがあるが・・・。

最後の場面で、道長が想いを詠んでまひろに贈った。
[ちはやぶる 神の斎垣も 越えぬべし 恋しき人の 見まくほしさに]
『伊勢物語』のパクリ。

道長と紫式部の恋愛は本当だろうか。
『紫式部日記』に、道長がオミナエシを持って、この花の歌には遅くなってはまずかろう、と訪ねてきた。そして歌を詠めと・・・
女郎花さかりの色をみるからに露の分きける身こそ知らるれ 式部
女郎花が露を含んで今を盛りと咲いているのを見ると、露の恵も無き盛りを過ぎた我が身のことが思い知らされます。
白露は分きてもおかじ女郎花心からにや色の染むらむ 道長
白露は分け隔てなどしていない。女郎花は自分から美しくなろうとするから美しい。貴方もその気になればまだまだ美しいですよ。

すきものと名にし立てれば見る人の折らで過ぐるはあらじとぞ思ふ 道長
人にまだ折られぬものをたれかこのすきものぞとは口ならしけむ 式部

夜もすがら水鶏よりけになくなくぞまきの戸ぐちにたたきわびつる 道長
返歌
ただならじとばかりたたく水鶏ゆえあけてはいかにくやしからまし 式部

『紫式部日記』のほか、晩年に人に見せるためのものではない『紫式部集』という自分史を書いた。この中でのこのやりとりは、恋愛関係を疑わせる。


だから『光る君へ』というドラマが書けたのだろう。
もっとも、幼少時代では全くすれ違うこともないくらい、二人の身分の差は大きかったのだが。

幼い頃から知り合っていた、という設定では、これからどの様に展開させるのか。楽しみでもある。ああ、それよりも早く『枕草子春曙抄』を読まなければ・・・。


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